死者の眠りも妨げる…ウイグル人弾圧で墓地を破壊 中国 AFP/時事共同
【AFP=時事】中国の少数民族ウイグル人の先祖らが眠る墓地が中国政府によって破壊されている。こうした行為について活動家らは、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で行われている、ウイグル人のアイデンティティーを根絶する試みの一環だとして批判を強めている
【関連写真】ウイグル人墓地の跡地に造られた「ハピネス・パーク」
同自治区では過去2年間で数多くの墓地が破壊されている。人工衛星画像の解析を行う非営利団体「アースライズ・アライアンス(Earthrise Alliance)」とAFPが共同で行った調査で今回、明らかになった。
シャヤール(Shayar)県では、3か所の墓地で人骨が露出しているのをAFP記者が確認している。同県ではこのほか、墓地が掘り起こされて更地となり、壊され、がれきの山と化した墓や聖廟(せいびょう)がそのまま放置されていたケースも複数見られた。
墓の取り壊しをめぐる当局の説明は、都市開発や古い墓の「標準化」などさまざまだ。だが、海外在住のウイグル人たちは、墓の取り壊しがウイグルでの生活の全てを管理しようと試みる中国の弾圧の一環だと訴えている。
曽祖父の墓を壊されたというサリヒ・フダヤル(Salih Hudayar)さんは、「こうした行為は、私たちが誰であるかを示す証しを消し去り、効率的に漢民族にさせようとする中国の取り組みだ」とAFPの取材に対して述べた。
新疆ウイグル自治区では、宗教的過激派および分離独立派との戦いという名目で、イスラム教徒であるウイグル人を中心に約100万人が拘束されていると考えられている。また、拘束されていないウイグル人も厳しい監視の対象となっており、当局職員が各家を訪問しているほか、ひげやベールを禁止するといった行動の制限も敷かれている。
しかし、ウイグル人への弾圧に対する批判は世界的に強まっている。事実、米国は10月、中国当局者らへの査証(ビザ)発給を制限すると発表し、人権侵害で中国企業28社をブラックリストに登録した。ただ、こうした各国の動きに中国は動じる様子を見せていない。
AFPとアースライズ・アライアンスが分析した人工衛星画像から、2014年以降に中国政府が掘り起こして破壊したウイグル人の墓地が少なくとも45か所に上っていることが判明した。このうち30か所は、過去2年間で破壊されたものだったとAFPが今年6月、明らかにしている。
画像の検証結果について新疆政府にコメントを求めたが、政府側から回答は得られなかった。
中国政府による墓の掘り起こしは、著名な人物が埋葬されている墓地でも例外なく行われている。アクス(Aksu)には、著名なウイグル人詩人の墓が置かれた大きな墓地があったが、中国政府はここを埋め立て、つくりもののパンダや子ども向けの乗り物、人工の池などがある「ハピネス・パーク(Happiness Park)」に造り替えた。米国在住のウイグル人は、この詩人の墓を「愛国的ウイグル人にとって現代の聖地」のようなものだったと説明している。
ハピネス・パークについての取材をアクス政府に依頼したが、これに応じてもらうことはできなかった。
■歴史の破壊
英ロンドン大学(University of London)東洋アフリカ研究学院(SOAS)の研究者レイチェル・ハリス(Rachel Harris)氏は、「墓地の破壊は現在進められている広範な政策の一部にすぎない」と説明する。
そして、「聖廟や聖人の墓、家族の墓の破壊はすべて、人々と歴史の関係を破壊し、人々と彼らが住んでいる土地の関係を破壊するものだ」と付け加えた。
墓地の破壊についての政府の説明は、理由がそれぞれ異なっている。区都ウルムチ(Urumqi)の国際空港近くで撤去された墓地については、都市再開発計画の一環だったとする地元政府の説明があった。他方で、もともとあった墓地の近くに新たに墓地をつくって墓を移動させたシャヤールの地元政府は、その行為が墓地の「標準化」を目的としたものだったとAFPの取材で話した。シャヤールでは、こうした墓地の移設が複数か所で行われていた。