中国から世界各国に逃れた少数民族中国当局の魔の手が伸びる。故郷に残る肉親を「人質」として、同胞に対するスパイを強要されたとの報告が後を絶たない。日本に住むウイグル族も標的だ。日本政府の対応が求められている。

ニューヨーク市の警察官が逮捕された(写真はイメージ)(写真=anouchka/Getty Images)

 米ニューヨーク市警などは9月21日、中国当局のためにスパイ行為を働いた容疑で同市警の警察官バイマダジ・アンワン容疑者を逮捕した。米司法省は「少なくとも2014年から在ニューヨーク中国総領事館の指揮下で、在米チベット族のコミュニティーに入り込み、内通者の獲得に協力していた」などと指摘する。アンワン容疑者自身も中国出身のチベット族で、同胞の監視に協力するスパイに仕立て上げられていた。

 これは人ごとではない。日本にも中国の少数民族を監視するスパイ網が張り巡らされている。

 「私も中国当局のスパイにされそうになった」と告白するのは、在日ウイグル族のエリパン・アユップ氏(仮名)だ。中国・新疆ウイグル自治区の警察官を名乗る人物から、対話アプリ「微信ウィーチャット)」の通話機能を通じて、「在日ウイグル族のリーダーたちの動きを報告してほしい」と頼まれた。

 断ると、「こっち(ウイグル自治区)に親族が残っているから、協力できるでしょう」と迫られたという。暗に「協力しなければ親族の安全は保証しない」と脅していると受け取った。

 エリパン氏は自分以外にも、故郷に残る肉親を「人質」に、当局からスパイ行為を働くよう強要された在日ウイグル族を多く知っている。

 結局、エリパン氏は当局の手先とはならなかったが、既に在日ウイグル族のコミュニティーにはスパイが浸透しているという。エリパン氏自身、同胞に言動を密告されたと感じる経験を何度もしている。