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バイデン考…「賢者は最悪に備える」~アジア太平洋を日本の米国依存脱却の場に~松田 学 通信 vol.142 2020.11.16より転載

  • 松田学
     
 

バイデン考…「賢者は最悪に備える」~アジア太平洋を日本の米国依存脱却の場に~

先週も未だ決着のつかない米大統領選がメディアを賑わしていました。トランプが勝つと信じてきた日本の保守派の人々も、次々とバイデンを前提に発言を切り替えているようです。しかし、「トランプの四年間は楽しかりし日々、これからの四年間は暗黒の日々」…。環境問題でも対中国政策でも、国際協調を旨とするバイデンのほうが良いかのように日本のメディアは報じていますが、米国政治の裏側を覗けば、どうも、決してそうではない…?

 

トランプ陣営は相当入念に法廷闘争の準備を進めているとの情報もありますが、果たして再選の道はまだあるのか?ただ、トランプの四年間とて、米国が日本にとって従来のように頼れる存在でなくなっていることを示唆するものでした。日本は国際社会で独自の存在を築いていくために、かなり大きな覚悟が問われる局面に入ろうとしていると思います。

 

●やはりトランプ再選は絶望的なのか?

前回のコラムでは、不正にまみれた今回の大統領選では、最後はトランプが勝つ…そう信じるケント・ギルバート氏の松田政策研究所チャンネルでの発言をご紹介しましたが、これはアップ後一週間で45万視聴を記録する注目番組になりました。他チャンネルでも同氏の発言は注目されていましたが、当チャンネル収録の翌々日に開催された参政党の党大会では、なんと、バイデン勝利を前提に日本はどうすべきかを滔々とご発言。このことに言及した私の番組に「ケントさん、どうしちゃったの?」との書き込みが相次ぎました。

 

その後出てきたバイデン票の勢いに気圧されたのか…。真相はまだ確認していませんが、メディア報道も多くの論者の論調も、もはやバイデンで決まり、菅総理まで祝意を表したり、電話会談をしたり…一週間の間にバイデン大統領誕生がすっかり既成事実化しました。

 

選挙人による投票で過半数がとれない場合には最終的に連邦議会の下院で大統領が再選される可能性が制度上は残っており、200年ほど前に2回の前例があると、前回のコラムで述べましたが、うち1回は、4名の大統領候補のいずれもが選挙人投票で過半数をとれずにアダムス大統領が選出された1824年の事例。これは今回はあてはまらないでしょう。

 

もう一回は、ジョージア州の選挙認定証に欠陥があったためにジェファーソン大統領が下院で選出された1800年の事例ですが、今回トランプ氏がそうなるためには、不正票の積み上げというよりも、選挙そのものに重大な不正や瑕疵があった場合ではないでしょうか。

 

某論者からは、こんなツィートも…「C国で印刷した偽投票用紙がカナダ経由で大量にトラックで各地に運ばれていた。そのトラックは既に押さえられています。実は本物の投票用紙にはGPSのチップが埋められていて、投棄された物はすぐに見つかります。」これではあまりにSF的かもしれませんが…。

 

私が親しくしている日本の某国際ビジネスマンの情報源によると、トランプ側のジュリアーニ弁護士は相当な不正のエビデンスを握っており、タイミングが来るまでは当面、一切、メディアに出さない方針。証拠が大量なので、整理に時間がかかっているとのこと。ただ、どうも弁護士費用が不十分で、寄付がどれだけ集まるかにもよるようです。「トランプは実業家ですから、弁護士費用が足りなくなったら投げ出すかもしれない」とも…。

 

この方は「金融的にはどちらが勝ってもイベント」というビジネスマインドの方なので、保守系論者のような希望的観測の要素がない分、信頼できる情報かもしれません。ただ、このビジネスマンも「バイデンは、習近平を支援している存在の資金力が膨大で、今回、トランプが勝たないと、長期にわたって不都合が発生するでしょう。それもまた、収益機会にはなりますが、そういう問題ではないです。」と、これも冷静な見方。

 

●バイデンが大統領で、まず問題になるのは何か

では、バイデンが大統領になると、どんな問題が…?以下、当チャンネルで宮崎正弘氏が11月12日に語った内容を「 」で引用しながら、少し考えてみたいと思います。

 

「選挙情勢はコロナが変えた。人間の不安を煽った。コロナは失業も増やし、パンを買う金がないと今の政権に不満が行く。そして、郵便投票。死んだ人、病気の人、字を書けない人…。こういうときはドブ板選挙が強い。それをやっているのは日本では…?米国では民主党。実は、共和党はドブ板に弱い。郵便投票を認めた時点でトランプは負けだった。」

 

「賢者は最悪に備える。バイデンを前提に物事を考えると、もう外交が始まっている。菅さんが早速バイデンに祝意を述べたりして、失礼ではないか。サウジ、ブラジル、メキシコ…態度をまだ表明していない。まだ決まったわけではないのだから、外交として当然。」

 

…この点はやはり問題がありそうです。トランプ再選だと、トランプと稀にみる良い関係を築いた安倍前総理と比較されるので、菅さんはバイデンを歓迎している…?トランプ嫌いの欧州の立場なら分かりますが、トランプ氏が敗北を認めていない限り、同大統領のおかげでここまで外交で世界をリードした日本としての立場があるのでは?もしトランプ再選となったら、相手はあのトランプ、菅外交に支障が生じないか少し心配にもなります。

 

「けらけら笑い出しそうなのが習近平。トランプが負けたのではなく、左翼リベラルメディアに負けた。連邦議会選挙をみると、共和党が国民の信任を得ている。」

 

「バイデン大統領になると、親中派と反ロシア色が濃厚。貿易、そしてビザ条件の緩和が真っ先に出てくる。次にエコロジー。米国の石油産業がやられる。そして、民主党と中国のズブズブが始まる。政権入りが言われているのは、あのオバマ人脈の人たち。『神輿は軽くてバカがよい』となろう。日本の尖閣を守る?バイデンの言ったことは信用できない。」

 

●極左が支配する政権になる理由

「米国を分断させたのはトランプではなく、民主党だ。いまは民主党は3つのグループから成る。極左と社会主義者と穏健派。権力をとると内ゲバが始まる。『ポスト・ポリティカルコレクトネス』、「LGBTQ」…そして、1年後にハリス政権が誕生する。アルツハイマー気味のバイデンを引きずり下ろし、ハリスを立て、極左過激派が主導権確保を狙う。」

 

「中国との癒着問題は…ハンター・バイデンがロビーストの口利きで、親父と会わせて法外な収入。一口100万ドル?親父の代理をやっている。国務省は『ヒラリー商会』だった。こうした事件も大統領になると4年間出てこなくなる。トランプが残り任期中に摘発?FBIが言うことをきかない。随分と左が入っている。戦争直後のCIAのようなもの。」

 

「バイデンの政策は、いま掲げているような穏健派のものではもたなくなる。米国の社会主義シフトが若者たち中心に起こっている。大学授業料をタダに。米国の若者にとって、大学授業料は安いところで5万ドル。みんな学生ローンを組む。一生、金利も払えない。そこで、サンダースが人気。今回、トランプを若者があまり支持しなかったのは、そこにある。若者は染まりやすい都会にいる。日々、人権、平等…ポリティカルコレクトネスの影響を受けている。トランプは今回は、黒人、ヒスパニック。肝心の白人の若者は…?」

 

「『白人に生まれた贖罪』という意識が彼らにはあるようだ。それは恐ろしいこと。かつて米国の歴史教科書は、米国は誇りの持てる国…だったが、いまは、インディアンを虐待した…等々、(日本ほどではないが)自虐史観。それが若者に漂ってしまっている。」

 

「米国は『自由の国』なのか?うたい文句としてのデモクラシーだ。いままで本当にそうだったか?かつてトクヴィルが米国を回って、米国のデモクラシーとは多数派の専制だと喝破した。トランプもそうだった。51%とると、そうなる。今度は民主党が勝手なことをやる。バイデンが『団結』と口で言うのはタダ。分断構造がもともと米国にはある。」

 

●メディアは、SNSは…言論の自由は大丈夫か

バイデンになると、これみよがしにメディアやSNSがますます偏向することが懸念されます。「前回、トランプはツイッターを活用したが、今回はトランプの発言は巧妙に削除された。日本でも保守系のサイトは勝手に消されてきた。自由な意見を書くと削除とは…GAFAは中国の監視機関の役を担っている。実は、GAFAも中国と商売をしたい。だから、反トランプとなった。GAFAはさんざん中国とやって儲けてきた。」

 

「彼らはバイデンに圧力をかけるだろう。ここがいちばん民主党に献金している。証券も生保も、みんなバイデンへの献金が多く、圧力をかけ、いままでのきつい制限(ELリストや技術者に対するビザ制限)などが、だんだん緩和されていく。議会に権限がないものはそうなる。連邦議会の上院が握る軍事、外交、予算の政策決定は阻止できるが…。」

 

…日本にも、何の理由の説明もなく、突然、広告を止められたり、閉鎖の憂き目に遭ってきた発信者やユーチューバーは数多くいます。この春までは『新型コロナウイルス』という、普通のメディアが使用している言葉すら禁句でした。なぜ、米国の会社が中国にとって不都合な言論を弾圧するのか。自由な言論も真実の発信も、これからますます不自由になるとすれば、SNSやネットの発信者だけでなく、日本国民全体にとっての大問題です。

 

●いちばん喜んでいる中国は…

「菅総理は国際通ではなく、外交は不得手。外務省頼りになる。党では二階さんだ。菅さんから独自の外交観を聴いたことがない。外務省は喜んでいるだろう。バイデン勝利で一番喜んだのは北京、次に喜んだのが霞が関。チャイナスクールが息を吹き返すだろう。」

 

…外務省不信の安倍前政権は、外交の主導権を官邸に移すことで戦略的な成果をあげてきました。外務省でも最近ようやく増えてきた国益官僚には、一層頑張ってもらいたいもの。

 

「本来なら習近平は去年、危機だった。米国と貿易摩擦を起こして…と、長老たちから吊るしあげられていた。それが、香港問題で長老たちも反主流派たちも、これはやばい、となった。中国が孤立し、内ゲバをやっている場合ではなくなり、習近平でとりあえずは乗り切ろうとなった。今年の全人代ではGDP成長率も示せなかった厳しい状況のなかで、共産党も習近平で固まった。政権の危機を乗り切ってしまった。現在は安定している。先日の五中全会では、『中国製造2025』を、一言の言及もなく引っ込めた。代わりに、2035年所得倍増を打ち出した。これだけ世界中が沈没しているときに…。」

 

…いまから15年も先の2035年まで計画を出したのは、習近平が今後15年間、君臨し続けることを宣言したものではないかとも言われています。15年で終わりならまだ良いとも…。

 

●トランプが立て直したものが崩れていく

「香港国家安全維持法で世界が中国を攻撃しているが、実は、欧州は人権とは言っていても、商売をやっている。米国も人権を口にはするが、事実上、ウイグル制裁は発動されていない。その他の制裁はじわっと効いているが、バイデンはロビーからの圧力で、米国企業にとってマイナスのものは撤廃し、関税も下げるだろう。オバマ政権のもとでガタガタになった軍事力をトランプは立て直し、今年の予算では軍事費は7,000億ドル、しかも宇宙軍の創設が入っている。しかし、バイデンは軍事費を減らすと言っている。」

 

「日米仲良くと言いながら、日米同盟は抽象的で曖昧。空気のようなもの。実態があるのは安保条約。同盟関係にありながら、米国は、レーガン政権時にはスーパー301条や年次改革報告を出し、極めつけは半導体だった。日本に技術をやらず、日本の頭越しに台湾と韓国に。結果、台湾の技術が米国を超えた。F35の部品は台湾しか作れない。そこで、中国に半導体を出すな、アリゾナ州に工場を、となった。」…この路線もバイデンでどうなるか。米ビジネス界も民主党に圧力をかけて中国に情報技術を売り続けたいところでしょう。

 

「台湾は中国の一部という政策が中国にある以上、台湾に圧力をかけ続ける。これは人民解放軍に対するガス抜きでもある。台湾への領空侵犯が相次いでいるが、台湾のスクランブル能力を計っている。国民党の人たちが台湾の軍隊の上層部を占めており、彼らは中華思想。中国に対して敵愾心がない。そこで米国は心配して武器を供与していなかったが、トランプはそう言っていられないとなった。武器供与まで実際には2年かかるが、バイデンは中断させかねない。米国が中東諸国に対してよくやる手。心配のタネは尽きない。」

 

●参政党の理念にもなった「日本新秩序」

日米同盟は堅持するとしても、もはやそれに過度に依存することは禁物。(トランプとて一国主義でした。)どちらが大統領になっても、その点は同じだとすれば、そろそろ日本は、自国が独自に拠って立つ基盤を国際社会のなかに築いていかねばならないはずです。

 

前述の参政党の党大会で私が担当したパネルでは、葛城奈海さんと赤尾由美さんという二人の愛国女史の論者をパネラーに迎え、党の基本理念として、これからどんな日本を創っていくべきか、国家観の一端を論じ、発信いたしました。

 

一応、テーマが経済のパネルではありましたが、日本経済の再興のために最も必要なのは、実は、経済でも市場競争でもありません。GHQや90年代の第二の経済占領政策による洗脳で失われた日本人としての独自性や誇りを取り戻すこと。日本人が営々と築いてきた強さを私たち日本人が自覚してこそ、グローバリゼーションの波にもデフレにも打ち克つことができる。

 

21世紀という人類文明の大転換期にあって、ポストコロナの世界が求めるものは日本ならではのソリューションであり、日本民族には、新たな文明建設を先導する歴史的な使命が与えられている。まさに『大東亜』…この言葉の意味は戦後長らくタブーとして誤解されてきましたが、先人が目指した本来の意味は、利他の精神であり、平等と協調と世界の調和です。右翼の言葉でも何でもありません。会場からも、この発言に拍手…。

 

私から、一人一人が課題解決に向き合うことで自ずと形成される「日本新秩序」が、覇権的なパワーではなく、世界の人々に自然に伝播していくことで、新たな世界新秩序の形成に向かう。そういう国づくりを参政党は担っていくという締めくくりをいたしました。

 

●いまこそアジア太平洋を軸に日本独自の国家路線を

考えてみれば、全体主義に対抗して自由や法の支配といった価値を守り発展させる道は、何も欧米流のやり方だけに限られないはずです。日本は米国に頼らず、日本的な独自の価値観の裏付けを通して、これらの価値を世界で推進する国になるべきでしょう。

 

このことは、安倍前総理が唱え、菅総理が初外遊でベトナムとインドネシアを訪れたことで本格始動させた「アジア太平洋」路線に、まさに適合する道だと思います。安全保障は日米豪印のクアッドで固めつつも、これらに東南アジアを加えたインド太平洋とは、そもそも日本が各国の植民地からの独立を促すことで、戦後の世界秩序を打ち立てた圏域。

 

最近、EU議長国のドイツも「インド太平洋戦略」を打ち出したようですが、フランスも2018年には「インド太平洋」重視を宣言しており、EUから離脱する英国も、かつての英連邦諸国との関係を強化していくことになるでしょう。英国は早速、日本との経済連携協定に加え、日本が環太平洋地域で主導するTPP11への参加に強い関心を示しています。

 

「いまや世界経済の4割を占める。経済面でも政治面でも存在感が大きくなった」(アルトマイヤー独経済相)とされるインド~東南アジア~太平洋地域は、かつては欧州の植民地であり、現在も、必ずしも親米的ではない国々が多い圏域でもあります。まさに19世紀の植民地支配秩序に対して人種差別撤廃と「平等」を唱えた日本こそが、そのリード役を務めるだけの信頼を寄せられている国ではないでしょうか。

 

こうした大きな世界構想を推進することで、トランプかバイデンかで振り回されることなき威風堂々たる日本の国家路線を、いまこそ推進すべき時期なのではないかと思います。