(CNN) ヒマラヤ山脈の小国ブータンは、世界で最も神秘的な国の一つであり、「雷竜の地」への訪問は困難なものとなり得る。だが今年、息をのむような景色が広がるブータン横断路が、60年を経て再び旅行者に門戸を開くことになり、「死ぬ前にやっておきたいこと」の1つをリストからいよいよ外す新たなモチベーションになりそうだ。
修復プロジェクトの主要な資金提供者であるブータン・カナダ財団によれば、全長約400キロのルートは9つの県(ゾンカク)と28の郡(ゲオク)、2つの街、1つの国立公園、そして400もの歴史的・文化的名所を結ぶ。
徒歩でもマウンテンバイクでも通行可能な横断路全体を踏破する旅行者は、18基の大橋を渡り、1万段の階段を上ることになる。
同財団のサム・ブライス理事長は、「これは建設および事業の双方において、巡礼者や旅行者のために、いにしえの文化のシンボルを復旧させ、持続可能で炭素ネットゼロの経験を提供することになる、地域社会に根差したプロジェクトだ」と説明。
「ブータン横断路はまた、国民総幸福という同国の哲学を反映するもので、ブータンの子どもたちが祖先の足跡をたどれることにもなる」と述べた。
横断路の西端に位置するのは、中国のチベット自治区との境界付近にあるハという町で、東端はインド・アルナチャルプラデシュ州との境界に近いタシガンとなる。
同財団の代表者によると、意欲的な徒歩旅行者は約1カ月で全ルートを制覇でき得る一方、大半の旅行者はより短い区間を3、4日もしくは7日の小旅行で楽しむことになる可能性が高いという。
41歳のジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王が率先して復旧に努めた横断路は、かつて仏教徒の巡礼路として使われていたものの、1960年代に道路建設が始まると荒廃してしまっていた。
ブータン当局は「高価値、低負担」を掲げる自国の観光戦略により、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)以前は例年、訪問者をわずか数千人程度に均等化させている。また観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム(観光公害)」を回避するという目標の一環として、当局は移動費や宿泊費、食費やガイド料などを含め、1日当たり250ドル(約2万9000円)の徴収を義務化。この費用が、訪問を望む多くの人々にとって高い壁となっている。
ブータン旅行を計画するに当たっての難点となり得るのは、同国は現在、観光客に門戸を閉じているということだ。ただ、同国は2022年春に全面的もしくは部分的な再開に向けて動いているとのうわさが飛び交っていることから、ブータン横断道に関する今回の出来事のタイミングは吉報を示唆しているのかもしれない。