露独間のガスパイプライン、破産手続き検討か…計画凍結で稼働めど立たず
ノルトストリーム2のパイプライン(AP)
【ロンドン=池田晋一】ロイター通信は1日、ロシアとドイツをバルト海経由で結ぶ天然ガスパイプライン「ノルトストリーム2」の事業会社が破産手続きの検討に入ったと報じた。パイプラインの建設は2021年に完了したものの、ロシアによるウクライナ東部の親露派支配地域の独立承認を受けてドイツが2月22日に計画凍結を決めたことで、稼働のめどが立たなくなっていた。
報道などによると、破産手続きを検討しているのは、ロシア国営ガス会社ガスプロムの傘下企業でスイスが本拠地の「ノルトストリーム2AG」。パイプラインの事業費は110億ドル(約1兆2600億円)に達する。建設費の半分をガスプロムが支払い、残りを英石油大手シェルや独エネルギー大手ユニパーなど欧州企業が負担していた。
ノルトストリーム2を巡っては、米国が23日に事業会社への金融制裁を発表し、英シェルは28日、事業からの撤退を表明した。
【ロンドン=池田晋一】欧州で天然ガス価格が高騰している。代表的指標の「オランダTTF」の先物は24日、前日終値から6割値上がりし、1メガ・ワット時あたり136ユーロ(約1万7500円)をつけた。欧州の輸入ガスの多くを占めるロシアからの供給不安が広がっている。
オランダTTFは24日、一時142ユーロまで上昇した。25日は100ユーロ超の水準で取引されているが、1年前と比べると5倍以上の水準だ。
欧州連合(EU)は輸入ガスの4割をロシアに依存している。一部はウクライナを経由するパイプラインで運ばれており、ガス供給が滞る恐れがある。ロシアが欧州の経済制裁への対抗策として、ガス供給を絞る懸念もある。
欧州では昨年から、ロシアの供給減が原因とみられる在庫の減少で、ガス価格が高騰していた。原油高と合わせて光熱費が上昇し、物価の上昇圧力が高まっている。
英調査会社キャピタル・エコノミクスは、ウクライナ情勢の緊迫化によるエネルギー価格の上昇で、今年のユーロ圏の物価上昇率が最大2ポイント増加すると予測する。インフレが進行すれば、個人消費の落ち込みにつながり、景気減速の懸念が高まりそうだ。
【ロンドン=池田晋一】英石油大手のシェル(旧ロイヤル・ダッチ・シェル)は28日、ロシア極東サハリンの天然ガス事業「サハリン2」から撤退する方針を発表した。ロシアのウクライナ侵攻で事業継続は難しいと判断した。日本の大手商社も参画する大規模プロジェクトで、日本企業側の対応が注目される。
サハリン2は、シェルとロシア国営ガス会社ガスプロムのほか、日本の三井物産、三菱商事が出資し、運営している。シェルなどによると、サハリン2の液化天然ガスの生産量は年約1000万トン。その多くが日本に輸出されており、日本のエネルギー安全保障の観点からも重要な事業だ。
三菱商事は「シェルの発表内容を含め詳細を分析し、政府および関係者と対応について検討を進める」とコメントした。
シェルはサハリン2のほか、ガスプロムが関わる複数のエネルギー事業からも撤退する。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン事業「ノルトストリーム2」への関与もやめる。
シェルのベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)は声明で、ロシアのウクライナ侵攻を「欧州の安全を脅かす無意味な軍事的侵略だ」と厳しく非難し、「(ロシア事業の撤退による)欧州やほかの市場でのエネルギー安定供給について検証する」と説明した。
企業の「ロシア離れ」は進んでおり、27日には英石油大手BPもロシア事業からの撤退を表明している。エネルギー以外では、スウェーデン自動車大手のボルボ・カーが当面、「ロシア市場に自動車は供給しない」と表明している。独紙によると、独ダイムラートラックは、ロシアの装甲車大手カマズとの提携を解消する。
【ロンドン=池田慶太】英政府は2月28日、ウクライナに軍事侵攻したロシアへの制裁の一環として、ロシアが関係する船舶の国内への入港を禁止する方針を発表した。近く制裁の根拠となる法律を整備する。
グラント・シャップス運輸相は国内の港湾運営者に宛てた書簡で、法整備が整うまでの措置として、ロシア国旗を掲げたりロシアに関係する個人が所有したりする船舶に港湾を利用させないよう要請した。シャップス氏はツイッターで、「プーチン(露大統領)のウクライナでの行動を考えれば、ロシア船舶は英国では歓迎されない」と述べた。
英北部のオークニー諸島にはロシアの石油タンカーが近く寄港する予定だったが、軍事侵攻に反発する地元自治体が寄港拒否を可能にする措置を中央政府に働きかけていた。