ロシア、住居地域も無差別砲撃…遺体が散在
ロシアの攻撃で破壊されたハリコフの学校
ロシア軍がウクライナ東部の都市ハリコフと首都キエフ、南部都市ヘルソンなどで民間人住居地を問わず攻撃を続け、民間人の被害が続出した。 ロシアのウクライナ侵攻6日目の1日(現地時間) AFP通信など海外メディアによると、ロシア軍はウクライナ第2の都市ハリコフの民家や広場など民間地域を無差別爆撃した。SNSに載せられた映像によると、人口140万人が居住するハリコフのあちこちで爆発が起きている。アパートの外には遺体が散在し、火災も発生している。 ウクライナ大統領室の顧問はこの日、「ハリコフとキエフ西北側、ヘルソンなどで戦闘が激しく(南部)マリウポリ近隣でも間欠的に衝突があった」と伝えた。 前日からロシア軍の攻撃が激しくなったウクライナ第2の都市ハリコフでは、この日も州政府庁舎と中央広場、民間施設などが多連装砲と巡航ミサイルの攻撃を受けたという。また、ハリコフ州政府庁舎への砲撃でも10人が死亡し、10人は建物の残骸から救助されたと伝えられた。 ウクライナ当局は、市民が多いハリコフ都心の中央広場にもロシア軍は砲撃を加えたと主張した。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日午前の映像演説で「ハリコフに対する攻撃は戦争犯罪だ。これはロシアの国家テロリズムだ」と強く非難した。首都キエフに対する攻撃も続いた。 ウクライナ外務省はこの日、ロシアが第2次世界大戦当時のナチスの代表的なユダヤ人虐殺事件「バビヤール峡谷銃殺事件」の犠牲者追悼施設付近にあるキエフ西北側のテレビ放送タワーを攻撃する野蛮性を見せたと主張した。この日のテレビタワー攻撃でウクライナ人5人が死亡し、追悼施設が一部破壊された。 現在、ロシアの装甲車・タンク・火砲などはキエフ都心から25キロ離れたところまで接近し、北側からキエフに向かって進軍する軍事装備の隊列が65キロにのぼると把握されている。 これに関し米当局者はウクライナ軍の抵抗、軍需物資供給問題、ロシアの作戦整備の可能性に言及したと、ロイター通信などが報じた。 この日、南部都市ヘルソンにもロシア軍が進入したが、ウクライナ軍は依然として市庁を統制していると、ウクライナ内務省は明らかにした。 ヘルソン市内では市街戦が続いている。南東部ドネツク地域の親露武装勢力は進軍を続け、アゾフ海に面する港町マリウポリに進撃したロシア軍と合流したと、ロシア紙ノバヤガゼッタが伝えた。マリウポリが完全に占領されたかどうかは確認されていないと、同紙は付け加えた。北部都市チェルニーヒウでもウクライナ軍がロシア軍の南進を阻止し、戦闘中であることが分かった。 ロシアのショイグ国防相はこの日、「ロシア軍は設定した目標を達成するまでウクライナ内での軍事作戦を続ける」と強調した。 米メディアは米当局者の言葉を引用し、進撃が予想より遅滞するロシア軍の間で士気低下の様相が表れていて、一部の兵士は戦闘をせず降伏していると伝えた。
住宅地攻撃でウクライナ死者増加、ロシア軍作戦に混乱との見方も
[2日 ロイター] - ロシア軍によるウクライナへの攻撃は1日も各地で続き、第2の都市ハリコフ中心部がミサイルで攻撃されたほか、首都キエフではテレビ塔が攻撃を受けて5人が死亡した。 ハリコフの地方行政官は、市中心部がミサイル攻撃を受け、住宅地や地方庁舎に被害が出たことを明らかにした。地方行政官はソーシャルメディアに投稿した動画で「ウクライナ市民に対するジェノサイド(集団殺害)だ。市民に対する戦争犯罪だ」と述べた。詳しい死傷者数は分かっていない。 ウクライナ当局によると、首都キエフではテレビ塔が攻撃を受け、5人が死亡した。電波が中断される可能性があるという。 このほか、西部ジトーミルの住宅地域では、周辺の空軍基地を狙ったとみられる巡航ミサイルで子どもを含む4人が死亡したという。内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問が地元テレビに語った。 <ロシアの作戦混乱か> 米政府関係者によると、キエフに迫った約65キロに及ぶ軍車列は、過去24時間に全く前進していない。物流問題や燃料・食料不足で動けず、戦術見直しのために一時停止しているのではないかという。 また、侵攻開始から1週間近くたつが、予想をはるかに超える激しい抵抗に遭い、主要都市をまだ制圧できていない。 米ウィルソンセンターでロシア軍の専門家であるマイケル・コフマン氏は、「ロシア軍の作戦を見ると、兵たんと通信に多大な問題を抱えている。作戦は全体が混乱しているように見える」とツイートした。 西側の軍事アナリストの多くは、ロシアが今後、居住地域への侵入前に徹底的に砲撃する戦術に戻るのではないかと懸念。 米国防総省のある高官は、キエフ北部での停滞の理由として「ロシア軍自体が再編成や方針の見直しを実施し、これまでの課題に適応しようとしている」と分析した。 また「ロシア側は士気の問題に驚いているほか、補給路などの課題についても満足していない」と、根拠を示さず語った。
ロシアに焦りか…「人の臓器を無差別破壊する真空爆弾を使用」
28日(現地時間)のロイター通信によると、マルカロワ駐米ウクライナ大使はこの日、米国議会への報告を終えた後、「ロシア軍が今日、真空爆弾を使用したが、これは実際、ジュネーブ条約で禁止されている」と述べた。マルカロワ大使は「ロシアはウクライナに大きな打撃を与えようとしている」と主張した。
CNNによると、ロシア南部のウクライナ国境地帯ベルゴロド南側で熱圧力弾多連装ロケット発射台が多数発見された。CNNは熱圧力弾頭の装着が可能なTOS-1またはTOS-1A多連装ロケット発射台が目撃されたと伝えた。ただ現在のところはウクライナ戦争にこの真空爆弾が動員されたという証拠はないと、CNNは伝えた。
真空爆弾は周辺の酸素を使って高温爆発を起こす爆弾で、従来の爆弾に比べて爆発時間がはるかに長い。一般的な爆弾に入る火薬が25%の燃料と75%の酸化剤で構成されるのとは違い、熱圧力弾はほぼ100%が燃料だ。したがって同じ重さの爆発力を持つ伝統的な凝集爆弾よりはるかに大きなエネルギーを発散する。主にバンカーや洞窟などに使用される。
熱圧力弾が真空爆弾と呼ばれる理由は、この爆弾が爆発する時に酸素を吸い込んで強力な超高温爆発を起こすからだ。爆発時に発生する高い圧力波は人の内部器官に損傷を与えるという。軍人と民間人を区別しないほど無差別的で破壊力が強いため、非倫理的な大量破壊兵器と認識されている。
西側メディアは、ロシアがウクライナにこうした熱気圧武器を使用する可能性を西側軍事情報当局は懸念している、と報じていた。
戦争の序盤、ロシアの損失はかなり大きい。21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ研究委員は「ウクライナ国防省の26日の発表によると、ロシアの戦車146台と装甲車706台が破壊された」とし「普通、全体戦力の30-50%ほど被害を受けた部隊を戦闘不能とみる。25-30個大隊戦術団を失ったということ」と述べた。大隊戦術団とは戦車(10台)・装甲車(40台)を中心に砲兵・防空・工兵・通信・医務を集めた大隊規模のロシア軍臨時部隊編成だ。
ロシアは今回の戦争に160個大隊戦術団を動員し、100個を戦闘に投入した。3日間(26日基準)の戦闘で30%を失ったという数値だ。ウクライナが善戦しているということだ。
その理由について韓国国防研究院のバン・ジョングァン研究員(予備役陸軍少将)に話を聞いた。
◆ロシアの判断ミス
ロシアは速戦即決で戦争を終える考えだった。ロシア軍が3方面から大規模に侵攻すれば、ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府の指揮体系は瓦解すると仮定した可能性がある。その通りに戦争が進行すれば、5日目に無条件降伏に近い状況で終わった2008年のジョージア戦争と同じ様相になったはずだ。
ロシアが今回の戦争のために動員した15万人の兵力は、ウクライナの領土と人口を考慮すると十分でない。それでウクライナの首都キエフを含む大都市を核心目標に選定したとみられる。
ゼレンスキー大統領を中心にウクライナ国民は老若男女を問わず銃を握っている。ウクライナ国民の強い戦意はロシアが開戦を決定した時に考慮した「仮定」とは違っていたのだろう。プーチン露大統領の仮定は外れ、速戦即決の成功の可能性は遠ざかっている。
開戦の2、3日後、ロシアは包囲した大都市に進入するかどうかを悩んだ可能性がある。「都市は兵力をのみ込む」という言葉がある。市街戦は攻撃側に非常に不利だ。都心の建物は進撃を妨害し、敵軍には最適な待ち伏せ場所となる。このためロシアは1994-95年の第1次チェチェン戦争当時、チェチェンの首都グロズヌイで大きな被害を受けた。
キエフを含む市街戦でロシア軍に多くの死傷者が発生すれば、プーチン大統領は政治的に厳しい。ロシアは独裁国家だが、選挙を行う。次の大統領選挙でプーチン大統領は決して有利ではないはずだ。
◆西側の支援
昨年11月、ロシア軍が大規模な兵力を集結すると、米国はこれをメディアに積極的に公開し始めた。前例のないことだ。米国は2014年のクリミア半島、2021年のアフガニスタン撤収作戦の情報失敗を挽回するため切歯腐心したとみられる。米国が最初の侵攻予定日として公開した2月16日が実際にロシアが最初に計画した日程だったが、奇襲効果が消えて遅らせたという主張が説得力を持つ。
米国とNATO(北大西洋条約機構)はウクライナへの派兵を検討していない。しかし軍事支援は続けている。米国だけでも2014年のロシアのクリミア半島強制合併以降、ウクライナに54億ドル(約6兆5000億ウォン、約6240億円)の軍事援助をした。バイデン米大統領は3億5000万ドル規模を承認し、議会に64億ドルの予算を要請した。
米国はウクライナにジャベリン対戦車ミサイル、スティンガー地対空ミサイルなどを提供し、都心地域を中心に防御するよう助言したとみられる。携帯と操作が容易で、自発的に戦闘に参加する民兵も運用できるというのが、これら武器の長所だ。実際、ウクライナがロシアの戦車と装甲車、ヘリコプターを防ぐのに決定的に寄与している。
◆大隊戦術団の限界
ロシアは大隊戦術団という独特の部隊編成で戦闘に投入した。地域紛争介入に最適化された部隊編成だ。大隊戦術団の長所は小規模に戦車、装甲車、砲兵、防空など諸兵協同要素を最大限に含めた点だ。最も大きな短所は整備・補給などを担当する組織の編成が微弱という点だ。
このためロシアは2014年のドンバス紛争で大隊戦術団が敵地深くまで進撃しないよう指示したという米国の報告書がある。ロシア大隊戦術団はウクライナでの長期間作戦を制限せざるを得ない。一定の時間が経過すれば国境の外に待機中の大隊戦術団と交代で投入される可能性がある。