(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、同国南部の港湾都市マリウポリがロシア軍に包囲されている状況について、「人道的な大惨事」と述べた。ゼレンスキー氏はまた、ロシア軍が同市から2000人以上の子どもを連れ去っていると主張した。ウクライナ当局者は、多くの民間人がロシアに強制移送されていると話している。
ゼレンスキー氏はロシアの独立系の記者との取材に答え、マリウポリの状況について、「現実はこうだ。街はロシア軍によって封鎖されている。マリウポリの街からのすべての出入り口が封鎖されている」と指摘。市内の人道的な大惨事は明白で、なぜなら食料や医薬品、水が届かないからだという。ゼレンスキー氏は、ロシア軍が人道支援の車列を砲撃し、運転手を殺害していると述べた。
ゼレンスキー氏はまた、ロシア軍がウクライナ人のロシアへの強制移送に関与していると指摘した。
ゼレンスキー氏は「我々の情報によれば、2000人以上の子どもたちが連れ去られた」と述べた。正確な居場所もわからないという。
CNNは、マリウポリや他の町からロシアへと連れ去られた子どもの数について独自の確認は取れていない。親ロシア派の分離主義者は27日、マリウポリや他の都市からロシアへ、毎日約1700人が「避難」していると明らかにした。
マリウポリ死者5000人か ウクライナ側推計「戦争でなく大量虐殺」
ロシア軍による侵攻が続くウクライナ南東部のマリウポリの市当局は28日、露軍の包囲が始まった3月1日からの27日間で子供約210人を含む約5000人が死亡したとする推計を発表した。ウクライナメディアが報じた。 【写真】病院に爆撃、そこには妊婦が…戦地は今 人道危機が深刻化する同市の状況についてウクライナのベネディクトワ検事総長は「ジェノサイド(大量虐殺)に当たる」との認識を示し、露軍を強く非難した。ウクライナメディアによると、マリウポリでは包囲前に約14万人、包囲後には約15万人が避難に成功したが、今も市内には約17万人が取り残されているとみられる。このほか、市当局は市民約3万人がロシア側に「連行」されたと訴えている。市の推計では住宅や病院、学校などの約9割が露軍の攻撃により何らかの被害を受け、約4割は大破したとみられる。市内では今も戦闘が続いており、正確な死者数は確認できない状態という。 ベネディクトワ氏はマリウポリの状況について「これはもはや戦争犯罪ではない。戦争にはルールがある」と指摘し、「市内全てが人質になっている。水も食事も暖房もなく、避難しようとした住民の車列は攻撃される。(露軍に)連れ出された子供は2000人以上だ。これは戦争犯罪を超えている」と訴えた。ロシア国防省は「ウクライナの民族主義者部隊」が住民を「人間の盾」にしているなどと非難。露国内への住民避難を「自発的」で強制ではないと主張している。 一方、ウクライナ軍の反抗が続くキエフ北西部のイルピンの市長は28日、同市がウクライナ軍に「解放された」と明らかにした。市内ではまだ露軍の掃討作戦が続いているとし、露軍の再反撃の可能性にも触れたが、「我々はここを守り抜く。イルピンはウクライナだ」とビデオ声明で訴えた。 キエフ周辺では露軍による砲撃やミサイル攻撃が続く。キエフのクリチコ市長は28日、ロシア軍の侵攻以降、市内で少なくとも子供4人を含む100人以上が死亡したと明らかにした。82棟の高層マンションが破壊されており、死者数はさらに多い可能性があるという。クリチコ氏はウクライナ軍の抵抗で露軍の首都侵攻を阻止しているとし、「我々はロシア軍の『無敵神話』を打ち破り、彼らの(キエフ制圧という)目的を変更させることに成功した」とも強調した。 29日にはトルコのイスタンブールでロシア、ウクライナ政府代表団による4度目の対面の停戦協議も開かれる予定だ。インタファクス通信によると、ロシアのラブロフ外相は28日、ウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」が停戦合意の必須の要素となるとの露側の立場を改めて強調。停戦協議を「ロシアにとって原則的な目的を達成する結果で終えることに関心がある」と強硬姿勢を崩さなかった。一方で「合意のチャンスはある」と歩み寄りへの含みも持たせた。 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、停戦協議を前に英国のジョンソン首相と電話協議した。ジョンソン氏はロシア経済への圧力を強化する意向を表明。両者は今後も緊密に連携を取っていくことで一致した。【エルサレム三木幸治】
※記事中に残酷な描写があります。閲覧ご注意ください。
【マリウポリ(ウクライナ南東部)AP】砲撃が絶え間なく続く中、マリウポリの凍土に急いで掘られた狭いざんごうに、投げ込まれた子どもたちの遺体が横たわっていた。
生後18カ月のキリル君は、よちよち歩きの小さな体の頭部に砲弾の破片による致命傷を負っていた。16歳のイリヤ君の足は、学校の運動場でのサッカー中に爆発で吹き飛ばされた。6歳以下にしか見えない女の子は、一角獣の絵柄のパジャマを着ていた。ロシアの砲弾で死んだマリウポリの最初の子どもたちだ。
子どもらの遺体は他の何十体とともに市外縁部にあるこの集団墓地に積み上げられていた。道ばたの男性の遺体には明るい青の防水シートがかけられ、石の押さえが置かれていた。赤と金のシーツでくるまれた女性の両くるぶしは、白い端切れできちんと結ばれていた。作業員は次々と可能な限り素早く遺体を墓穴に投げ込んでいった。この隠れる場所のない空き地での作業時間が少ないほど、自分たちの生存のチャンスも上がるからだ。
「とにかく、早く終わってほしいよ」。作業員のボロディミル・ブイコウスキさんは、トラックから黒い遺体袋を引き出しながら怒りを込めて言う。「これを始めたやつらはくそだ!」
遺体は、まだまだやってくる。そこら中に散らばる路上から。病院の地下室から。病院には大人も子どもも並べられ、誰かが迎えに来るのを待っている。一番若い遺体は、まだへその緒がついたままだ。
抵抗の象徴マリウポリ
空爆や砲撃が時に毎分のように、容赦なくマリウポリをたたく。この市がロシア軍によるウクライナ制圧作戦の真正面に位置する地理上の呪いをたたき込むかのように。この人口43万人の南東部の港町は、プーチン露大統領によるウクライナ民主主義粉砕の、そして、それに対する激しい地上での抵抗の、象徴となった。
ロシア軍侵攻開始後の約3週間、AP通信のジャーナリスト2人は、マリウポリにいる唯一の国際報道機関の要員であり、混沌と絶望への転落を記録してきた。市は今やロシア軍兵士に囲まれ、砲弾の一発ごとに、命を押しつぶされつつある。
民間人退避のための人道回廊設置の呼びかけは無視され続け、3月16日にようやく約3万人が車列を組んで脱出したとウクライナ当局者が明らかにした。空爆と砲撃は産科病院、消防署、民家、教会、学校付近の運動場に着弾した。市民数十万人がまだ残るとみられるが、彼らに逃れる場所はない。
市の周囲の道には地雷が埋設され、港は封鎖されている。食料が不足しつつあるが、人道支援はロシア軍が止めた。電力供給はほぼなくなり、水も足らず、住民は雪を溶かして飲んでいる。新生児を病院に残す親もいるが、なんとか電力と水がある場所で子らに生き延びるチャンスを与えたいのだろう。
人々は壊れた家具を即席のかまどで燃やして、寒気の中で手を温め残りわずかな食料を調理する。手作りかまどの材料だけは豊富だ。破壊されたビルから路上に散らばるれんがや金属片だ。
包囲戦での住民死者「2500人超」
死が街を満たしている。露軍による包囲作戦開始後の死者数は地元当局によると2500人を超えたが、絶え間ない砲撃のため全ての遺体を数えられていない。当局者は遺族に、危険すぎて葬儀はできないから路上の遺体は放置してと伝えている。
APが記録した死者の多くは、子どもと母親だが、ロシアは民間人は攻撃されていないと主張している。
「彼らはマリウポリを人質にとり、あざ笑い、爆撃し砲撃し続けている」。ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、そう話した。
ほんの数週間前、マリウポリの先行きは明るく見えた。場所が都市の命運を決めるのなら、マリウポリは成功に向かっていた。高い国際需要に支えられ、地元の鉄鋼工場や深水港湾は活気づいていた。2014年、親露分離派との市街戦が起きた暗い日々も記憶の彼方に薄れつつあった。
今回ロシア軍の侵攻が始まった当初の数日間、多くの住民は奇妙な慣れを感じていた。セリ・オルロフ副市長によると、脱出が可能だった初期には約10万人の住民が退避した。だが、多くはこれからもやり過ごせる、いずれ西に逃げられると考えて、後に残ったのだという。
「2014年の方が怖かった。今回は同じパニックは感じない」。2月24日、市場で買い物中のアナ・エフィモワさんはそう話していた。「パニックは起きていない。だいたい、逃げる場所がない。どこに逃げればいいの?」
同じ日、ウクライナ軍のレーダー施設と空港がロシア軍の砲撃の最初の標的となった。砲撃と空爆はいつ来てもおかしくはない状態で、実際にやってきて、住民は退避壕(ごう)にこもることになった。生活は平常とはほど遠かったが、まだ生きることはできた。
増える子どもの犠牲
それも、2月27日には変わっていた。救急車が6歳にもならない身じろぎしない女の子を市の病院に救急搬送してきた。茶色の髪がゴムバンドでまとめられ蒼白な顔をしたその子のパジャマはズボンが血だらけだった。ロシア軍の砲撃で負傷したのだ。
自らもけがをして頭に包帯を巻いた父親が付き添っていた。母親は救急車の外に立ち泣いていた。
医師と看護師が彼女を囲み、注射をし、除細動器で電気ショックを与えた。青い手術着を着て酸素吸入を行っていた医師が、AP記者のカメラを真っすぐにのぞき込んで室内に招き入れると毒づいた。
「これをプーチンに見せてやれ」。激高した医師は罵言とともに叫んだ。「この子の瞳と、泣いている医者の姿を、見せてやれ」
彼女は助けられなかった。医師らはその小さな体をピンクのジャケットで覆い、丁寧に彼女のまぶたを閉じた。彼女は今、集団墓地に眠っている。
長年、マリウポリに有利に働いてきた地理的環境は、今や、その足を引っ張っていた。同市は、ロシアが支援する分離主義者が支配する地域から最短で10キロほどしか離れておらず、同地域と、ロシアが14年に併合したクリミア半島の間に位置している。マリウポリを制圧すれば、ロシアは両地域の間のアゾフ海沿岸全域を押さえることができる。
2月が終わり、包囲戦が始まった。危険を無視したのか、じっとしていられなかったのか、あるいは10代の若者が往々にしてそうであるように無敵だと感じていたのか、少年の一群が3月2日、学校のそばの運動場に集まり、サッカーを始めた。爆発が起き、イリヤの足は吹き飛んだ。
イリヤに運はなく、マリウポリの運も急速に下降していた。停電が起き、携帯電話もほとんど使えなくなっていた。連絡ができないため、救急隊員はどの病院でまだ治療が可能なのか、そこに到達できる道路はどこに残っているのか推理しなければならなくなっていた。
イリヤは救えなかった。父のセルヒは、死んだ息子の頭を抱いて嘆いた。(翻訳・和田浩明/デジタル報道センター)
ロシア軍が ウクライナで虐待されているロシア系住民を、助けるために侵攻し、そのロシア系の住民の住宅を灰燼に帰し、女・子供に爆弾とミサイルの雨を降らし、地下に逃げ隠れた住民の 女・子供をロシアに連れ去り、特にシベリアにその収容所を作って移動させているという、 日本が1945年8月15日以降にソ連軍によって、満州や北方領土で行われた、悲惨な事態と全く同じではないか???? 誰が悪い??
ロシアの政治体制が悪い
アブラモビッチ氏とウクライナ交渉団に毒物か 関係筋明かす
イングランド・プレミアリーグ、チェルシーのオーナーでロシア人富豪のロマン・アブラモビッチ氏(2016年8月15日撮影、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】米紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)は28日、関係者の話として、ロシア人富豪ロマン・アブラモビッチ(Roman Abramovich)氏とウクライナの交渉代表団が、両国間の停戦交渉を妨害しようとするロシアの強硬派により毒を盛られた疑いがあると報じた。AFPが取材した関係筋も、同紙の報道を事実と認めた。 【写真】ロシアとウクライナが開いた協議の様子 ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)に圧力をかけることを目的とした西側諸国の制裁を受けているアブラモビッチ氏は、各地で行われる両国間の交渉に参加していると報じられている。 関係者がウォールストリート・ジャーナル紙に語ったところによると、ウクライナの首都キエフでの協議後、アブラモビッチ氏と少なくとも2人のウクライナ代表者が、目の充血や痛み、涙目、顔や手の皮膚の剥離などの症状を訴えた。その後回復し、命に別条はないとされている。実行者の正体は不明だが、被害者は停戦交渉を妨害しようとするロシアの強硬派による犯行を主張しているという。 同紙の取材に応じた英検証サイト「ベリングキャット(Bellingcat)」研究員のクリスト・グロゼフ(Christo Grozev)氏は、「殺害の意図はなく、単なる警告」だったとの見方を示した。同氏は、2020年にロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が神経剤による毒殺未遂に遭った事件について、ロシア政府の工作員が実行したとの調査結果を出している。 グロゼフ氏はアブラモビッチ氏の被害の様子を捉えた画像は見たものの、毒物検出のためのサンプル採取は間に合わなかったという。グロゼフ氏はツイッター(Twitter)への投稿で、被害に遭った3人は「症状が出るまでの数時間、チョコレートと水しか口にしていなかった」と説明している。【翻訳編集】 AFPBB News