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中国は、「COVID-19」(新型コロナウイルス)の大流行を機に、オンライン監視、データ収集、言論検閲を拡大し、ハイテク手段で社会をコントロールしようとしていることはよく知られている


膨大なデータ収集するTikTok

  新田 容子  2023/1/05(木)  Viewpoint 

 

仏国立安全保障防衛研究センター上席フェロー 新田 容子

 

中国共産党の罠に用心を
対外宣伝戦略とアルゴリズム合致

 

新田 容子

仏国立安全保障防衛研究センター上席フェロー 新田 容子

 中国は、「COVID-19」(新型コロナウイルス)の大流行を機に、オンライン監視、データ収集、言論検閲を拡大し、ハイテク手段で社会をコントロールしようとしていることはよく知られている。

 TikTok(ティックトック)といえば、当初、日本の高校生、大学生の間で最も人気のあるダンス動画作成のツールとして知られていたかもしれない。が、今や大手百貨店も消費を動かす手軽なツールとしてTikTokを積極的に利用している。業界のトレンド誌ではTikTokについて収益に直結できるツールとして大真面目に語られている。利用年代層が着実に上がってきており、個々の日常生活に浸透していると言ってよいだろう。

データ提供を義務付け

 しかし、セキュリティー上の懸念から、インド、アフガニスタンバングラデシュインドネシア、そして米国の複数の州ではTikTokの政府所有デバイスでの使用を禁止している。中国共産党(CCP)の傀儡(かいらい)企業が中国政府の支配下に置かれることが懸念されたため、当時のトランプ米大統領は早くから同アプリを批判し、TikTokが米国ユーザーの情報を中国政府に流している可能性があると主張した。

 トランプ前大統領は2020年に同アプリの新規ダウンロードを禁止する大統領令に署名した。わが国でもこの9月に自民党議員連盟は、利用者の個人情報が中国政府に渡るおそれがあるとし、利用を制限するため、政府に法整備を求めていく方針を確認した。

 TikTokは単なるFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)のようなソーシャルメディアアプリではないからだ。TikTokの中国の親会社であるByteDance(バイトダンス)は、中国の法律により、アプリのデータをCCPに提供することを義務付けられている。

 TikTokは、クリエイティブな動画ではなく、毎日何千万人もの各国の子供や大人のデータを毎日収集しており、フィードを操作し、選挙に影響を与えるために使用され、人を中毒にし、ニュースを検閲するアプリだ。

 TikTokのアルゴリズムは、各ユーザーが何を見るかを決定し、そのアルゴリズムの不透明性こそが、個々そして国家安全保障上のリスクを最も懸念させる。正確な予測を行い、ユーザーにコンテンツを推奨できるだけではない。「コンテンツモデレーターの迅速な検閲を支援することもできる」と関係筋は証言している。

 具体的にはCCPは何十万ものゲームのインストールから、ユーザー名、料金情報、実際の場所、ゲーム内チャット用の固定音声サンプルなどの情報を入手している。

 このアプリは22年に30億のダウンロードを記録し、TikTokの月間アクティブユーザー数は、22年1月時点で10億人だ。中国政府が管理する企業が、これだけの数字を打ち出し、個々の情報を収集している。インターネット自由度が世界で最下位のランクに位置する中国での話だ。

 実験によれば、TikTokのアルゴリズムは、政治的に中立なフィードから極右的なコンテンツにユーザーを誘導できる。この戦略は「借嘴説話(口を借りて話す)」と呼ばれ、国が所有・運営するソーシャルメディアアプリで密(ひそ)かに展開するのにもってこいだ。中国外交部と国営メディアが展開している対外宣伝戦略と一致する。

 TikTokは、これまでほとんどのソーシャルメディアプラットフォームで好まれてきたクリック数やエンゲージメントといった指標を優先するのではなく、個人を特定できる情報、キーストロークのパターン、SIMカードおよび/またはIPアドレスに基づく位置情報、アプリの動作、ブラウザーおよび検索履歴生体情報(顔・声紋)の膨大なデータを収集し、主に数分~数時間の閲覧時間に対してコンテンツを最適化している。

正確にその特徴理解を

 この戦略で、アプリが利用できる場所の文化を必ずしもよく理解していない中国のエンジニアのチームは、世界を座巻できる。このアルゴリズムは、自然言語処理モデルまで搭載し、他国の市場や文化を完全にブラックボックスとして扱うことができるほど巧妙なものであり、その外国にいる一人ひとりの人間の好みを処理できる。

 わが国の政策立案者は、TikTokの特徴を正確に理解すべき時期に来ている。

(にった・ようこ)(2022年12月21日記)