パルデンの会

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中国が5%成長を遂げるという習近平の方針は、張り子の虎としか言い様がない。

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 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)3月19日(日曜日)
      通巻第7674号 
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 中国全人代は達成不可能な数値目標が並んだのだ
GDP成長が5%。赤字はGDPの3%以内。地方債は72兆円が上限
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 3月5日から13日まで開催された全人代では、初日に李克強首相〔当時〕が演説した。
 GDP成長目標を5%とし、22年は「コロナ禍と不動産不況にも拘わらず3%伸びた」と白々しく言い添えた。
 都市の新規雇用は1200万人、失業率を5・5%とする。インフレ抑制を3%前後とし、赤字国債の上限はGDPの3%とする。また食糧5000万トンを増産する等とおおよそ達成不可能な数値目標を並べたてた。

 政府活動報告で目立った表現には「習近平同士を核心とする党中央の力強い指導」、「習同士の核心としての地位と習を中心とする党中央の権威を守る」など時代錯誤の修辞が続き、「貧困脱却堅塁攻略戦に勝利する」と抽象的で意味不明な表現があるようするに貧困層を減らし皆の暮らし向きが良くなるように努力すると言いたいのだ。

 内需拡大の項目では「地方政府特別債は3兆8000億元〔76兆円〕とする」とあって、表現に隠れているが、地方政府債務を新規債券発行で肩代わりし、当面誤魔化せと言っているようなものである。
 地方政府が乱発した債券は既に1000兆円を超えたと推測されている(公式には900兆円前後)。

 名指しはしていないが欧米のサプライチェーンの分断に関して「製造業の重要産業チェーンに関して国を挙げて重要な核心技術をめぐる難関を乗り越え、ハイテク研究開発と応用促進を加速する。デジタル経済をおおいに促進する」とする一方で、外資の市場参入規制を緩和し、TPP加入交渉を推進する』とも主張している。

 同時に『金融』と『香港、マカオ、台湾』の項目で政府活動報告は何を言ったのか。
 「習近平の強軍思想」を貫徹し、環境にも取り組むとしたうえで、金融では「監督監査を強め、地域性、系統性金融リスクを回避する。大手不動産企業の経営危機に対処し、負債比率を改善し、無計画な拡大経営を防ぎ、不動産の安定成長をうながす」。
このため「地方政府の債務リスクを防止・解消し債務期限構造を改善し、利息負担を低減し、新規発行額を抑え、債務残高を削減する」とした。

 この箇所を裏読みすると不動産は無謀な計画で大借金の山を築いたが、利下げと期限を延ばして救済措置をとるという意味だろう。そして、なんとか市況の暴落を防げないものかと言っているのである
 「昨年の不動産投資は前年比10%減。それだけでGDPは3%の下落圧力になる。それでも実質3%の成長をとげたとは信じがたい」(田村秀男氏、産経新聞3月18日)。


 ▲行政機関は無力化、重要部門は党直轄に

 「チャイナウォッチャーのなかには、これを「地方分権全体主義」と呼ぶが、習思想などと意味不明の個人崇拝体制で行政と経済政策が、最高指導部管轄となれば、国務院以下の中央官庁の存在意義はどうなるのか? 
行政機構は無力化し、無骨格状態となり、党中央独裁、いや個人独裁の毛沢東時代と変わらなくなる。

 香港とマカオの「一国二制度」の方針を揺るがずに貫徹すると唱えながら(すでに反古となっているが)「法に基づく統治を堅持する」とした。香港とマカオ自治を踏みにじったが、「法に基づく統治」と言うのは、その後、勝手に創った共産党支配合法のための「新法」を指す。
 台湾についても「新時代の党の台湾問題解決の基本方策を貫徹し、独立反対、祖国統一促進を貫き、「祖国の平和的統一への満ちを歩む」などと「平和的統一」の美辞麗句を並べただけだった。

 金融、治安、ハイテクが共産党の直接管理となった。ここが一番重要なポイントである。
西側の制裁に対抗し、統制を強化する目的がある。つまり国務院がこれまで専管事項だった分野も共産党直轄になったわけだ。
 治安では公安、国家安全部と戸籍の管理を共産党内務工作委員会へ移管する。
 金融では人民銀行と金融監督部者が共産党のふたつの委員会に権限移管され、科学技術と教育部門が党の専門委員会の直轄となる。

 3月16日に発表された機構改革では党に「中央金融委員会」を設置し、金融安定を党が指導するうえ、「中央金融工作委員会」を別途設置し、金融システムの組織、規律を統一的に進める。国務院には名目的に「国家金融監督管理総局」が設置される。 

 人事面では新首相に経済素人の李強が任命された。前任の李克強北京大學経済学博士号。続投する易鋼(人民銀行総裁)イリノイ大学博士号を持つ専門家だ。
 国家副主席には韓正が選出された。王岐山前副主席は完全な引退に追い込まれた。
人民銀行総裁に居座ることになる易鋼は中央委員候補からもすべりおち、もはや飾りでしかない。胡錦濤時代に中国銀行総裁だった周小川にはやや独自政策の裁量権があったが、金融も共産党直轄となれば、政策に柔軟性を希求するのは無謀だろう。


 ▲中国が「特許大国」ですって。(剽窃世界一の国が?)

 こうみてくると以下の報道がいかに白々しいか。
 中国は米国と並ぶ「特許大国」となった、そうな。実態は研究論文と申請件数のおびただしさで、他人の論文の剽窃や横取りも多い上、これからもつれるであろう難題は、日本や米国と中国との共同出願による特許がかなり存在することである。
とくにEV、スマホ太陽光パネル、電池、レアメタルなどの先端分野に集中している。中国はこれら共同特許も解釈変更で中国の特許としている。トヨタは中国との共同特許が30件、まるで人質ではないか。

国際学会での論文数では米国を抜いて中国が一位、以下、韓国、台湾、日本とつづき、技術大国だった日本の地位低下が顕著になった。十年後に日本人のノーベル賞受賞者はいなくなるかもしれない。
 米国企業での問題は、研究者の中に圧倒的に中国人が多く、わけてもテスラの技術陣は中国人が過半という。つまり中国人エンジニアが不在となると、世界各地で生産効率が下降する。その一方では、使命を帯びて外国企業にはたらく中国人のスパイ活動がある。

 中国の23年の成長率目標が5%となったことは見た。
 西側企業の中国撤退が続いている上、日米欧は中国へのハイテク輸出を規制し、米国はブラックリストを公表し、日欧にも協力を要請した。とりわけ半導体装置では日本とオランダが米国と協議し輸出停止を申し合わせた。
 欧米ファンドも中国から引き上げをはじめ、中国をのぞく新興工業国家群への投資に分散、米ファンドの日本向け投資は中国へのそれの二倍ちかくになった。
 ベトナム、インド、マレーシア、豪州などへ禿鷹ファンドのKKRやブラックストーンなどの巨大ファンドが投資対象を切り替えた。
 中国株への投資も海外マネーの逃避が続出している。アリババ、JD、美団など中国のハイ的企業株から足を洗っているのだ。
 かような情勢変化に直面する中国が5%成長を遂げるという習近平の方針は、張り子の虎としか言い様がない。
    ◎☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□