パルデンの会

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チベット人の人権活動家、ドンドゥプ・ワンチェンさん(48)が初来日「現在のチベットは巨大な監獄。自由な国に逃れても、チベットの人たちを思うと苦しみは晴れない」と人権状況の改善を求める

チベットの声伝えた政治囚が初来日 中国を批判の映像撮影で収監

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毎日新聞

 中国のチベット政策を批判する映像を撮影して収監され、後に米国に亡命したチベット人の人権活動家、ドンドゥプ・ワンチェンさん(48)が初来日した。「現在のチベットは巨大な監獄。自由な国に逃れても、チベットの人たちを思うと苦しみは晴れない」と人権状況の改善を求める。

6月11日まで、ドンドゥプさんの講演会が各地で開かれる。  

中国青海省チベット圏の農村生まれ。チベット自治区で商売を営み、ネパールやチベット亡命政府のあるインド北部にも滞在し、チベットについて中国政府が宣伝する内容は事実と異なると感じていた。2008年の夏季北京五輪が近づき、世界が中国に注目する機会にチベット人の意見を発信しようと計画。妻ラモツォさん(51)と子ども4人をインドに行かせ、自身は07年秋から5カ月かけ五輪開催への感想や、チベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世への思いを尋ねたインタビューを収録した。  撮影終了直後の08年3月、ドンドゥプさんは身柄拘束された。同時期、現地では中国政府への抗議活動が広がり、武力弾圧により多数の死者が出ていた。撮影済みの映像は海外で編集され、五輪開幕直前の8月、25分のドキュメンタリー「LeavingFearBehind(恐怖を乗り越えて)」として公開された。  「自分たちの言語と文化を学び継承したい」「ダライ・ラマ14世チベットに戻られたならうれしくて川に飛び込むよ」――遊牧民の青年、幼児を抱いた女性、年老いた僧侶ら、ごく普通の人々が口にする素朴で切実な希望からは、圧政が反語的に浮き上がる。日本語や中国語の字幕版も作られ、世界各国で反響が広がった。  ドンドゥプさんは09年末、国家政権転覆罪で懲役6年の判決を受けた。国際人権団体や米国議会が非難声明を出した。ラモツォさんは、インドで開かれた集会でマイクを持ち、チベット女性協会のキャンペーンビデオに出演し、夫の釈放を訴えた。働いて子ども4人を育てながら夫の無事を願い続けるラモツォさんは、言論の自由の象徴的な存在となり、岩佐寿弥監督(13年に78歳で死去)の「オロ」(12年劇場公開)など日本人監督のドキュメンタリー複数にも登場した。  服役を終えて14年に出所後も、ドンドゥプさんは青海省で軟禁状態に置かれた。移動を禁じられ、親族や知人とも遠ざけられ、電話やインターネットも制限される状況で、亡命を決意。17年末、雲南省からベトナムに密出国し、カンボジア、タイ、欧州を経由して米国に保護された。  09年からラモツォさん家族を撮影した小川真利枝監督(39)=大阪市=は、「ラモツォの亡命ノート」(17年劇場公開)を完成させた後も、米国で家族と再会したドンドゥプさんを取材した。映画での家族の空白を埋める形で20年3月、著書「パンと牢獄 チベット政治犯ドゥンドゥップと妻の亡命ノート」(集英社クリエイティブ)=第8回山本美香記念国際ジャーナリスト賞受賞=を出版。ドンドゥプさんの来日は同書の刊行に合わせての計画だった。新型コロナウイルスなどの影響で3度にわたり延期され、4年越しで実現した。  

東京都内で5月26日にあった講演会で、ドンドゥプさんは「チベットの人権状況は当時より更に悪化している」と話した。拘束中の拷問や服役中の強制労働を証言した上で、自宅軟禁の精神的苦痛を強調した。「刑務所から出たのに、見張られ、孤立し、会いたい人と会えず、周囲の誰も信用できない。ただ生きているだけの人生は無価値だと感じ、その時に本で読んだ『命よりも大切なものは自由だ』という一節の意味を実感した。これからの生涯をかけて体験を語り、チベットに自由を取り戻したい」

 

 講演は、6月3日午後2時、福岡市(福岡市市民福祉プラザ)▽4日午後1時、大阪市金光教大阪センター)▽8日午後7時、広島市(合人社ウェンディひと・まちプラザマルチメディアスタジオ)▽10日午後2時、高知市高知市立自由民権記念館ホール)▽11日午後4時45分、神奈川県鎌倉市(鎌倉生涯学習センターきらら鎌倉)。詳細はウェブサイト(https://peatix.com/event/3554224)。【藤田祐子】