パルデンの会

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米国ワシントン市内で日本政府 主催拉致問題シンポジウムが開催された。


本日5月2日現地時間の午後三時から五時まで、米国ワシントン市内で日本政府主催拉致問題シンポジウムが開催された。


シンポではまず、古屋圭司拉致担当大臣、ロバート・キング米国・北朝鮮人権特
使が日米両国の立場から基調講演をした後、西岡力救う会会長、荒木和博調査会
代表、ビクター・チャー元NSC部長が専門家として講演し、飯塚繁雄家族会代表、
増元照明同事務局長、特定失踪者小林榮さんの弟小林七郎さんが家族としての訴
えを行った。会場はほぼ満席で120人が集まった。

 ここでは、救う会西岡会長の講演原稿を全文紹介する。


 日本の拉致被害者救出運動と北朝鮮による国際的拉致の実態

西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授)
1.家族会・救う会の活動について
横田めぐみさんの拉致が明らかになったことを契機として、拉致家族が被害者の
実名を公表して救出運動を行なうことを決断し、19973月、家族会(北朝鮮
よる拉致被害者家族連絡会、The Association of the Families of Victims
 Kidnapped by North Korea (AFVKN))を結成(写真)した。当時、実名を出し
たら証拠隠滅のために北朝鮮が被害者を殺害するかもしれないと言われていた中
での、重い決断だった。
その家族会を支援するために、日本各地で支援組織が設立され、1998年、「救う
会」全国協議会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会The
National Association for the Rescue of Japanese Kidnapped by North Korea
NARKN))が設立された。
また、19974月、超党派の国会議員により議員連盟が結成された。さらに現在、
すべての都道府県の知事が「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」を結
成し、また都道府県の議員が「拉致問題地方議会全国協議会」を結成し、救出運
動に協力している。
 家族会と救う会は、すべての拉致被害者を取戻す国民運動を続けている。日本
政府に被害者の早期救出を求める署名は1000万を越えた。先週の土曜日427
に東京で私たちは大きな大会を開いた。安倍首相、古屋担当大臣、与野党代表を
初め40人以上の国会議員、130人以上の地方議員、3人の知事を初めとする28地方
自治団体代表、2千人の国民が全国から集まり、新聞テレビは全国ネットで大き
く報道した。日本人の拉致問題に関する怒りは低下していない。
2.北朝鮮による国際的規模の拉致
レバノン拉致被害者、韓国人拉致被害者、日本人拉致被害者らの証言と救う会
の調査の結果、北朝鮮による拉致被害国は日本と韓国だけにとどまらず、国際的
な規模に広がっていることが明らかになってきた。現在、北朝鮮による拉致が間
違いない被害国は、日本、韓国、中国(マカオ)、タイ、レバノンルーマニア
6カ国である。また、状況証拠や証言などから北朝鮮による拉致の疑いが極め
て濃厚な被害国は、フランス、イタリア、オランダ、ヨルダン、シンガポール
マレーシア、アメリカの7カ国、合計13カ国に被害者が出ている。
 北朝鮮は全世界にわたって大規模な拉致を行った。
 北朝鮮による拉致は以下の4つの大きなピークがある。

1期、1950年から53年までの朝鮮戦争中の韓国人拉致、
 約10万人の韓国民間人が拉致された。
2期、朝鮮戦争休戦後から1976年までの漁船拿捕を中心とする韓国人拉致、
 500人以上が拉致された。
3期 1976金正日の「工作員現地化教育のための教官拉致」指令による世界規
模の拉致
 金正日は、1974金日成の後継者として公式に指名された後、対南工作部門の
集中検閲を行い、1976年初め、対南工作の新方針の一環として「工作員の現地化
教育を徹底して行え。そのために現地人を連れて来て教育にあたらせよ」「工作
員は日本に行けば日本人に、中国に行けば中国人に、カンボジアに行けばカンボ
ジア人になり、言語・習慣・職業問題を合法的に解決できなければならない」と
命じた。
 大韓機爆破テロの犯人である金賢姫1980年から工作員になる教育を受けた。
彼女は日本人拉致被害者から日本人化教育を、中国人拉致被害者から中国人化教
育を受けたが、教官から「お前たちは現地化教育の一期生だ」と言われたという。
 拉致指令の翌年の1977年から1978年にかけて工作員の教官にするための日本人、
韓国人、外国人拉致が世界規模で集中して行われた。
 日本政府認定の17人のうち13人がこの2年に拉致された。また、韓国、日本以外
10カ国、タイ、レバノンルーマニア、中国(マカオ)、シンガポール、マレ
ーシア、ヨルダン、フランス、イタリア、オランダの拉致はすべて78年かその直
前に集中している。
まず、被害者が特定されているタイ、レバノンルーマニア、中国(マカオ)に
ついて簡潔に説明する。2002小泉首相の訪朝の結果、帰国した日本人拉致被害
5人の中の一人である曽我ひとみさんは北朝鮮で脱走米兵ロバート・ジェンキ
ンズさんと結婚していた。彼女は別の3人の脱走米兵の家族と同じアパートで暮
らした。その3人の妻も全員、拉致被害者だった。タイのアノーチャー・パンチ
ョイ(Anocha Panjoy)さん、レバノンのシハーム・シュライテフ(Siham
Shraiteh)さん、ルーマニアのドイナ・ブンベア(Doina Bumbea)さんだ。
タイのアノーチャーさんは1978マカオに働きに行っているとき拉致された。彼
女が拉致された日に、マカオ人女性2人孔令? (Leng-ieng Hong)さんと蘇妙珍
Mio-chun So)さんも失踪していた。その孔さんを北朝鮮で目撃したという人
物が2人いる。すなわち、1978年に拉致され1986年に自力で脱出した韓国人拉致
被害者の女優崔銀姫Un-hee Choi)氏と大韓航空機テロ実行犯の金賢姫
Hyon-hui Kim)氏だ。
次に拉致の疑いが濃厚な6カ国の事件について説明したい。実は、1978年レバノ
ンから4人の女性が拉致された。しかし、レバノン政府がその事実を知り抗議し
たことなどから1979年、4人は帰国した。ところがシハームさんはすでに米兵と
結婚し妊娠していたため北朝鮮に戻り、現在まで抑留されている。その4人から
レバノン政府が行った事情聴取の結果、彼女らは日本企業に就職すると騙され
北朝鮮に連れて行かれた後、工作員になる基礎訓練を受けさせられたという。
いっしょに訓練を受けた中に、フランス人、イタリア人、オランダ人等がいた
と証言している。そのことが現地のアラビア語新聞に報道されている。そのほ
か、ヨルダン人、シンガポール人、マレーシア人が拉致された疑いが濃厚だ。
 金正日20029月、訪朝した小泉首相に、日本人拉致を認め謝罪した。だが
「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走ってこういうことを行ってきたと
考えている」として自身の関与を否定した上で、わずか5人だけを帰し「拉致し
たのは13人だけ、残り8人は死亡した」という新たな嘘をついた。なぜ、金正日
は生きている横田めぐみさんや田口八重子さんを死亡したとするウソをついた
のか。端的に言って、76年の金正日拉致指令は秘密とするためだ。めぐみさん
らを返すとその秘密が暴露するとおそれたのだ。
 金正日は現地化した工作員を使って大韓航空機爆破というテロを実行してい
る。拉致指令が明らかになれば、北朝鮮は、国連安保理常任理事国のフランス
や中国をはじめとして全世界から糾弾される。拉致問題は日本と北朝鮮の外交
懸案でなく、全世界と北朝鮮の懸案となる。だからこそ、金正日は拉致の全貌
を必死で隠したのだ。
 息子である金正恩は拉致には関与していない。したがって、相対的に拉致問
題を解決しやすい立場にいる。外部から強い圧力がかかって政権を維持するこ
とが困難になれば、相対的に容易である拉致被害者を返す交渉に応じる可能性
がある。
4期 1990年代後半以降、脱北者支援など北朝鮮にとって「有害」と判断さ
れる行為を行う者たちの拉致
1990年代後半以降、人口の15%にあたる300万人が餓死する中、大量の脱北者
が中朝国境を越えた。韓国人キリスト教宣教師や貿易商らが中朝国境地域で
それらの脱北者を助けるようになり、その結果、金正日政権にとって望まし
くない外部情報が北朝鮮に大量に流入することになる。このころから、国家
保衛部が中国まで出てきて脱北者の取り締まりを行っている。その過程で、
脱北者を支援していた韓国人宣教師などが拉致された。また、2000年代にな
脱北者を支援していた中国国籍朝鮮族が多数拉致されたという有力情報が
ある。
2004814日、東南アジア諸国と境界を接する中国南部の雲南省
Yun-nan-sheng)迪慶(De- chenデチェン)チベット族自治州シャングリラ県
香格里拉Shangri-La県。旧称、中甸Zhong Dian)で消息を絶った米国青年デ
ヴィド・スネドン(David Sneddon、当時24)もまさにこの時期の拉致の類型に
あてはまる。
救う会は次の三つの理由からデヴィド・スネドン氏が北朝鮮に拉致された可能性
が高いと考えている。
1 スネドン一家の長兄のマイケル氏らが行った現地調査の結果、トレッキング
中に事故にあった可能性はほぼないことが判明した。デヴィドはトレッキングコ
ースの最終地点で韓国料理店に立ち寄っていたことが判明している。
2 スネドン氏が失踪した時期の2004年は、拉致類型の第4期、北朝鮮の国家保
衛部が中国内で脱北者を支援している外国人を拉致していた時期であり、昆明
脱北者ラオス、タイに逃げるルートであり、国家保衛部が活動していた。
3 20048昆明で中国の政治警察である安全局が米国人留学生を逮捕したと
いう情報を救う会が中国消息筋から入手している。救う会は昨年5月ワシントン
でその情報を公開した。
 〈20048月、雲南省昆明市の大学に留学していた1人の米国人男性が不法滞
在者を助けたという理由で、昆明市で中国国家安全局に捕まった。その男性は
白人で当時、23歳か24歳であった。
 安全局は、米国から「ジェイス?」(発音不明瞭)がその米国人男性を探し
に来ることを知り、9月に釈放した。

 米国人男性の中国人ガールフレンドは、彼は解放されず当時昆明脱北者
視のために来ていた5人組の北朝鮮国会保衛部員に捕まった、と話していた。〉
 その時点では公表しなかった情報2つを今日公開する。まず、昨年5月の時点
ですでに入手していたが情報源を守る観点などから公開しなかった情報の詳細
についてである。
〈中国人ガールフレンドは北京に住んでいて英語が達者だった。

彼女は20048月米国人留学生が昆明に行った後、連絡がつかなくなったので探し
ていた。
9月にその留学生本人が彼女に電話をして、不法滞在者を助けた容疑で安全局に捕
まったが釈放された、近く米国から自分を迎えに来ると伝えた。
ところがその電話から3日か4日後に、彼女が昆明に行くと彼は見つからなかった。
彼女は米国人留学生を捜し回った。
そのとき、彼女は親しい中国人男性に、「米国人留学生は昆明に来ていた北朝鮮
国家保衛部の5人組に捕まったようだ」と話した。
その後、彼女は姿を消して連絡がつかない。〉
次に、昨年5月以降に同じ情報源から入手した中国の動きに関してだ。
20125月、救う会昆明で安全局に逮捕された米国人留学生の情報を公開し
た後、雲南省安全局で同問題に関する内部調査があった。その結果、雲南省
全局内で人事があった〉
以上、北朝鮮による拉致は日朝2国間の問題でなく、北朝鮮が世界規模で行っ
たテロ事件であることを説明してきた。アメリカ人も拉致されている可能性
が高い。北朝鮮は自国民の人権を著しく抑圧しているだけでなく、世界規模
で拉致を行ない、いまだに多数の無辜の外国人を不当に抑留し続けている。

以上