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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年6月26日(水曜日)
通巻第3972号
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中国で一番治安が良い都市はチベットのラサ、という皮肉
党中央にチベット政策変更の議論が起こっている気配がある
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1988年から92年までチベット自治区の書記は胡錦涛だった。かれは中央の指令に基づき弾圧を繰り返した。チベットに「高度の自治」を要求するダライ・ラマ猊下の呼びかけに呼応したチベット民衆へ、容赦なき血の弾圧によって秩序だけを確保した「実績」に党中央の覚えめでたく、その後、胡錦涛は出世階段を駆け上った。以後、習近平の登場まで、強硬なチベット政策に変化はなかった。
▼漢族の夥しい入植は新しい摩擦を産んだ
強硬派のなかに変化の兆しがあるのは、党中央においてチベット、新彊ウィグル自治区問題担当の責任者に愈正声が任命されたこと。党学校シンクタンク少数民族研究所のなかに、チベット政策の変更をとなえる論文が現れたことなどによる。
宗教対立でも独立要求でもなく、ましてダライ・ラマのとなえる高度の自治を要求してのチベットの反乱ではなく、近年の暴動や焼身自殺はチベットの文化、伝統、言語を尊重しない漢族の移民増大に怒りが集中している。
これが近年の特徴である。
党中央学校『少数民族研究』主任のジ・ンウェイ(音訳不明)は次のような大胆な提案をした。
「中国政府と亡命政府との対話は実りが少ないが、ダライ・ラマを一度、香港かマカオに招待し、特別自治区の実態をみせ、あるいはチベットへの一時帰国を許可してはどうなのか。ダライ・ラマの死亡によって中国内で次の後継者を選ぶという方法さえ、ダライ・ラマ「亡命政府」との間でなされないまま、万一を迎えると、『それでおしまい』という党中央の方針は間違いであり、もし二人のダライ・ラマ後継が近未来に併存するとなれば、混乱はいっそう増してしまうだろう。強硬姿勢のままでいれば、暴力的な示威行動が高まり、むしろチベット独立運動が再燃しかねない」と、これがジン・ウェイの言い分である。
皮肉にもラサは中国国内の都市のなかで治安が一番良い場所と言われる。