チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世のモンゴル訪問が中国政府の圧力によって中止に追い込まれていたことが分かった。中国の習近平国家主席が8月21日、22日にモンゴルを訪れ、エルベグドルジ・モンゴル大統領と会談。モンゴル政府としては、中国側の要求を受け入れざるを得なかったとみられる。在京のチベット仏教関係者が明らかにした。
 ダライ・ラマのモンゴル訪問は今年初めから準備が進められており、8月初旬に首都ウランバートルで、チベット仏教の大規模な宗教儀式であるカーラクチャラ灌頂法会が行われる予定だった。
 ところが、中国側はダライ・ラマの宗教儀式が行なわれるのなら、「習主席のモンゴル訪問はキャンセルする」と迫ったため、モンゴル政府がダライ・ラマ招請したモンゴルの宗教団体に圧力をかけて、ダライ・ラマ訪問を中止させたという。
 モンゴルは国民の大半がチベット仏教の信者だけに、ダライ・ラマの人気は絶大で、ダライ・ラマのモンゴル訪問は2011年11月までに8回あるが、中国側の圧力で中止に追い込まれたのは初めて。
 中国の国家元首がモンゴルを訪れるのは2003年6月の胡錦濤主席以来で、11年ぶり。今年は中国とモンゴルの国交樹立65周年だけに、中国側はモンゴルの鉱山開発のほか、さまざまな経済協力協定の締結を約束しており、エルベグドルジ大統領としても、ダライ・ラマよりも習主席の訪問を優先せざるを得ないという国内事情があったといえよう。