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豪州政府、南シナ海の中国・人工島12海里に
航空機・艦船の進入を検討
あらゆる選択肢が検討されているが、最も有り得るのは、北マレーシアのバターワースにある、かつての豪州の基地から空軍哨戒機P-3を飛行させることのようである。人工島の12カイリ内を飛行するので、北京が反応することは確実である。5月20日、米国は海軍哨戒機P-8にCNNのカメラを乗せてフィアリー・クロス礁の上空を飛行させた際、中国は繰り返し退去を命じたが、同様の反応が予期される。
豪州は既にルーティンとして南シナ海に哨戒機P-3を飛行させている。アンドリュース国防相は、シャングリラ対話(アジア安全保障会議)で、中国に埋め立てを停止するよう要請した。豪州には島の帰属について特定の立場はとらないが、「航行の自由」は阻害されてはならないと主張している。
艦船や航空機の派遣は米国主導のオペレーションの一環として行われるのではない。艦船については、フィリピンあるいはベトナムの港湾への寄港の途次という形になろう。北京が領海と考える海域を侵犯するために海軍を展開するということではなく、別の目的のための航海の一部としてたまたま航行するということである。それでも「航行の自由」の完全な権利を主張することになる。
豪州は米国や地域の関係国と緊密に連絡しており、米国の哨戒機P-8の飛行についても事前に通報を受けていた。フィリピンおよびベトナムの艦船も中国が造成した人工島の12カイリ内を航行している。日本やインドも同様の行動をとることがあり得よう。米国も更なる飛行や航行を行うことはほぼ確実である、と報告しています。
出典:Greg Sheridan,‘Flight exercises to test China waters’(Australian, June 4, 2015)
http://www.heraldsun.com.au/business/breaking-news/flight-exercises-to-test-china-waters/story-fnn9c0hb-1227383280276?from=herald%20sun_rss
これは、興味深い記事です。豪州が南シナ海の問題に真剣に対応しようとしているのは、大変心強いことです。「飛行の自由」「航行の自由」を守るという意思の表示および一方的な領有権の主張の既成事実化は認めないという意思の表示のため、検討中の飛行と航行が実行されることが期待されます。記事が言う、フィリピンやベトナムへの寄港の途次にかすめ通るように人工島の12カイリ内を通過するというアイディアは、よく考えられたものと思います。
この記事がいうように日本にも同様の行動をとる用意があるとすれば、例えば、海上保安庁の巡視船がマニラ港に向けて航行の途次、どこかの人工島の12カイリ内をかすめるようにして通るということなどでしょう。問題は、それに対する中国の反応が大変厳しいものになるであろうということです。中国側が報復として、例えば、尖閣諸島に海警の船舶や漁船が大挙押しかける位のことはあると、覚悟してかかる必要があるのではないかと思います。