【世界を読む】弾圧抗議で焼身自殺のチベット族に「勝手に死ね」…中国がダライ・ラマ14世の80歳誕生日で厳重警戒
2015.7.28 15:00
【世界を読む】弾圧抗議で焼身自殺のチベット族に「勝手に死ね」…中国がダライ・ラマ14世の80歳誕生日で厳重警戒
http://www.sankei.com/images/news/150728/wst1507280001-n1.jpg チベットの精神的指導者、ダライ・ラマ14世が7月6日、80歳の誕生日を迎えた。中国当局は禁足令を出すなどこの日に向けて警戒を強化したが、チベット族は各地で14世の傘寿を祝ったという。一方、弾圧に抗議して焼身自殺したチベット族が約140人に達する中、当局は「勝手に死ねば良い」と言い放つなど、人命軽視の共産主義体質をあからさまにしている。
誕生日祝福のメッセージ広めただけで逮捕
青海省の僧院では、「500人以上の僧侶が集い、3日間にわたって祈った」と、米政府系の自由アジア放送は報じている。7~9世紀、唐王朝を脅かす存在だった吐蕃王国最盛期のティソン・デツェン王ら、チベット族の英雄を称(たた)える寸劇を行うところもあった。
しかし、当局は手をこまねいていたわけではない。
チベット社会にもインターネットが定着してきているが、14世の誕生日を祝福するメッセージを広めただけで、チベット族の若者2人が逮捕されたという。「ネット監視の機器を乗せた車がたくさんパトロールしていた」「寺院に入れない上、携帯電話をいきなり没収された」などの証言も聞かれ、共産国家に「表現の自由」などないことを如実に物語っている。
反抗的な運動に不参加の寺院に3万~5万元援助、1800の寺院に共産党宣伝放送
そこで、金だ。共産党の指導を受け入れ、反抗的な運動に参加しなかった「優良寺院」に対しては、3万~5万元の援助を開始。一方で、デモなどに参加した僧がいる寺院では「愛国再教育」が行われている。だが、当局から金品を受け取った寺院はチベット族コミュニティーから爪(つま)弾きにされていると同放送は伝えた。
また、官製紙チベット・デイリーによると、「指導に従わないのは外国勢力の情報に染まっているからだ」と、共産国お決まりの論法を持ち出し、自治区内約1800カ所の全寺院に3年半かけてテレビを設置、共産党の宣伝放送を視聴させる手段にも乗り出したという。
毒殺? 服役中の高僧が謎の死
しかし、こうした“アメ”でなだめられるほど、チベット族は甘くない。このため当局は流血の武力弾圧こそ、最大の効果的手段とみている。
それを示す出来事が今年7月に起きた。2002年に四川省であった爆弾テロ事件に関与したとして服役する高僧、テンジン・デレク・リンポチェ師が同省の刑務所で謎の獄中死をしたことが判明。遺族や崇敬者らが死因の説明と、遺体の引き渡しを要求したのだが、当局は拒否した。
さらに、当局は同師を火葬にしてしまった。同団体は「死因を隠そうとしているのは明らかだ」と指摘。火葬の直前、遺体との面会を許された関係者は「師の唇や爪が真っ黒だった」と語り、毒殺を疑う声が広がっているという。
「焼身自殺したいやつは、勝手にすれば良い」
強まるばかりのこうした「暴力装置」の発動は氷山の一角にすぎない。抑圧に耐えかねて、あるいは世界に弾圧の現実をアピールする目的で、焼身自殺するチベット族の男女が続出し、2009年以来、140人以上が落命している。
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