政府は20日、韓国が東京電力福島第1原発の事故を理由に福島など8県の水産物輸入を全面禁止しているのは不当として、世界貿易機関(WTO)に提訴した。原発事故を巡る輸入規制で、日本政府が他国を提訴するのは初めて。
政府の規制撤廃要請に韓国側が応じなかったためで、政府は20日、WTOに紛争処理小委員会(パネル)の設置を要請した。8月31日にスイスのジュネーブで開かれるWTO紛争解決機関会合で審議され、9月中にもパネル設置が認められる見通し。最終的な結果が出るのは2016年以降になるとみられる。菅義偉官房長官は20日の記者会見で「WTOの結論を待つことなく、規制を早く撤廃すべきだ」と述べた。
韓国は11年3月の東日本大震災後の原発事故後、すぐに福島、宮城、茨城、岩手、青森、群馬、栃木、千葉の8県の水産物の一部の輸入を禁止。さらに13年9月、汚染水漏れを理由として全面禁止に拡大する異例の措置を続けてきた。日本は「基準値以上の放射性物質は検出されておらず、規制には科学的根拠がない」と主張。規制撤廃を求めてきた。
韓国側に応じる気配がなかったため、今年5月にWTOの紛争処理手続きに基づく2国間協議を要請。6月にジュネーブで2日間にわたり協議を開いたが、主張の隔たりは大きく溝は埋まらなかった。その後も歩み寄りが見られなかったことから、今回の措置に踏み切った。パネルで日本の主張の正当性を訴えていくと同時に、引き続き、韓国側に禁輸の撤廃を改めて求めていく。【松倉佑輔】
台湾:日本食品の輸入規制に軟化姿勢
馬氏は18日の記者会見で、規制強化の一因となった偽装表示問題について「科学の問題ではなく、法律の問題だ」と正当性を強調。一方で「双方の調査機関が協力して偽装の原因を究明し、再発防止策を講じたら規制を解除したい。規制は短期的な措置にすぎない」と述べた。馬氏は、今年2月初旬に食品輸入禁止の対象5県のうち、福島を除く4県の規制緩和を検討したが、偽装表示の発覚によって頓挫したことも明らかにした。