超党派の政策諮問機関が明らかに
2015年度の年次報告書は、「この1年間の中国に関する安全保障・外交政策」という章のなかの「中国の東シナ海での海洋紛争」という項目において尖閣諸島をめぐる動きをとりあげた。そのなかでこの1年の総括として、「東シナ海では、南シナ海におけるような国際的注視を集める出来事こそなかったが、中国は東シナ海の尖閣諸島をめぐる海洋紛争において、静かなうちにも非軍事、軍事の両面で日本に対する態勢を強化し続けしている」と述べた。つまり、中国が日本に対する立場をこれまでよりも強くしていると指摘している。
軍事作戦に備える中国空軍
・2015年7月に日本政府が発表したように、中国は東シナ海の日中中間線の中国側水域で、ガス田開発のための海上建造物16基を新たに構築した。建造物は中国側の水域に造られたとはいえ、資源開発に関する日中合意に違反している。中国側はその建造物に軍事用のレーダーやヘリコプター、無人機の発信基地などを設置することが可能である。
・2015年1月に国際軍事情報誌「IHSジェーンズ」が公表した映像が示すように、最近、中国は浙江省温州市沖の南麂(ジ)島の軍事基地を強化した。従来のレーダー、通信施設を増強し、ヘリコプターや小型航空機発着の拠点を拡大している。この島は尖閣から260キロほどの距離にあり、沖縄本島から尖閣までよりも100キロも近い。中国側の軍事専門家も、同島が東シナ海、特に尖閣周辺での軍事行動の主要拠点だと認めている。
・2015年7月に日本の防衛省が発表したように、中国軍の航空機の尖閣諸島空域への異常接近により、日本側は2014年1月から2015年6月までの間に合計706回のスクランブル(緊急発進)を実施した。毎日1回以上のスクランブルというのは極めて異様な事態である。また日本政府は、中国の海警などの公的艦艇が尖閣諸島の日本領海に毎月平均7~9回侵入していると発表した。
・2015年5月には、中国人民解放軍空軍の爆撃機を含む飛行大隊が日本の宮古海峡を初めて越えて、東シナ海から西太平洋へ飛行した。この飛行は、中国沿岸を遠く離れた東シナ海の海洋上空で、中国空軍が作戦遂行能力を高めつつある実態を明らかにした。尖閣諸島をめぐって予期される軍事作戦に備えて、中国側が航空戦闘能力を強化していることの例証だともいえる。