琉球新報・沖縄タイムスを糺す県民・国民の会 mag2
より転載「メルマガ第36号」12月7日
辺野古移設をめぐる翁長知事と国との対決は、ついに法廷の場に持ち込まれました。
既にご承知の通り、国が原告となって県を訴えた「代執行訴訟」のことです。
代執行訴訟を報じる沖縄2紙を見る限り、翁長知事が「オール沖縄」の民意を背に、巨大な国家権力を相手に善戦しているような印象です。
ですが、裁判が法律の戦いであるという厳然たる事実から判断すると、国側の「秒殺」による圧勝とも言われています。
代執行訴訟を報じる沖縄2紙の報道こそが、「正す会」が批判する捏造新聞そのものなのです。
しかし、敗訴を誰より一番承知しているのは翁長知事自身です。
そもそも辺野古移設の原点は、日米合意に基づく普天間飛行場の危険性の除去だったはずです。
ところが翁長知事は辺野古移設の原点を沖縄の歴史に遡ると言うのです。
翁長知事が冒頭陳述で法律論には一言も触れず、沖縄の歴史や民主主義などに言及したのは、敗訴を覚悟で、時間延ばしを目論んだ何よりに証拠です。
これまでいわゆる「県民感情」というある種の魔物に気を使ってきた国側が、現在審議中の国地方係争委員会の結論を待たずに、あえて「県民感情」を無視してまで原告となったことは、県側にとって想定外でした。
それにもう一つ県側にとって大きな想定外がありました。それは国が最高裁判例を持ち出してきたことです。
当初の争点は、前知事による埋め立て承認を、翁長知事が取り消した処分の適法性でした。
つまり翁長知事の私的諮問機関に過ぎない第三者委員会が7月に出した「法的瑕疵あり」という結論の適法性でした。
ところが国側は「法的瑕疵の有無」を議論する前に、翁長知事には「公益性」の大小から判断して、翁長知事には取り消しする資格がない、として門前払いをする作戦に出たのです。
翁長知事は承認取り消し理由として、「移設の根拠が乏しい」と主張していますが、国側はこれに対し、知事には基地の移設といった国の存亡にかかわる安全保障上の問題を判断する権限はない、と主張しました。
言うまでもないことですが、法廷は法律で論争する場であり、安全保障政策をめぐる政治闘争の場ではありません。
翁長知事は冒頭の意見陳述で、「日本に地方自治や民主主義は存在するのか」と語りましたが、外交・安全保障を担うのは、国民の選挙で構成される国会が指名した首相をトップとする内閣であると、日本国憲法にも謳われています。
一介の地方自治体の長に過ぎない翁長知事に、安全保障事案を覆す権限はそもそもありません。
辺野古移設を、地方自治や民主主義を損なう問題として論じること自体、おかしなことです。
翁長知事の取り消しを許せば、沖縄を含む日本の安全保障と民主主義の土台が揺らいでしまうからです。
知事の冒頭陳述で、さらに見過ごせないのは、「県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた」と、「国連演説」に続いて再び自己決定権という言葉を持ち出したことです。
国は、昭和47年の沖縄の本土復帰以来、安全保障の確保と基地負担の軽減、県民生活の向上を図ってきました。
国の施策が十分であるかどうかの評価はさておき、翁長知事が法廷の場で「自由、平等、人権」と結びつけるのは、政治的対立感情を煽ろうとするものでしかありません。
日本国憲法は独立国を意味する「自己決定権」のような権限を沖縄に与えていません。
訴状にも有りますが、政府は、日米合意に基づく辺野古移設を進めることが、沖縄を含む日本の公益と考えています。それができなければ、日米関係は悪化し、住宅密集地に隣接する普天間の危険性除去も実現できないからです。
翁長知事ら辺野古反対派のアキレス腱は米軍の抑止力と中国の脅威だといわれています。
ところが国側は、辺野古移設は日米同盟の抑止力を高めると認識しており、中国が狙う尖閣諸島や南シナ海の問題、北朝鮮の脅威も存在するなかで、移設の成否は県民や国民の安全にかかわる重大問題であるとの認識です。
翁長知事が法廷を法律論争の場ではなく、歴史論争の場と勘違いした発言があります。
翁長知事は陳述で、琉球王国の時代からの歴史をひもとき、沖縄戦後に強制的に土地が奪われて米軍基地が建設された経緯を説明し、さらに「問われているのは、埋め立ての承認取り消しの是非だけではない」「日本に地方自治や民主主義は存在するのか。沖縄県にのみ負担を強いる日米安保体制は正常と言えるのか。国民すべてに問いかけたい」と訴えました。
法律論争の場に歴史論や政策論を持ち込んで、裁判を長引かせる魂胆が見え見えの冒頭陳述です。
「問われているのは、埋め立ての承認取り消しの是非だけではない」という知事のフレーズに敗訴の予感を感じ取るのは私だけではないでしょう。
翁長知事の引き伸ばし作戦を百も承知の国側は、法務省の定塚誠訟務局長が出席し、「澄み切った法律論を議論すべきで、沖縄の基地のありようを議論すべきではない」などと主張しました。
裁判官も翁長知事の引き伸ばし戦術を読み切ったかのように、第二回、第三回の口頭弁論を1月中に立て続けに行うように決めました。
この裁判は提訴以前から県側に勝訴の可能性は極めて少ないといわれており、裁判長も翁長知事の長演説による政治パフォーマンスには付き合っておれないと判断し、結論を急いでいるように思えます。
来年1月8日、29日に開かれる予定の口頭弁論で、県側の証人尋問を行うかどうかなどを決める見通しです。
しかし、安全保障の専門家として承認申請している我部政明琉球大学教授や屋良朝博氏のような風船テロリストに安全保障を語る資格など有りません。
仮に彼ら風船テロリストが証言台に立つとしたら、これはブラックジョーク以外の何物でもありません。
裁判長は、彼ら風船テロリストに法廷侮辱罪を発動すべきですが、その前に、証人申請を却下することを望みます。