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ビットコイン人気再燃、中国が切った思わぬ対抗策

日本は引き込まれないようにご注意!

ビットコイン人気再燃、中国が切った思わぬ対抗策

2016/2/16 6:30
日本経済新聞 電子版

 デジタル通貨「ビットコイン」と言えば、日本では経営者の逮捕に至った取引所「マウントゴックス」の経営破綻を思い出すひとが多いはず。ネガティブな印象は拭えないかもしれない。中国でも2013年に大ブームを巻き起こしたが、規制強化を機に急落し、数多くの投資家に打撃を与えた。ここにきて人気が再燃しており、当局の出方に注目が集まる。果たして歴史は繰り返すか。

■昨年後半に急騰、売買も大幅増

 中国の有力ビットコイン取引所BTCCのデータによると、長らく1000~2000元(約1万7800~3万5600円)のレンジで貼り付いていたビットコインの対人民元相場は、昨年10月から急伸。11月初めには1ビットコイン=3000元台と、8月安値から2.6倍となる場面もあった。その後も2500元を挟んだ高値圏での推移が続く。昨年10月を境に売買高も目立って増えた。

 世界のビットコイン取引の7割を占めるとされるのが対人民元の取引だ。世界市場の中心と言える中国で普及が始まったのは2013年のこと。7月時点でまだ1ビットコイン=500元台だったが、低迷続きの上海株などにしびれを切らした投機マネーが堰(せき)を切ったようになだれ込み、同年11月には7600元近くまで急騰した。

 連日ニュースで扱われるような社会現象になると、通貨管理に穴が開くのを恐れた当局が規制強化に乗り出した。中国人民銀行中央銀行)などは13年末に規制強化をたたみかけ、12月にはわずか1日で半値となるなど、大荒れに。その後はずるずると下げが続き、ブームはあえなくついえた。

■今回は投機目的でなく…

 それが足元で復活を遂げた。BTCCのボビー・リー最高経営責任者(CEO)は専門メディアに「全投資資産のなかで最も投資熱が高まっており、売買はもっと盛り上がるはず」と語る。投資の動機は今回は何か。ビットコイン投資のヘッジファンド関係者は、投機目的よりむしろ「下落が続く人民元が中国の投資家をビットコインに駆り立てている」と説明する。

 景気減速と並ぶ中国経済の頭痛のタネは資本流出だ。景気には一向に反転の兆しがみえない。人民銀の必死の買い支えにもかかわらず、人民元には下値不安がつきまとう。特に昨年8月の唐突な元切り下げ以降、マネーはあの手この手で中国からの脱出を急ぐようになった。
 最近では中国企業が貿易取引を偽装して資金を海外に逃がす手法が浮かび上がった。個人レベルでも香港などで人民元を外貨に替え、保険商品に投資するケースなどが続出している。
 降って湧いたビットコイン人気の復活も「人民元に見切りを付ける動きの一環」との説明は説得力がある。1度目のブームは「投機」だったが、今回の2度目は「逃避」といえよう。

 もちろん当局も資本流出には神経をとがらせている。英系有力商業銀行のHSBCは今年1月、中国人による米不動産投資へのローン提供を絞り込んだ。中国のカード決済サービス最大手、中国銀聯も「銀聯カード」を利用した海外での保険商品購入の規制を強化した。いずれも当局の意をくんだ措置との見方が有力だ。

■当局が用意した思わぬシナリオ
 13年の第1次ビットコインブームでは、当局が手綱を思い切り締め、投資家にとっては悲劇で終わった。そして今回の第2次ブーム。政府が野放図なブームを容認するはずはないが、一方で投資家も賢くなっている。マルクスに倣えば、喜劇となる展開もあり得た。
 だが、当局が用意したのは思わぬシナリオだった。

 今年1月、人民銀は「デジタル通貨の発行を早急に検討する」と発表ビットコイン人気が崩壊した翌年の14年から研究チームを設立し、米シティグループと国際会計事務所デロイトの協力も得て、デジタル通貨導入の可否を検討していたという。「デジタル通貨を発行すると従来よりも通貨の流通コストが低下し、決済の透明性や利便性が高まり、資金洗浄や脱税などの犯罪抑制につながる」と導入意義を強調した。

 香港・交銀国際の中国担当チーフ・ストラテジスト、ホン・ハオ氏は香港紙に「デジタル通貨を導入すれば資本の流れが把握しやすくなる」と解説した。ビットコインを使った資本流出の抜け道を、当局が管理する新たなデジタル通貨でふさぐ。いわば「毒をもって毒を制す」発想と言える。

 人民銀の発表を受け、関連メディアには「中国政府がビットコインつぶしについに本腰を入れ始めた」など、悲鳴にも似た声が飛び交った。中国のビットコイン採掘関連業者の「ビットコインの共存を許すか、つぶすかは人民銀次第」との声も伝わってくる。

 ただ、発表を機に下げたビットコイン相場はその後、底堅く推移しており、いまのところ投資家心理に与えたダメージは限定的と言える。政府によるデジタル通貨の運営はすでにエクアドルで例があるが、経済規模がケタ違いに大きい中国での導入となると、話が違ってくるのも事実。官製デジタル通貨とビットコインの攻防の行方は予断を許さず、ひょっとするとまた大どんでん返しがあるかもしれない。(NQN香港=大谷篤)