パルデンの会

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トランプの対中強硬論の中味とは?   公正な自由貿易は米国に裨益するとして保護貿易には反対している


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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)3月16日(水曜日)
           通算第4851号
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 トランプの対中強硬論の中味とは?
  公正な自由貿易は米国に裨益するとして保護貿易には反対している


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 2000年、
クリントン政権の後期に米国は中国のWTO加盟を認めた。
 「農業から通信機器、
自動車から航空機までアメリカの製品は中国市場へのアクセスが増えるため、この取引(WTOへの加盟認定)は米国に裨益する、クリントン大統領は言ったが、実際には中国との貿易アクセスの影響で、米国は50万の工場を閉じた。クリントンの言ったことはすべて嘘だった」。

 ト上記の発言はドナルド・
トランプの中国に関する激越な演説の一部である。
トランプは中国に対して以下のように続ける。
 「
中国との通商の失敗が代表するようにワシントンの政治家がやったことは米国経済の失敗に繋がった。中国との交渉で必要なのはタフな交渉力とリーダーシップである。ウォール街の権益のみならずアメリカの労働者、製造者の利益を護るために力強い交渉を中国とやり直すべきである」。

 以上は抽象論とはいえ、わかりやすい。
単純に中国を仮想敵として置き換えることによって労働者、一般納税者へ訴えるパワーがある。

 そしてトランプの自由貿易論とはこうである。
 「われわれは保護主義ブロック経済を目指してはいない。
しかし、ずるずると米国の工業力の衰退に手をこまねいてみているわけにはいかない。偉大なアメリカの再建が重要であり、自由貿易の前に、公平さが必要だ。公平な自由貿易とは、中国も米国と同じようなレベルの門戸開放に移行するべきで、そうすればアメリカの労働、製造業はオフショア(国外や自由貿易特区)に移動せずとも、自国内で生産、労働に従事できる。それこそが米国の国益というものだろう」。

 ドナルド・トランプが言っていることは、まことに正論であり、
なぜこの演説がウォール街共和党主流派や貿易自由主義すなわちグローバリズムの信奉者に嫌われるのか、よく分からない。
 いや、逆に反グローバリスム、
反自由義経済論の持ち主であるということが、よく分かる。

 「トランプ政権発足の暁には」
としてトランプは未来の政策を語る。
 「第一に『中国を為替操作国』として認定し、
第二に知的財産権を楯に中国からの不正行為を防ぎ、不公平な取引慣行を止めさせるためにタフは交渉を開始する。米国の技術を護り、正当な競争によって中国市場へのアクセスを拡げる。第三に中国に不正な輸出補助金を撤廃させ、大気汚染の弊害を取り除かせ、アメリカ人の雇用を拡大する。
 第四はアジア太平洋地域において米軍のプリゼンスを高め、
米国企業に対しては法人税減税をなし、赤字国債を解決して中国の金融脅迫を駆逐し、なんとしても国内の経済を活性化させる」。

 かなり具体論に踏み込んでいるが、
実現性があるかないかは別として、とくに目新しい政策はない。

 しかしながら次の現状認識は間違っていると言わざるを得ない。
 すなわちトランプは「中国は明らかに金融力を駆使して、
米国の赤字国債を補う国債を大量に保有し、これで米国に脅しをかけたためオバマ政権は中国を『為替操作国と認定することをためらった。米国のエコノミストの多くは人民元が、対ドルレートで、15-40%過小評価されているとみている。だから米国の輸出競争力が削がれ、国内に失業が増大したのだ」

 こうしたトランプの経済理論、
とりわけ貿易不均衡理論はじつは成り立たない。かつて日米貿易摩擦の折も、日本円を人為的に高くする圧力を掛け「非関税障壁などと難癖をつけて日本から大幅な譲歩を引き出した。しかし、そうやっても結局、アメリカ製品は競争力がなかった。すべては米国の国内問題なのである。

 ついでこういう。
 「米国から知的財産権を不当に入手した結果、
中国はアメリカに3000億ドルの損害を与えた。ハッカーによる攻撃も今後は見逃しはしない」
 金額はともかく、
この主張はアメリカ人ビジネスマンには受け入れられやすい。

 「不法な輸出補助金を止めさせ、
不公平な貿易習慣に米国は適切な対応をとらなければならない」中国はWTOのルールを無視して、不公平な貿易を世界中で展開しているため報復関税などの措置をとるべきだ」

 したがってトランプは雇用を重視し、
TPPに反対の立場を鮮明にしている。オバマ政権の推進するTPPは連邦議会の承認を得られそうにない雲行きである。

 日本政府ならびに日本の言論界は、トランプが「
日米安保条約は片務的であり、日本の防衛負担増をもとめる。日本が危ないときに米国が助けるが、米国が危殆に瀕しても日本は米国を助けないという条約は不公平きわまりなく、日本に防衛させるべきだ」という主張に恐れをなし、危機感を強めている。またTPPに反対していることを危惧し、日本はなぜかクリントン政権の誕生に期待している。

つまり「ぬるま湯」がもっと続けば、
急激な改革よりはマシと考える官僚主義役人根性が丸出しである。

 しかしトランプは南シナ海の中国の軍事力拡大に苛立ち、
極東ならびに南シナ海での米軍のプレゼンスを明確に拡充せよと言っているのであり、オバマのように優柔不断、南シナ海に於ける中国軍の横暴には断固として対抗措置を講じると宣言しているのである。

 このあたりのことを日本のメデイアは詳しく伝えていないのではな
いのか。