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南海トラフ海底観測 「東海」南西側ひずみ蓄積 地震想定見直しも


南海トラフ海底観測 「東海」南西側ひずみ蓄積 地震想定見直しも

産経新聞 5月24日(火)7時55分配信



 南海トラフで起きる地震の想定震源域に蓄積しているひずみの詳細な分布が、海上保安庁の海底観測で初めて明らかになった。英科学誌ネイチャー電子版に24日、論文が掲載された。東海地震の想定震源域の南西側などでひずみが大きく、気象庁判定会の平田直会長は東海地震の想定見直しが必要との見解を示した。次の南海トラフ地震の発生場所などの予測に役立つ可能性があり、防災への活用が期待される。

 南海トラフではフィリピン海プレート(岩板)が陸側プレートの下に沈み込んでおり、両プレートの境界にマグニチュード(M)8~9級の地震を起こすひずみがたまる。蓄積状況は陸上の観測で推定していたため、はっきりしなかった。

 政府の地震調査委員会は平成25年、次の南海トラフ地震は東海地方から九州・日向灘までの震源域全体のどこで発生するか不明とした。今回の観測結果は、発生場所の絞り込みが期待される重要な成果といえる。

 海保は南海トラフ地震震源域の海底に観測装置を設置し、衛星利用測位システム(GPS)などで地殻変動を観測。18年度から10年間のデータを解析した結果、東海地震の想定震源域がある静岡県沖のほか愛知・三重県沖、四国沖から日向灘でひずみが大きいことを突き止めた。

 ひずみが大きい場所はM8級の昭和東南海・南海地震震源域の外側に延びている。これらの地震でひずみが解放されず、長期にわたり蓄積しているとみられ、海保は次の地震が起きやすい場所とみている。

 高知県沖ではトラフ沿いでもひずみが大きく、津波が巨大化する恐れがあることも分かった。

 東海地震について気象庁は、静岡県沖の震源域とM8程度の規模を想定してきたが、今回の結果は震源域がさらに南西に延びる可能性を示している。

 東海地震の予知を目指す気象庁判定会の平田直会長(東大地震研究所教授)は「次の東海地震は現在の想定より大きくなる可能性がある。解析結果を検証した後、想定の見直しが必要と考えられる」と指摘した。

 ■広域推定 予測研究の突破口

 南海トラフに潜むひずみを明らかにした今回の結果は、国家的な課題である大地震の予測と対策を進める上で画期的な成果といえる。プレート境界のひずみを広域に推定したのは世界初で、東海地震の想定見直しを迫るものともなった。

 国は想定外の巨大地震が起きた東日本大震災の教訓を踏まえ、次に起きる南海トラフ地震の推定は困難とし、その具体的な規模や場所の評価を見送ってきた。今回の知見はさらに検証が必要とはいえ、閉塞(へいそく)状態に陥った予測研究に突破口を開く可能性がある。

 南海トラフでひずみの蓄積が限界に達すると陸側が跳ね上がり、地震が発生する。予測にはひずみの蓄積量が重要だが、従来は陸での観測を頼りに精度の低い推定しかできなかった。

 東海地震を監視する気象庁判定会の平田直会長は「(ひずみを示す)プレート境界の固着は広く一様と考えられてきたが、東海地震の想定震源域の南西側など強いところがある」と今回の意義を指摘。想定震源域を南西側に拡張すべきかどうか「早期に検討を始めた方がよい」と話した。

 今回の結果は100~200年程度とされる南海トラフ地震の発生間隔に比べ、ごく短期間での推定にすぎない。しかし東大地震研究所の古村孝志教授は「ひずみの蓄積ペースの変化を詳しく観測できれば、地震が近づいていることが分かり、数カ月から数年前に発生を警戒できるようになる可能性が高い」と期待する。

 今後の課題はひずみのデータを予測に生かす具体的な手法の確立と観測体制の強化だ。ひずみが大きいことが分かった東海地震の想定震源域の南西側や四国沖などは観測が不十分で、地震津波の常時観測網を早急に整備して継続的に監視していく必要がある。