パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

【寄稿】不可解な政治家になったスー・チー氏


果たして日本の人権問題支援家や   マスコミの風見鶏の人々は        どう言うのか?
英国のEU脱退を見て 国家と民族はまだ民主主義が発展しても解決できない。


【寄稿】不可解な政治家になったスー・チー

ビルマノーベル平和賞受賞者はなぜロヒンギャを助けないのか

 国連の特使がビルマを訪問するのに先立ち、同国の政府関係者は6月、国内の少数民族であるイスラム教徒を「ラカイン州に住むイスラム教を信じている人々」と呼ぶよう指図した。これはこの国の仏教徒ナショナリストに対して、政府が引き続き少数民族ロヒンギャを弾圧し続けることを示す悲劇的なキャンペーンの新たな一幕だ――その弾圧は彼らの名前や市民権さえ否定する段階にまで達している。
 悲しいことに、このキャンペーンはノーベル平和賞を受賞したアウンサン・スー・チー氏が率いている。
 軍事政権に反対する抗議活動、自宅軟禁、想像を絶する自己犠牲の数十年間を経て、スー・チー氏はついに民主主義を祖国にもたらす立場に上り詰めた。スー・チー氏の国民民主連盟(NLD)は2015年11月の総選挙で勝利し、この春には外相に加え、事実上の首相である国家顧問という地位に就いた。この新たな肩書きはビルマを運営する実際上の権限をスー・チー氏に与える。
 私は自分と同じノーベル平和賞を受賞した女性――20年余りの間、繰り返し自宅軟禁された女性――はとても責任感の強い人だと確信している。だが、スー・チー氏の人権が踏みにじられていた長い年月の間ずっと彼女のために声を上げてきた私たちは彼女がビルマにいる100万人余りのロヒンギャの人権を同じように尊重しないことに深く傷ついている。彼女のために声を上げてきた人々の中にはチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世南アフリカデズモンド・ツツ大主教も含まれる。
 世界中の大勢の人権擁護活動家と同様に、私たちもビルマに対して、収監されている政治犯少数民族――カレン、シャン、チンの各民族を含む――の人権を尊重するよう訴えてきた。国際的な人権擁護団体はビルマの草の根レベルの勇気ある組織と協力し、同国の軍と国家が宗教的な迫害や殺害、レイプ、失踪、拷問など人道に対する犯罪を通して、いかにこうした少数民族を抑圧してきたかに関する記録をまとめた。
 ラカイン州ロヒンギャは2012年に反乱を起こし、仏教徒と衝突。この騒動で少なくとも100人のロヒンギャが殺害された後、私たちはビルマイスラム教徒に手を差し伸べるよう公に発言してきた。
 ビルマ政府のロヒンギャに対する扱いについて警鐘を鳴らすことが、イスラム教徒の女性である私に課せられた特別の責任であると感じている。ビルマは長い間、ロヒンギャを民族として認知することを拒否し、市民であれば得られるはずの教育へのアクセスや自由な移動といった基本的な権利も認めてこなかった。2012年の反乱後、14万人のロヒンギャが強制的に難民キャンプに収容されだ。現在もその多くが強制収容所同然の環境で暮らしている。ラカイン州を出るために、定員オーバーの船に乗り込み、命をかけて危険な海の旅に出た人々も数万人に達している。
 ビルマ国民の多数を占める仏教徒は――経験豊富な民主活動家の多くでさえも――彼らの民主主義を求める活動とロヒンギャの非人道的な扱いに何ら矛盾を感じていないようだ。そしてその中にはスー・チー氏も含まれている。
 1962年に独裁的な軍事政権によって付けられた国名である「ミャンマー」という名前に、私を含む彼女の支持者がこれほど長い間反抗してきたことを考えると、これはとんでもない皮肉だ。私たちはスー・チー氏とその追随者たちが自分たちをビルマ人と呼び、祖国をビルマと呼んでいることを尊重していた。
 スー・チー氏は今、ロヒンギャに対してどうして背を向けることができるのだろうか。
 私は人々の自由を擁護する活動に生涯をかけ、多くの犠牲を払ってきた。そこにはイランの宗教的少数派であるバハイ教徒の権利も含まれる。2009年以降、私はイラン国外で暮らすことを強いられてきた。家を失っただけでなく、結婚も友人たちも失った。それでも私には、他の生き方はないと強く信じている。最近まで、スー・チー氏と私は同じ信念を分かち合っていると思っていた。
 NLDは5月に、スー・チー氏がラカイン州の平和と発展を促進する委員会のトップに就任すると発表した。発表によると、この委員会は国連機関や国際NGO団体による同州での活動を「調整」することになるという。
 これでは人権危機への対応というより、政府当局による地域管理を一層強化するための取り組みのように見えてしまうが、そうでないことを願おう。ノーベル平和賞を受賞した妹分のスー・チー氏がロヒンギャを非人間的に扱おうとする内部の圧力を勇敢にも無視し、代わりに彼らの権利のために立ち上がるのであれば、私は真っ先にそれを称賛したい。

(寄稿者のシリン・エバディ氏はイランの人権活動家。ノーベル・ウィメンズ・イニシアチブの共同創設者で2003年にノーベル平和賞を受賞した。新著に「Until We Are Free: My Fight for Human Rights in Iran」がある)