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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)7月22日(金曜日)弐
通算第4971号
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中国のギリシア、ピレウス港買収は土壇場で雲行きが怪しくなった チプラス首相は五日間訪中し歓待され、国家財産管理ファンドが反対
**********************ギリシアは債務返済のため、国家財産の叩き売りを始めた。
その切り売り財産の目玉がピレウス港で、欧州へのゲートウエイ、習近平のすすめる一帯一路(シルクロード)の欧州玄関口である。
ピレウスは自然条件の豊かな、入江から港湾に入る深海にも恵まれ、ここはエーゲ海クルーズの拠点でもある。
ピレウス港の貨物取扱い量は全欧で第八位。年間336万TEU(20フィート・コンテナ一個がITEU).すでに一つの波頭は、中国企業が買収し、管理してきた。
中国が管理運営するようになる7年前までピレウス港のコンテナ扱い量は難関16万弱TEUだった。
また「スカラマンガス造船所」の買収にも中国は動いていることが分かった。嘗てオナシスが「世界の海運王」といわれたが、いまや世界の海運は香港や中国に移った観がある。「海運の王者」といわれたギリシアの衰退を象徴する出来事である。
中国海運(COSCO)が管理運営会社の株式の殆どを取得し、チプラス政権の支持母体であるギリシアの左派がむしろ「国家安全保障の繋がる戦略的要衝を中国に売り渡すとは何事か」と反対論が渦巻いた。野党(保守党)も反対の裂に加わっている。
チプラス首相は七月初旬に訪中し、各地で大歓待を受けた。
帰国後にまっていたのは国家財産管理ファンドが、諸条件、契約内容を検討した結果、「この案件はもっと慎重な審議を要する」として、いきなり暗礁に乗り上げた。
しかしひるまない中国は「トレイノゼ」(TRAINOSE)というギリシアの鉄道企業の買収にも動いている。
この鉄道を買収すれば、スエズ運河を越えてピレウスに陸揚げされる貨物が鉄道ルートを通ってバルカン半島を縦断し、欧州の心臓部へ中国製品を運搬することになり、一帯一路構想いの実現への第一歩となるのである。
またピレウス港に代替できる港湾の候補地として、中国はトルコ国境に近いクンポートにも触手を延ばしている。
雇用を増やし、財政を立て直すには外国からの投資が絶対に必要であるギリシアだが、たとえばトルコが鉱山買収の動くと、反対論が渦巻いたように、資源ナショナリズムが、カネや雇用より重要という主張に傾く。
国益からみれば、当然だろうが、EUの掟に反する。
日本でも水源地を買い進める中国企業の影があり、また名古屋、新潟では枢要な地区を領事館が買収しようとしたが、住民運動の反対で、名古屋は挫折、新潟も買い取り話は宙に浮き、現地へ見に行ったが、更地のままである。
いずれにせよ、野党系の反対、国家財産管理ファンドの堅調のやり直しと中国の欧州進出は予期しなかった暗礁に乗り上げた。
○○○み○▽○や○□▽ざ○○○き○□▽
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