2016-11-10 勝谷誠彦氏が読み解く トランプ事件の 日本マスコミの実体 フリー ジャパン #神奈川県 有料ブログ 勝谷誠彦の××な日々 より転載 2016年11月10日号。<トランプを引いた。出て来るのはハートのエースか、ジョーカーか>。 3時起床。 『週刊文春』の記者の時に花田紀凱師匠に煽られて書いた記事によく「本誌既報通り」という文章があった。大マスコミと同じでは週刊誌らしくないので、ちょこっと「穴馬」を流しておく。それがたまたま当たってしまうと「本誌既報通り」なのだ。恥ずかしいというほかはないが、まあ、それが週刊誌というものだ。 で、今日は久しぶりに使う。「本日記既報通り」ドナルド・トランプさんが勝った(爆笑)。もちろん本命だとは書いていなかった。けれども、ほんどにこの国のメディアが外道扱いしている中で「面白い」と評してきたのは私ではなかったかという思いはある。アメリカという国の怖さである。衆愚の怖さである。大統領制の怖さである。フィリピンでロドリゴ・ドゥテルテさんが大統領になった時に「あるいは」と感じた。 大衆は候補者に関する情報をほとんどメディアから受ける。メディアを支配できるのはずっと「実力者」だった。フィリピンの「黄色い革命」などは口コミで起きた、例外中の例外なのだ。ところがウェブがここまで普及すると「弱者」も情報の拡散をすることができる。このあたりで潮目がかわった。 敢えて書く。「新聞など買えなかった」もっと言うと「文字を読めなかった」膨大な票田が発掘されたのである。ウェブ上の動画を見ればだいたいのことはわかる。文字がたとえ読めなくても。ということはマイノリティーや低学歴者に、これまで読めなかった票が眠っている。エリートの記者にはそれがわからない。まさかの超エリート、元大統領夫人が負けて、成り上がり土建屋のトランプさんが勝つというのはそういうことだ。やや、私にはそれが見えていた。自信はなかった。一回でそれが起きるとは。やはりマウスイヤーの時代なのだ。 日本国の大マスコミにとってはまったくの「想定外」だったのだろう。とにかく朝から笑ったのは、トランプさんが勝ったことよりも、大マスコミの狼狽ぶりだった。実際、NHKも朝日新聞も、大惨事が起きたかのような報道で、キャスターも地元のリポーターも眉間に皺を寄せている。トランプさんに関する情報があまりに薄い。「予定稿」はおそらくもうクリントンさんで書いていたのだろう。相変わらず「実業家で」「億万長者で」といった紹介しかない。あとは愚にもつかぬ「この州では勝てるはずだった」といった分析ばかりだ。 繰り返すが、州境などもはやあまり意味をもたないのである。ウェブはかるがるとそれを超えていて、確かにその州の選挙人というものはあるが、情報は外から入って来る。これまでもっとも影響力を持っていたのはどこか。教会だ。週にいちど集まる教会でのやりとりが大切だった。それがウェブによって消えた。ひとびとは自分で情報をとりにいくようになった。 こういう分析を書いている大マスコミありますか?やや自慢だが私しかいないだろう。聞きに来ればいいのに。私はかの国の友人たちとやりとりしながら、こういう結論に達している。今朝見る限り、同じようなことを言っている「知識人」はいない。大マスコミは私のことが大嫌いだから仕方がないとしても、週刊誌くらいはなあ。トランプ勝利は、メディア革命の結果なのだ。近現代史は往々にしてこうして動いていく。 朝日新聞の狼狽ぶりはすさまじい。いちおう公平中立をモットーとする「日本でもっとも良識的な新聞」がこの見出しはないでしょう。 <「悪夢なら覚めて」「ビジネス経験期待」/在日米国人ら> http://digital.asahi.com/articles/ASJC95G17JC9UTIL02V.html?iref=comtop_photo <「悪夢なら覚めて」。テレビでトランプ氏の勝利宣言が流れると、東京・六本木のレストランでテレビの開票速報を見ていた民主党支持者らは机をたたき、手で顔を覆って涙を流した。> <娘のケイティさん(17)は「米国人がこんな馬鹿な選択をするとは」と言葉を詰まらせた。日米両国の国籍を持つが、将来、日本国籍を選ぼうと思っている。「今の米国は怖い。トランプ氏が大統領になったらなおさら」。来秋、米国でなくカナダの大学に進学する予定だ。 米テンプル大学日本校(港区)でも、トランプ氏当選確実の速報に頭を抱え、涙ぐむ学生の姿が見られた。約1千人の学生の7割が外国人。米国籍で移民を両親に持つ学生も少なくない。> ひとの国の指導者が選ばれた時に<悪夢なら覚めて>はないでしょう。イランや北朝鮮の悪魔がまたトップにたった時に、朝日はこんなこと書いたかね。いやしくも同盟国の大統領が選ばれた時にこう言うというのは、もっと他のメディアは批判していい。<悪夢なら覚めて>は朝日のセリフなのだ。おそらくワシントンではクリントン陣営に深く食い込んでいたに違いない。これから情報がとれなくどころか、トランプ陣営からは蹴りだされる。仕事にならない。<悪夢なら覚めて>である。 <内向く米国/世界のリスク>は1面。3面には驚いたねえ。<世界秩序/どこへ>。まるでこの世の終わりである。どこにもいかねえよ。国際関係はバランスで成り立っているのだから。万が一、トランプさんが相当ヘンな人だったとしても、世界一優秀なスタッフが周囲にいる。日本国でさえ低能総理の時でも、なんとか官僚がやってきたでしょう。ましてやアメリカ、である。そんなことをいちばん知っているのが朝日であって、おたくだって名前も知らないアホのトップが続いてもなんとか会社をやっているじゃない。 ここのところ、やや朝日に引っ張られすぎている気はするが、あまりにアタマがおかしいので書いておく。いや、三文とはいえコラムニストとしては「日本を代表するコラム」のこの始末にはちょっと黙っていられないのである。今朝の『天声人語』だ。 <米大統領にトランプ氏> http://digital.asahi.com/articles/DA3S12651050.html <暴言満載のショーのような選挙が終わった。「トランプ大統領」と口にしても、どうもしっくりこない。コメディー映画でもないし、一日警察署長のようなイベントでもない。「アメリカを一つに」との勝利宣言を信用していいのだろうか> いや、ひとの国のトップをいやしくも民主的に選んだことに対して「日本を代表するクオリティペーパー」の「日本を代表するコラム」が、こんな下品な批判をするか?朝から呆然となった。恥ずかしい。<「トランプ大統領」と口にしても、どうもしっくりこない>って、それはあんたのただの感情だろう。三文ながら同じコラムニストとしては、ここは「しかし、かの国の人々が選んだことである」と書くだろう。その前提から、批判なら批判をはじめるべきだ。オチにいたっては椅子から転げ落ちそうになった。 <実業家時代のトランプ氏は、宣伝の仕上げには「はったり」が欠かせないと自伝で書いている。「私はこれを真実の誇張と呼ぶ。これは罪のないホラであり、きわめて効果的な宣伝方法である」。民主主義は完璧ではないことを教えてくれた選挙だった。> をいをい。選挙結果が不快で、トランプさんが嫌いなあまり、とうとう民主主義そのものの否定だよ。私も朝日の論調についてはずっと批判してきたが「はたして新聞というものが必要なのだろうかと考えた」とコラムを落したことはないよ。コラムニストとしてはもっとも書いてはいけないことだ。人々に支えられてそのものが存在していることは前提なのだから。歴史に残るひどい文章であるというほかはない。 「軍事を知らない」大マスコミばかりなのでちっとも論点として浮上していないが、トランプさんが大統領とったので、戦後日本の安全保障の大転換点となる可能性がある。しょうもない基地問題でちょぼちょぼと騒いできた大マスコミが、なんでこれをもっと取り上げないのかなあ。さすがにロイターは外国の通信社なのでよくわかっている。写真もいいねえ。日本の新聞社ならぜったいに使わないだろう。朝日はオノレの社の旗そのものだし(爆笑)。 <トランプ氏の安保政策、発言通りなら日米同盟に亀裂も> http://jp.reuters.com/article/trump-japan-defence-rift-idJPKBN1341IT <トランプ米大統領の誕生に、日本の外交・安全保障政策に携わる関係者の間では戸惑いの声が広がっている。選挙期間中の発言通り孤立主義的な方針を取るなら、日本は自主防衛の強化を迫られる。> その通りだ。この何十字からに集約されている。日本国はやっと「自分の国は自分で護る」というあたりまえのことをもとめられるのだ。70年もたって。 <本の元外交官は「日本は考え方を変えなくてはならなくなる。強い米国に守られていることに慣れきっていた」と話す。> こんなコメントが出てくることそのものが奇形国家なのである。やっと治るかということだ。 <中国が軍事力を増強し、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄しない中、トランプ次期政権の方針次第では、敵基地を攻撃する打撃力の保有議論が日本国内で盛り上がる可能性がある。> 当たり前でしょう。殴られるまで殴り返さないいうのがこれまでの妄想的平和論だった。相手の国の弾道ミサイルのハッチが開くのを察知すれば、それを攻撃しなくて、国民を護ったことになるのか。日本国が本気を出せば、そういうインテリジェンス能力は世界有数である。そのこと活かして「本格的戦争を最初で防ぐ」ことが本当の防衛であり平和国家ではないのか。マンガでもそうでしょう。最強の奴はグッと睨むことで、チンピラを黙らせる。本当はいちばんいいのは核武装なのだが、そこまで一気にはまだ行けない。「いつも見ているよ」「ただちに叩き潰すよ」という態度こそが大切なのである。 それにしてもこの国の外交関係者はいったい何をしているのか。情け無いとしか言いようがない。「トランプの可能性」はこの私ですらかねてから言ってきたことだ。であれば、個人的なルートをとうに作っておくべきである。無能な外交官は懲罰の対象とするべきだ。 <トランプ氏が発言通り同盟国に負担増を求めるのかどうかを含め、日本政府は次期大統領の外交・安保政策の中身を具体的に把握できていない。ワシントンの日本大使館が今年に入ってトランプ陣営の情報収集と分析を進めてきたが、関係者によると、外務省幹部が知日派のキーパーソンに接触できたのは、最近のことだという。> これって、何なの?<ワシントンの日本大使館が今年に入ってトランプ陣営の情報収集と分析を進めてきた> 。何年も前から、次の大統領の可能性がある人については接触していくのが外交の定石である。大東亜戦争の時に外務省のクソぶりを思い出す。宣戦布告の翻訳に時間がかかり、真偽は不明だが、アメリカからはずっとそのあと真珠湾攻撃は「不意打ちだ」と罵られ続けた。ひとえに外務省のアホのためである。 安倍さんに進言しようかな。外務官僚をいっそすべて入れ換えればどうか。商社の前線で世界中で戦っている人たちの方がはるかにできますぜ。霞が関に行くと14時ごろに赤い顔をした派手な服装の連中がいる。外務省だ。ランチと称して外国人と酒を呑んでいる。それはいいのだけれども、仕事はちゃんとしろよな。戦前の外交官というのは、立派だった。その人たちの伝記を読むがいい。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ (c)2016 勝谷誠彦、katsuyamasahiko.jp All Rights Reserved. 問合せ(メールの未着など):info@katsuyamasahiko.jp 情報提供・感想:stealth@katsuyamasahiko.jp 発行:株式会社 世論 59