(英エコノミスト誌 2016年11月12日号)
香港高等法院(高裁)による議員資格を取り消す判決が書かれた用紙を手にする游蕙禎氏(2016年11月15日撮影)。(c)AFP/ANTHONY WALLACE〔AFPBB News
分離主義者を黙らせれば済む問題ではない。
 香港立法会(国会に相当)は、9月の選挙で当選した議員の就任宣誓のやり方をめぐって混乱に陥った。立法会の定数は70で、主流派を支持する勢力が支配している。香港特別行政区政府中国共産党を支持する議員に有利になるよう歪められた選挙方式のおかげだ。

 それにもかかわらず、今回の選挙では香港の独立性を高めたいと訴えた候補者が6人当選した。その中には、中国からの分離が好ましいと考える人物もいる。
宣誓式では、青年新政という新党に所属する2人の議員が「香港国」への忠誠を誓い、「中国」という国名を大日本帝国時代の日本人が用いた蔑称で呼び、さらには「香港は中国ではない」と書かれた旗を掲げてみせた。梁頌恒(シクストゥス・リャン)氏と游蕙禎(ヤウ・ワイチン)氏によるこの芝居がかった行為には子供じみた面もあった。
 中国政府は11月7日、喜劇を見る気分ではないことを明確にした。中国の議会である(といっても、すでに決まっていることを形式的に承認するだけの)全国人民代表大会全人代)は、この2人の議員を立法会から追い出すことを狙った裁定を下した。全人代が自らの考えを押し通すことについて、疑いを抱く向きはほとんどない。香港の独立に傾いている他の議員も、立法会から閉め出される恐れがある。
 この介入は香港の多くの人を激怒させた。全人代は、香港の憲法に当たる香港基本法を監督しているが、1997年に英国から中国に返還された際に香港には「高度な自治が約束されたため、全人代の裁定はこれまでずっと最後の手段として使われてきた
 今回は、2人の議員の議員資格剥奪を目指した香港政府の求めに応じて、香港独自の司法部門が審理を始めたばかりだった*1全人代が香港の裁判所に先んじたことは、過去に例がない。全人代の裁定は、香港が世界の金融ハブとして大成功を収める要因になっている司法の独立性を損なうものだ。
*1:この記事が出た後、香港の高等法院(高裁)は2氏の議員資格を取り消すとの判断を下した。