パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー

慰安婦問題の裏に 支那が存在していることが やっと日本人に見え始めた。
しかし まだまだ日本人は お人よしな国民である。

慰安婦カードを使わせる中国――習近平とサンフランシスコ市長の連携プレー

慰安婦の日」 ソウルに500体の慰安婦像(写真:Lee Jae-Won/アフロ)
 韓国の国会が「慰安婦の日」を記念日と決定しただけでなく、サンフランシスコ市長が22日、慰安婦像を受け入れた。これらの背景には中韓関係だけでなく、習近平とサンフランシスコ市長との思わぬ結びつきがある。

◆サンフランシスコ市長が慰安婦像設置を承認

 11月22日、アメリカ、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエドウィン・リー市長は、慰安婦像の寄贈を受け入れることを承認した。この慰安婦像はサンフランシスコを中心とした華人華僑の反日団体である「史維会」などが在米コリアン市民団体などと協力しながら建てたもので、3体の像は韓国、中国およびフィリピンの慰安婦を象徴しているのだという。3体の像から少し離れた場所で、1991年に元慰安婦として初めて名乗り出た韓国の金学順さんを表す像が3体の像を見つめているという形になっている。9月に民有地に設置し、10月に土地ごとサンフランシスコ市に寄贈した。
 「史維会」の正式名称は「世界抗日戦争史実維護聯合会」。英語名は“Global Alliance for Preserving the History of WWII in Asia”で、GAという名で知られている。
 2014年7月17日付けの本コラム「なぜサンフランシスコに抗日戦争記念館?――全世界に反日運動を広げる中国の狙いは?」で詳述したように、史維会は1994年12月に設立された。
 もともとは1989年6月4日の天安門事件民主化を叫ぶ若者たちを武力で鎮圧したことに対する抗議運動から始まったものだったが、1994年に江沢民愛国主義教育を始める頃には、すっかり中国大陸の巧みな手法によって洗脳されてしまい、中国政府に呼応する形で、同年、史維会を結成するに至る。それというのも、中心となったのが台湾系の在米華人で、中国大陸が80年代末から全世界の華人に向けて張りはじめたキャンペーンである「中国和平統一促進会」(和統会)運動に乗ってしまったからである。和統会が提唱する「以経促統(経済の連携を強めることによって統一を促進する)」戦略に賛同するようになったことが大きなきっかけだった。そのため史維会のメンバーの中には中国政府のために発信することを条件に中国とのビジネスに熱を入れている者もいる。
 「以経促統」は、実質上は「チャイナ・マネーで民心を買う」ということになる。中には主義主張を貫くメンバーもいるが、ほとんどがチャイナ・マネーに心を買われている。北京の顔色を窺いながらでないと行動しない。
 結果、今では中国政府と連携しながら、中国政府のために動いていると言っても過言ではない。
 筆者に送られてくるサンフランシスコ発のメールの中に、突然、慰安婦に関する情報が増え始めたのは、今年10月半ばのことだ。

◆サンフランシスコ市長が貴州省

 ちょうどそのころ、何が起きていたかというと、サンフランシスコのエドウィン・リー市長が、中国の貴州省を訪問していた。エドウィン・リーは中国名「李孟賢」という在米華人だ。中国の広東省に本籍があるが、アメリカのシアトルで生まれたため、アメリカ国籍を持っている。2011年1月にサンフランシスコ市長に当選。サンフランシスコでは初めての在米華人による市長就任である。
 中国政府の通信社である「新華網」が、大々的に李孟賢市長誕生の祝賀報道を行なった。中国メディアではエドウィン・リーの中国名、李孟賢を用いて報道しているので、以下、李孟賢のみを使用する。
 その李孟賢は2017年10月14日、中国の貴州省を訪問している。
 貴州省習近平総書記が、第19回党大会(中国共産党全国代表大会)の「代表」選挙に当たって選んだ選挙区だ。
 党大会の代表選挙は2016年10月に開催された中共中央政治局会議で発布された選挙通知に従がって、8カ月間をかけ2017年6月まで行なわれた。全国8900万人の中国共産党党員の中から党大会に参加する約3000名の代表を選出する。党の代表を選ぶので投票権を持っているのは、当然、党員のみである。
 中央にいるチャイナ・セブンは、この政治局会議で、どの選挙区を選ぶかを決定した。それによれば、たとえば習近平は「貴州省」という選挙区に決まり、李克強は広西省に決まった。
 習近平に話を限れば、2017年4月、習近平貴州省全党員の全ての票を得て満票で貴州省代表に当選している。中共中央総書記が選挙区に選んだとなれば、貴州省の人気は上がるし、選んだからには、その理由がある。
 実は理由は二つあり、一つは貴州省の貧困度が高く経済発展を促さなければならないという側面で、もう一つは習近平子飼いの陳敏爾が貴州省党委員会の書記を務めており、陳敏爾を応援したかったからだ。今年7月に重慶市の書記、孫政才が拘束されたことから、陳敏爾が重慶市の書記に就任し、すわ、「ポスト習近平」かと話題を呼んだことがある。
 そんなことから、李孟賢は中国を訪問するのに、自分の本籍地である広東省ではなく貴州省を選ぶというのは、なかなかに目先が利く御仁(ごじん)ではないか。
 実は2015年9月に習近平が訪米した際、カリフォルニア州ネバダ州の「ロサンゼルス―ラスベガス」高速鉄道敷設に関して中国はカリフォルニア州と意向書を取り交わしている。ところがその後、あまり芳しくない進展しか見せておらず、1年後にはアメリカ側から白紙に戻すと宣言され、頓挫していた。習近平はメンツを失った格好だ。

清華大学顧問委員会のイーロン・マスク氏も絡めて

 そこでスペースX社&テスラ・モーターズのCEOイーロン・マスク氏が、「ハイパーループ」という、超ハイテクを駆使した高速移動技術の導入を考案した。「ロサンゼルス―サンフランシスコ」間を30分で移動できるだけでなく、建設費は高速鉄道の10分の1で済む。
 すると習近平は自分の母校である清華大学にある経営管理学院顧問委員会のメンバーに、早速イーロン・マスク氏を招聘し、委員の一人にした。この顧問委員会には数十名に及ぶ米大財閥の名前が並んでいる。そのリストは拙著『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』のp.31からp.35に列挙してある。
 「習近平イーロン・マスク―李孟賢」という、一見何の関係もないようなキーパーソンが一本の線できれいにつながっていることが見えてくる。
 これらの背景の下、貴州省を訪問した李孟賢は、「貴州省にもぜひ、サンフランシスコの高速鉄道建設に参画してほしい」と表明したのだ。
 一方、慰安婦像の受け入れは、前述のとおり、基本的に9月には話が決まっていた。
 なんと賢明ではないか。
 2015年9月27日のコラム<米中首脳会談「西高東低」――米東海岸、習近平を冷遇>など、一連のコラムで述べたように、あのときの習近平訪米は失敗に終わったと言っていい。李孟賢の貴州訪問におけるオファーは、習近平がわざわざ選挙区に貴州を選んだほどに貴州省の経済活性化を望んでいたという現実と、2015年9月の訪米が失敗したという苦々しい現実の両方を救い上げる、実に一挙両得あるいは三得以上の効果があった。
 こうして習近平とサンフランシスコ市長は結びつき、「慰安婦像」に関しても協力関係にあったわけだ。

◆韓国国会で「慰安婦の日」決議

 連続撃ちをするように、24日、韓国の国会で、「8月14日を慰安婦の日とする」ということが決議された。
 中国が慰安婦問題をユネスコの世界記憶遺産に登録すべく申請をしてきたが、資料不十分として、他の国と連携するように命ぜられたのは、まだ記憶に新しい。そこで習近平はパククネ(朴槿恵)元韓国大統領を抱き込み、韓国とともに再挑戦することを試みようとしていたが、2015年末、日韓により「慰安婦問題を国際社会で二度と取り上げないこと」が不可逆的に合意された。
 すると習近平はいきなりパククネを突っぱね、THAAD(サード)の韓国配備もあって、突然韓国に激しい経済報復を始めたのだ。
 ところが、もともと親中派文在寅が大統領になると、「慰安婦問題に関する日韓合意は韓国民の十分な民意を得ていない」ことを理由に、再び慰安婦問題を表面化させるようになった。中国による経済報復で低迷を続ける韓国経済を何とか回復させようと、11月26日付けのコラム<韓国を操る中国――「三不一限」の要求>など、いくつかのコラムで書いて来たように、韓国は中国にひれ伏し、中国が喜ぶように「反日的言動や決定」を繰り返すようになったのである。

◆中国における「痛快そうな」報道

 中国大陸では、「ほら見たことか!」と言わんばかりの報道が目立つ。
 たとえば、11月24日付の中国共産党系の「環球網」は「日本、ビンタを喰らう!サンフランシスコ市長:慰安婦像問題、議論の余地なし」という見出しで報道し、中国共産党の機関紙「人民日報」の電子版「人民網」や中国政府の通信社の電子版「新華網」などが、一斉に華々しく日本批判を展開した。中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVなどのアナウンサーの声も、心なしか「痛快げ」に聞こえるほどだ。「してやったり!」「さあ、反抗はできまい」と言わんばかりである。
 こんな中国を、「日中友好だ」とか「李克強首相が日本の経済界代表団と会見してくれた」とか「習近平が笑顔で安倍総理と握手してくれた」というトーンで受け止めている日本政府と日本のメディアを見ていると、暗澹たる気持ちになるのを抑えることができない。