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「全被害者の即時一括帰国」のほか解決への道はない


救う会全国協議会ニュースより転載

★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2018.06.08)拉致問題

「全被害者の即時一括帰国」のほか解決への道はない


 本日、6月8日(金)、韓国ソウルで「北朝鮮政権の不法拉北、拉致問題解決のための13か国国際共助対処法案発表会」が開催される。韓国の朝鮮戦争中拉致家族会が主催し、韓国、タイの拉致家族、人権活動家、北朝鮮専門家などが参加する同会議に、西岡力救う会会長も発表者として招かれた。

 以下は同会議に西岡会長が提出した報告の主要部分である。救う会が12日にある米朝首脳会談を前にして、日本の拉致救出運動の現況をどう見ているか分かる資料なので、ここに掲載して認識を共有したい。

拉致問題、「全被害者の即時一括帰国」のほか解決への道はない

西岡力救う会会長)

 拉致問題が正念場を迎えている。家族会・救う会が被害者救出運動を始めて21年の中で、まさにかつてないチャンスを迎えている。日米が主導して最高度に高めた対北圧力を、核・ミサイル廃棄だけでなく、拉致被害者帰国のために使うことが出来る状況が生まれつつあるからだ。

 米朝は6月12日にシンガポールで首脳会談を持つことに合意した。トランプ大統領は4月の日米首脳会談で安倍首相に、「金正恩に対して日本人拉致問題提起する。拉致被害者を日本に連れ戻せるようわれわれはできることはすべてる」と約束した。

 安倍晋三総理が繰り返しトランプ大統領に、拉致問題の深刻さを説明し、私たちも昨年9月に訪米しトランプ氏側近に家族が直接訴えるなどの必死の努力をした結果、米朝首脳会談の議題に拉致が取り上げられるまでになった。これは大きな成果だ。6月7日(現地時間)ホワイトハウスで持たれた日米首脳会談でも、拉致問題解決のための日米協力が主要議題となった。今朝、政府から私のところに届いた会談概要は以下の通りだ。
安倍総理から、昨年11月のトランプ大統領訪日の際、拉致被害者御家族にお会いいただいたことへの感謝を伝え、改めて拉致問題に関する経緯や御家族の切実な思いを説明したのに対し、トランプ大統
領からも、改めて、米朝首脳会談拉致問題を提起する旨の力強い発言があった。
両首脳は、引き続き拉致問題の早期解決に向けて、日米で緊密に協力していくことを再確認した」。

 次の課題は、トランプ政権に対して、私たちが何を求めているのかをしっかり認識してもらうことだった。拉致問題北朝鮮がどのような行動をとれば制裁を緩め支援できるか、あるいはどのような行動があるまでは制裁を緩めることや支援をすることは出来ないのか、日本が考えているその基準について米国にきちんと理解してもらう必要がある。

 トランプ大統領金正恩との会談において、日本が国交正常化後に実施すると約束している大規模な経済支援を、金正恩との会談での取引材料に使おうと考えている。一方、トランプ大統領もこの間の日本の働きかけで核・ミサイル問題が解決しても拉致問題が解決しなければ日本は大規模な経済支援をしないということを理解しているはずだ。だからこそ、日本が満足できる拉致問題解決の定義をきちんと米国に伝えておく必要があった。それがないと、2002年の小泉訪朝
時のように、北朝鮮側が拉致問題について部分的な譲歩をしてきて、「これで解決済みだ」と強弁し、詳しい事情を知らないトランプ大統領がそれを「解決」だとして受け入れてしまう危険があるからだ。

 そこで私たちは4月22日、東京で大規模な国民集会を開いて関係者の間での共通認識を持った。その集会には安倍首相をはじめ加藤勝信拉致問題担当大臣政府要人、超党派の国会議員の集まりである拉致議連会長、与党から自民党拉問題致対策本部長と公明党拉致問題対策委員長、野党から立憲民主党代表代行、希望の党拉致問題対策本部長、民進党拉致問題対策本部長、日本維新の会拉致対策本部長ら与野党政治家、全国の知事が全員参加している「北朝鮮による拉致被害
者を救出する知事の会」の会長、全国の地方議員の集まりである拉致問題地方議会全国協議会会長などが、オールジャパンで被害者を取り戻すために集まった。

 そこで私たちは以下のように決議した。

 今後、米朝首脳会談の結果によっては拉致問題が大きく動くことも予想される。
そのとき絶対譲れないのは、全拉致被害者の即時一括帰国だ。北朝鮮がでたらめな理由をつけて「死亡」と通告してきた8人、同じく北朝鮮が拉致したことさえ認めていない「未入境」と通告された4人、その他多くの未認定拉致被害者を含め全員が帰ってこなければならない。それなしには、わが国は北朝鮮へのどのような合意や支援、援助にも反対するだけでなく、米国をはじめとする国際社会に対して、制裁を緩めたり支援をしてはならない、と強く訴えるべきだ。

 つまり、私たちが絶対に譲れない要求は「拉致被害者の即時一括帰国」なのだ。安倍総理も「(拉致問題の解決とは)拉致被害者全員の即時帰国だ」、「拉致問題が解決しない中で(北朝鮮に)大きな経済支援をしていくことはない」と繰り返し明言している。

 私たち家族会・救う会拉致議連は4月30日から1週間、米国を訪問した。
加藤拉致担当大臣も5月3日から6日まで訪米して精力的な活動をした。私たち拉致問題の解決についてどのような考えを持っているか、米国とすりあわせをすることが目的だった。

 すなわち、「全拉致被害者の即時一括帰国」が日本の絶対譲れない要求だ。それが実現しない限りいくら核とミサイル問題が米朝間で解決しても、経済支援をすることはないということを米国に伝えることが訪米の目的だった

 訪米団は4月30日から5月2日までと5月4日の4日間、ワシントンDCで米政府機関の主要機関(国務省国防総省、NSC)で拉致を担当する高官と懇談を持ち、それ以外に前職高官、シンクタンク人権NGOなどの幹部と懇談した。

 ここで特筆すべきことは米国政府高官、元高官、専門家、人権活動家すべてが、「日本人拉致問題解決のために日米が協力すべきだ」と口々に語ったことだ。私は2001年以来、家族会と訪米し続け、拉致問題解決への協力を求めてきたが、拉致が疑惑ではなく、現実の国家犯罪であることから説明しなければならなかった過去に比べ、おのずから解決を力強く約束してくる今の米政府は天と地ほどの差があった。家族会の横田拓也事務局長もその印象を「拉致を解決する意思が米政府に広がっていた。これほど手応えを感じたのは初めてだ」と振り返った。

 ただし、上記の私たちの要求の具体的内容はまだ、理解されていなかった。米側からは「あなたたちにとっての拉致問題解決の定義は何か」、「拉致被害者総数は何人か」などという率直な質問を多く受けた。また、「米朝首脳会談の結果、何人かの被害者が帰ってくるのではないかと期待している」という発言や、ベトナム残留米兵の家族は遺骨が帰ってきたことを喜んだ。あなたたちはどう
か」などという、「全被害者の即時一括帰国」とは異なる「解決」を想定した質問もあった。

 それらに対して私たちは次のように説明した。

 残念ながら被害者の総数を私たちは知らない。しかし、米国は核問題で北朝鮮が持っているプルトニウムや濃縮ウランの総量は不明だが全部出せと言っている。
それと同じく一人でも被害者が抑留されたまま残されれば解決ではない。

 被害者には3つのカテゴリーがある。第1は、一方的に「死亡」とされたが客観的証拠が一つも出されなかった8人、第2に、北朝鮮に入っていない、つまり「未入境」とされた4人、第3に、まだ政府が認定できていないが確実に存在する被害者だ。その3つがすべて帰国しなければならない。

 特に、第1の8人について、北朝鮮が死亡の証拠として出してきた2人分の「遺骨」からは他人のDNAが抽出されたし、横田めぐみさんの死亡診断書や元夫の手紙では93年に死亡と明記されているが、帰国した被害者らは94年までめぐみさんが同じ地域に住んでいたと証言している。

 それ以外の7人の死亡診断書も「死亡時期」、「死亡場所」がそれぞれ大きく異なっているのに同じ病院の同じ書式で、手で押したゴム印の位置さえ一致する偽造されたものであり、田口八重子さんと松木薫さんの交通事故書類も名前の欄が白く塗りつぶされており他人の書類を出してきた疑いが強いなど、8人のうち誰一人として死亡の証拠を出せなかった。死亡説を日本に納得させたかった北朝鮮が厳重に管理していた被害者の死亡の証拠を出せなかったということは、20
02年の時点で8人は生存していたことを意味する。また、確実な生存情報が多数あることからも8人生存は間違いない。

 また、第2のカテゴリーの4人についても、確実な証拠があるので北朝鮮に拉致されたことは間違いないし、そのうち何人かについては確実な生存情報が多数ある。

 現時点で「再調査報告書」などを安易に求めると生きている被害者を殺して遺骨を作り出す危険がある。新たに徹底的に調査したらみつかったとして「未入境」とした4人やそれ以外の被害者数人を出すことは比較的容易だが、一度「遺骨」や死亡診断書などを出して死亡とした8人について、実は前回の説明は虚偽だったと認めることは、前回の説明を行わせた金正日の権威を貶めることになりかね
ず、彼らの体制では大変困難なはずだ。

 したがって、今回、金正恩が全被害者を帰すという決断をしたかどうかを判断するためには、最低限第1のカテゴリーの8人が生きて帰ってこなければならない。第2カテゴリーも生きて帰ってこなければならない。第3カテゴリーについては、帰ってきた被害者に対して北朝鮮でそれ以外の被害者を目撃したり情報を聞いたりしたことがないか徹底的に聞き取りをするから、何人かを隠しても暴露される可能性が高い。全被害者の即時一括帰国、これなしには日本は満足しない。
米国もそれなしに拉致問題が解決に向かったと判断してはならない

 実は以上のような説明をする必要がなかった訪問先が1カ所あった。それがトランプ大統領の側近のポッティンジャー・安全保障担当大統領次席補佐官だった。
彼は私たちが全被害者の即時一括帰国について説明する前に、面会の冒頭で「私の机の上には拉致問題のパンフレットが置いてある。5人が帰ってきたが、8人はまだ帰ってきていないし、私たちがまだ知らない多くの人たちも彼の地にいるはずだ。全員が帰ってこなければならない」と語って、同意見であることを表明した。

 また、ポッティンジャー氏はトランプ大統領拉致問題への姿勢について以下のように説明した。「私が昨年初めてトランプ大統領にこの問題について説明した時、大統領はその瞬間に心に衝撃を受けたし、11月に(東京で)皆さんと会ったときにも同じ衝撃を受けた」、「大統領は公開の席でも私たちといる非公開の
場でも、金正恩と会う目的の一つはあなたがた家族の問題を取り上げることだ」。

 そして、ジョン・ボルトン安保担当大統領補佐官拉致問題への力強い姿勢についても次のように語った。

「彼は、拉致問題は自分のなすべきことであり、進めていくという強い信念を持っている。日本が頼むのを待つ必要はない、米国自身が自分たちの問題として取り
組むべきだと考えている」。

 「8人はまだ帰ってきていない」というポッティンジャー氏の表現は、北朝鮮の死亡通告は虚偽で8人は生きているという認識に立っている証拠だ。また「全員が帰ってこなければならない」という言葉は、私たちが強調する「全被害者の即時一括帰国」を彼なりの表現で表したものだった。ワシントンで会った他の誰よりも、トランプ大統領の側近のポッティンジャー氏は拉致問題の本質を良く理
解していた。安倍総理をはじめとする政府挙げての外交努力と2001年以来、繰り返し訪米して要路に働きかけを行ってきた私たちの努力の成果といえる。率直に励まされた。

 北朝鮮の国営メディアと日本の一部マスコミとが口を揃えて、「日朝首脳会談だけが実現できない」、「日本だけが蚊帳の外におかれている」という安倍総理に対する非難報道を続けている。しかし、日朝首脳会談を行うことが外交目的ではなく、国益を実現する、この場合は拉致被害者の全員帰国を実現させることが会談の目的であって、会談はそのための手段に過ぎない。

 以上見てきたように、トランプ政権は自国の安保に直結する核・ミサイル問題と並んで、「日本人拉致問題金正恩に提起する」と約束している。これは自然に実現したことではなく、日本の外交努力の成果だ。「蚊帳の外」論はそのことを見ていない。北朝鮮が日本の反安倍勢力と調子を合わせている理由は、安倍政権があせって金正恩と会うことを目的視することを狙った工作だ。

 5月中旬、北朝鮮権力内部に通じるラインは私に「金正恩米朝会談の後に日朝会談を行うことをすでに決めている。ただし、拉致問題については金正恩以外の誰も、一切言及してはならないという指令が出ている。金正恩が全員返す決断をするか、前回同様、一部だけを返すかはまったく分からない」と伝えた。いま、
拉致は解決済みだと報道するのは、新たな方針が出ていない以上、過去に言っていたことを繰り返すしかないという側面と、来たるべき日朝首脳会談で日本から得る見返りを出来る限り大きなものにするための駆け引きの要素が強いのだ。そんなものに一喜一憂する必要はない。


 トランプ大統領金正恩との会談を前にして、「核問題が解決した場合に行う経済支援に米国は参加しない。日本、韓国、中国が支援するだろう」と繰り返し述べている。

 安倍総理は「拉致、核、ミサイル問題が解決すれば日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算し、国交を正常化し、経済協力を行う用意がある」と繰り返し語っている。全被害者の即時一括帰国をあらゆる機会に求め続ける。その実現がなければ日本は経済支援をしないと北朝鮮に伝え続けるしかない。安倍総理はぶれていない。この道しかない。

以上