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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月4日(火曜日)
通巻第5815号
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「中国アフリカ協力フォーラム」が台無しになる?
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習近平の「晴れ舞台」が呪われた会議に暗転したかのようだ。
三年ごとに開催されている「中国アフリカ協力フォーラム」は、9月3日から北京にアフリカ50ヶ国の指導者を一堂にして開始された。
同フォーラムにはアフリカ54ヶ国のうち、エスワティニ(旧スワジランド。台湾と国交がある)を除く53ヶ国が加盟しており、このうち50ヶ国の指導者が北京へやって来たのだ。
席上、習近平は得意顔で、「中国は今後三年間で、総額600億ドルを援助する」と高らかなアナウンス。本当に実現するかどうかは別にして、この巨額は日本がTICADで表明した300億ドルの二倍である。
習近平は「中国アフリカ協力フォーラム」開会式で「中国は永遠にアフリカの良き友人で、誰もこの強い団結を破壊できない」とし、要するに究極の狙いであるBRI(「一帯一路」)の意義を再確認した。
また「借金の罠」という西側からの批判に対して、習近平は「中国とアフリカの協力の成果を、単なる臆測で否定しているだけ」であり、米国を念頭に、「覇権主義や強権政治が見える。保護主義が台頭した」などと述べた。
虚ろな響きだった。会議直前の9月1日、遼寧省、安徽省、江蘇省、浙江省などで、輸入したアフリカ豚から「アフリカ豚コレラ」の感染が確認され、数万頭の処分が発表された。米中貿易戦争で、米国からの豚肉に高関税かかかるためアフリカ産の豚を輸入拡大した矢先だった。
中国農業省の発表では2万4千頭が処分されたとしたが、実態はその数倍とも言われ安徽省や江蘇省の鳥義などの豚肉市場は閉鎖された。鳥義はアフリカ人が多い輸出基地として知られる。
国連は「アフリカ豚コレラ」はウィルス感染するため「急速に中国全土を超えて、アジア諸国一帯に拡大する怖れがある」と警告した。
▲国内に貧乏な中国人が生活に苦しんでいるのに?
さて「中国アフリカ協力フォーラム」で、習近平は「私たちは虚栄で援助しているのではない。政治的野心も抱いておらず、国際政治上の利益を求めるものではない」と大見得を切った。
この言葉を額面通りに受け取れば十五世紀の鄭和の大艦隊派遣の再来となる。
習近平は続けて、「中国は各国の工業の基幹となるインフラ建設に協力する」と目的を語ったのだが、実際に中国は2000年から2016年までにアフリカ諸国に1250億ドルを融資している。大半が焦げ付きになっていると想定される。
アフリカの旧宗主国=欧米を越えた最大の融資国、貿易相手国となり、アフリカの七つの国には工業特区を建設、またジブチには海外基地を置いた。
ジブチのほか、エチオピア、コンボ、ザンビアの中国への債務額が際立つ。
2017年度の中国とアフリカの貿易は14パーセント増の1700億ドルに達しており、中国は農作物を輸入し、多くの消費物資ならびに防衛協力と称して武器を輸出した。
会議では150億ドル融資は無利子とし、200億ドルの信用枠供与、100億ドルを開発支援、そして50億ドルをアフリカ諸国からの輸入に使うとした。
またモーリシャスとはアフリカ諸国で初のFTAを締結したと発表された。7月に習近平はルアンダ、セネガル、南ア、モーリシャスを歴訪している。
中国の知識人の多くは「国内に貧乏な中国人が生活に苦しんでいるというのに、なぜ遠いアフリカに巨額を援助するのか?」と習近平外交への批判を強めている。
▽◎◇◎み◇◇▽◎や◇◎◇◇ざ◇◎◇◇き◎◇◇◇
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月4日(火曜日)
通巻第5815号
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「中国アフリカ協力フォーラム」が台無しになる?
アフリカから輸入した豚に「アフリカ豚コレラ」。豚肉パニック
*******************************習近平の「晴れ舞台」が呪われた会議に暗転したかのようだ。
三年ごとに開催されている「中国アフリカ協力フォーラム」は、9月3日から北京にアフリカ50ヶ国の指導者を一堂にして開始された。
同フォーラムにはアフリカ54ヶ国のうち、エスワティニ(旧スワジランド。台湾と国交がある)を除く53ヶ国が加盟しており、このうち50ヶ国の指導者が北京へやって来たのだ。
席上、習近平は得意顔で、「中国は今後三年間で、総額600億ドルを援助する」と高らかなアナウンス。本当に実現するかどうかは別にして、この巨額は日本がTICADで表明した300億ドルの二倍である。
習近平は「中国アフリカ協力フォーラム」開会式で「中国は永遠にアフリカの良き友人で、誰もこの強い団結を破壊できない」とし、要するに究極の狙いであるBRI(「一帯一路」)の意義を再確認した。
また「借金の罠」という西側からの批判に対して、習近平は「中国とアフリカの協力の成果を、単なる臆測で否定しているだけ」であり、米国を念頭に、「覇権主義や強権政治が見える。保護主義が台頭した」などと述べた。
虚ろな響きだった。会議直前の9月1日、遼寧省、安徽省、江蘇省、浙江省などで、輸入したアフリカ豚から「アフリカ豚コレラ」の感染が確認され、数万頭の処分が発表された。米中貿易戦争で、米国からの豚肉に高関税かかかるためアフリカ産の豚を輸入拡大した矢先だった。
中国農業省の発表では2万4千頭が処分されたとしたが、実態はその数倍とも言われ安徽省や江蘇省の鳥義などの豚肉市場は閉鎖された。鳥義はアフリカ人が多い輸出基地として知られる。
国連は「アフリカ豚コレラ」はウィルス感染するため「急速に中国全土を超えて、アジア諸国一帯に拡大する怖れがある」と警告した。
▲国内に貧乏な中国人が生活に苦しんでいるのに?
さて「中国アフリカ協力フォーラム」で、習近平は「私たちは虚栄で援助しているのではない。政治的野心も抱いておらず、国際政治上の利益を求めるものではない」と大見得を切った。
この言葉を額面通りに受け取れば十五世紀の鄭和の大艦隊派遣の再来となる。
習近平は続けて、「中国は各国の工業の基幹となるインフラ建設に協力する」と目的を語ったのだが、実際に中国は2000年から2016年までにアフリカ諸国に1250億ドルを融資している。大半が焦げ付きになっていると想定される。
アフリカの旧宗主国=欧米を越えた最大の融資国、貿易相手国となり、アフリカの七つの国には工業特区を建設、またジブチには海外基地を置いた。
ジブチのほか、エチオピア、コンボ、ザンビアの中国への債務額が際立つ。
2017年度の中国とアフリカの貿易は14パーセント増の1700億ドルに達しており、中国は農作物を輸入し、多くの消費物資ならびに防衛協力と称して武器を輸出した。
会議では150億ドル融資は無利子とし、200億ドルの信用枠供与、100億ドルを開発支援、そして50億ドルをアフリカ諸国からの輸入に使うとした。
またモーリシャスとはアフリカ諸国で初のFTAを締結したと発表された。7月に習近平はルアンダ、セネガル、南ア、モーリシャスを歴訪している。
中国の知識人の多くは「国内に貧乏な中国人が生活に苦しんでいるというのに、なぜ遠いアフリカに巨額を援助するのか?」と習近平外交への批判を強めている。
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