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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成31年(2019年)2月6日(水曜日)弐
通巻第5984号
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「次の金融危機は『従来型』ではない」とケネス・ロゴフ(ハーバード大学教授)
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ケネス・ロゴフ教授といえば、元IMFのチーフ・エコノミスト、現在はハーバード大学教授として、夥しい論文を書き、ジョセフ・スティグリッツやポール・クルーグマン(いずれもノーベル経済学賞)と果てしなき経済政策論争でも知られる経済論壇の重鎮。日本では一部の翻訳がある。
ロゴフはエール大学を首席で卒業し、プリンストン大学からハーバード教授、一時期はIMFからFRB理事を経て、ハーバード教授へ戻った。
そのロゴフ教授が英紙『ガーディアン』(2019年2月5日)に寄稿し、次の金融危機を警告した。このコラムには「金融危機は間もなくやってくる」とセンセーショナルなタイトルが冠せられた。
とくにソフレンデフォルト(国債の破綻)が起こると持論を展開しており、EUのギリシア危機はなんとか回避できたが、つぎにイタリア、スペインが控えている。欧米の経済学者はアジアに目を向けることが少ないが、世界経済の過半をにぎるアジアにおいて、ソフレンデフォルトの危機は中国、パキスタン、スリランカに忍び寄っている。
趣旨は「2008年の金融危機(リーマンショック)からようやく回復をみた世界経済だが、政治家のいうように『当時より安全なシステムが機能している』という状況は、英国のBREXIT、米国はトランプ政治などの混乱が加わって、確実性は不透明となり、さらには2010年の「ドッド・フランク法」の成立によって金融システムが脅かされても金融機関の救済は禁止されているからだ」とする。
リーマンショックでは事実上の銀行救済措置がとられ、米国の銀行・証券界が再編された。その後、金融機関はみごとな回復を示した経過は周知の事実だろう。
しかし、ロゴフ教授は言う。
「危機管理は自動運転のパイロットが操縦しているのではなく、移り気な人間がおこない、FRBや各国の中央銀行が優秀な金利、通貨政策を採用しているにせよ、人間が関与し、しかも金融当局の能力、守備範囲を越えて(経済システムや金融工学、コンピュータ理論などに疎い)政治家が危機管理の全体に携わっているからだ」。
たしかに「各国の中央銀行、通貨当局、経済政策担当の官庁には『備えがある』。しかし、その備えとは従来起こった過去のパターンへの対応策に立脚しているだけだから、新しい金融危機にはおそらく対応できないのである」と示唆する
▼サイバーが市場を攻撃して金融危機を惹起する、あるいは高金利に突如変わるとき
となると新しい危機は奈辺から生じるのか?
現在の世界的規模の債務残高は200兆ドルと言われる。米国が金利をあげただけでも、ドルがウォール街に一斉に環流し、ベネズエラは事実上のデフォルト状況に陥った。ロシアは金準備を増やし、ドル資産を劇的に減らした。
「これまでとはまったく違う」と教授は強調して次を続ける。
「従来型ではなく、ハッカーによる市場攻撃という不確実性と、主要各国の金利政策が突如異変(世界が一斉に高金利)に陥ったときに、金融危機が起こる」とロゴフ教授は警告した。
この警告、いかに聞くか?
AIによる高度産業社会は、ロボット、EV、5Gという未来社会をすでに予見させているが、今後、直面するのは失業である。急激な産業革命の結果、技術に追いつけない人々の失業を招来するが、ロゴフ教授に拠れば、長期的に見て失業は金融危機の結果であり、歴史的にみても、悪影響が長期に及ぶという。
国家の債務がGDP比率で90%を超えると低成長に陥るという法則についても、欧米の経済学界では反論のほうが多く、実際に90%を超えていたカナダは経済成長を持続できたという実例をあげてロゴフ論文に反論した。米国は大戦前に90%を遙かに超える債務があったにも関わらず、戦後世界最大の繁栄を謳歌できた。したがって「90%理論は馬鹿げている」とスティグリッツ教授等は舌鋒鋭く反論したこともあった。
□◎□○み△◎□◇や○◎○□ざ□◎□○き○◎○□
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成31年(2019年)2月6日(水曜日)弐
通巻第5984号
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「次の金融危機は『従来型』ではない」とケネス・ロゴフ(ハーバード大学教授)
「サイバー攻撃か、金利政策が突然高くなることによって」
*******************************ケネス・ロゴフ教授といえば、元IMFのチーフ・エコノミスト、現在はハーバード大学教授として、夥しい論文を書き、ジョセフ・スティグリッツやポール・クルーグマン(いずれもノーベル経済学賞)と果てしなき経済政策論争でも知られる経済論壇の重鎮。日本では一部の翻訳がある。
ロゴフはエール大学を首席で卒業し、プリンストン大学からハーバード教授、一時期はIMFからFRB理事を経て、ハーバード教授へ戻った。
そのロゴフ教授が英紙『ガーディアン』(2019年2月5日)に寄稿し、次の金融危機を警告した。このコラムには「金融危機は間もなくやってくる」とセンセーショナルなタイトルが冠せられた。
とくにソフレンデフォルト(国債の破綻)が起こると持論を展開しており、EUのギリシア危機はなんとか回避できたが、つぎにイタリア、スペインが控えている。欧米の経済学者はアジアに目を向けることが少ないが、世界経済の過半をにぎるアジアにおいて、ソフレンデフォルトの危機は中国、パキスタン、スリランカに忍び寄っている。
趣旨は「2008年の金融危機(リーマンショック)からようやく回復をみた世界経済だが、政治家のいうように『当時より安全なシステムが機能している』という状況は、英国のBREXIT、米国はトランプ政治などの混乱が加わって、確実性は不透明となり、さらには2010年の「ドッド・フランク法」の成立によって金融システムが脅かされても金融機関の救済は禁止されているからだ」とする。
リーマンショックでは事実上の銀行救済措置がとられ、米国の銀行・証券界が再編された。その後、金融機関はみごとな回復を示した経過は周知の事実だろう。
しかし、ロゴフ教授は言う。
「危機管理は自動運転のパイロットが操縦しているのではなく、移り気な人間がおこない、FRBや各国の中央銀行が優秀な金利、通貨政策を採用しているにせよ、人間が関与し、しかも金融当局の能力、守備範囲を越えて(経済システムや金融工学、コンピュータ理論などに疎い)政治家が危機管理の全体に携わっているからだ」。
たしかに「各国の中央銀行、通貨当局、経済政策担当の官庁には『備えがある』。しかし、その備えとは従来起こった過去のパターンへの対応策に立脚しているだけだから、新しい金融危機にはおそらく対応できないのである」と示唆する
▼サイバーが市場を攻撃して金融危機を惹起する、あるいは高金利に突如変わるとき
となると新しい危機は奈辺から生じるのか?
現在の世界的規模の債務残高は200兆ドルと言われる。米国が金利をあげただけでも、ドルがウォール街に一斉に環流し、ベネズエラは事実上のデフォルト状況に陥った。ロシアは金準備を増やし、ドル資産を劇的に減らした。
「これまでとはまったく違う」と教授は強調して次を続ける。
「従来型ではなく、ハッカーによる市場攻撃という不確実性と、主要各国の金利政策が突如異変(世界が一斉に高金利)に陥ったときに、金融危機が起こる」とロゴフ教授は警告した。
この警告、いかに聞くか?
AIによる高度産業社会は、ロボット、EV、5Gという未来社会をすでに予見させているが、今後、直面するのは失業である。急激な産業革命の結果、技術に追いつけない人々の失業を招来するが、ロゴフ教授に拠れば、長期的に見て失業は金融危機の結果であり、歴史的にみても、悪影響が長期に及ぶという。
国家の債務がGDP比率で90%を超えると低成長に陥るという法則についても、欧米の経済学界では反論のほうが多く、実際に90%を超えていたカナダは経済成長を持続できたという実例をあげてロゴフ論文に反論した。米国は大戦前に90%を遙かに超える債務があったにも関わらず、戦後世界最大の繁栄を謳歌できた。したがって「90%理論は馬鹿げている」とスティグリッツ教授等は舌鋒鋭く反論したこともあった。
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今やる事は 押しかける難民、戦争を仕掛け経済を動かそうとする支那の悪だくみを砕くこと。