パルデンの会

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中国を「為替操作国」中国の外貨準備を枯渇させ、金融システムを痲痺



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宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
令和元年(2019) 8月7日(水曜日)
        通巻第6164号
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 トランプ政権、ついに中国を「為替操作国」と認定
    裏の意図は中国の外貨準備を枯渇させ、金融システムを痲痺させる?

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 2019年8月5日、ムニューシ財務長官は、「中国は為替操作国であると認定する」とした。ウォール街も東京証券市場も大下落に見舞われた。ザシティ、香港ほかを含めて平均で3・5%の株価下落となった。

 米国の突如の中国「為替操作国」認定は、為替相場人民元の対ド ル相場が1ドル=7人民元の大台を割り込み、このときに中国当局はむしろ介入しなかったため違和感があった。なぜならこの日に限って言えば、中国が通貨を操作しておらず、当面の人民元安容認の 姿勢を示しただけだったからだ。

トランプは2015年に大統領選挙キャンペーンを開始したときから「私がホワイトハウスに入ったら初日に『中国を為替操作国』として認定する」と公約していた。公約実現は大統領就任から二年と七ヶ月後になった。

 その前、7月26日にトランプ大統領ツィッターで「世界貿易機 関(WTO)が中国などを『発展途上国』として扱い、優遇措置を 与えているのは不公平だ」と主張した。
同時に「もし、WTOの制度改革が90日以内に大きく進展しなけ れば、途上国扱いを中止する」とし、米通商代表部(USTR)に 通告した。 
WTO加盟以来、18年を経過しているうえ、すでに世界第二位の経済大国がまだ「発展途上国」あつかいを受けているのは、考えてみれば不思議なことである。

 留意しておく動きが同時に起きている。トランプ政権はベネズエラ の在米資産凍結に踏み切ったのだ。8月5日に「大統領令」 を発動し、「米国内にあるすべてのベネズエラ政府資産の凍結」 を命じた。

中国はこの動きを見逃さなかった。いずれ中国の在米資産も凍結されるのではないか。
ベネズエラ制裁理由はマドゥロ政権が「市民の不当逮捕や表現の自由への介入、反対勢力弾圧などの人権侵害」を続けている事実だ。政府資産凍結のほか、米財務省が制裁指定した人物についても、資産を凍結し入国を原則禁止する」としている。 
 同じパターンは、中国に適用可能である。おそらく対中姿勢、次の段階はこの方向で出てくるだろう。

 さて為替操作国の「認定を受けた」かたちの中国はただちに反論し、為替操作を否定し、また市場の反応はと言えば、1ドル=7人民現代から6・9683に恢復した。

 中国が重視するのは香港である。じつは為替は、この香港でレートが決まるからだ。姑息な手段を中国はたびたび用いてきた。
香港市場に介入するために中国が短期債権を、連続的に起債しており、8月6日にも、43億ドル(邦貨換算4500億円)を近く調達すると発表している。
 要するに、これで香港の為替市場に介入し、人民元を暴落から守るのである。昨年末から、この手口は繰り返されている。


 ▲人民元の強さを中国はしばし護持するだろう

 華字メディアは、米国の中国為替操作国認定を「貿易戦争の新段階」「第二幕」と分析し、米中は「経済冷戦」に突入したと大書した

 第一に中国人民元が対ドルレートを下げれば、輸出競争力がつく。すでに中国から輸入品のほとんどに関税を上乗せしているアメリは、人民元が下落すれば、関税分を相殺できるため、「操作」と認 定する。
 しかし実態は逆である。中国は人民元を無理やりにでも高いレートを維持することによって、国威発揚に繋がる愛国主義を口実に、じつは輸入代金の決済を安く抑えてきた。具体的に言えば原油、ガス、鉱物資源の決済である。人民元が高いと有利な買い物が可能だった。穀物、豚肉など中国人のライフラインを支える食料も人民元対ドルレートが強いからこそ、強気で輸入を拡大できた。

 第二に中国から流れ出した天文学的なドル資金というダークサイドがある。
 人民元が自由にドルと交換できて、しかも強いとなれば、外国の土地、不動産買収も、強い人民元で買いたたくことが可能だった。
あまつさえ外国企業の買収に人民元パワーが発揮できた。それもこれも人民元がドルと有利な条件で交換できたからだ。
 御三家の「大活躍」を思い出す。
 安邦生命保険はウォルドルフ・アストリアホテルなど、米国の名だたる不動産を買いまくった。万建(ワンダ)集団は、全米映画館チェーンからハリウッドの映画製作会社にも手を伸ばした。海航集団は、ヒルトンホテルチェーンから有力企業にまで、その魔手を拡げていた。
 二年前から、海外資産の叩き売りをはじめ、必死の形相でドルを中国へ環流させてきた。外貨準備が払底したからである。

 第三に中国はAIIBやシルクロート、人民元決済兼などと言いながら、ほとんどの貿易決済は依然としてドル基軸である。
 外国企業の直接投資、香港を経由する株式投資があり、ドル準備の均衡が取れていたかにみえた。「世界一の外貨準備」と喧伝し、一時は4兆ドル近い外貨準備を誇ったが、いつしかドルを借入れ、ドルで社債を発行し、それでも足りず、せっかく購入した北外国債権を片っ端から売却して手元のドル不足を補ってきた。外国送金も海外旅行の外貨持ち出しも厳しく制限され、異様なほど外貨準備の均衡に神経質となった。それでも2018年度統計で、中国は公式的に670億ドルの外貨準備を減らした。

 第四に中国の金融システムにおいては、ドルの増加分を人民元を印刷して市場に供給できた。つまり貿易黒字が大きければ、国内の資金供給が膨らみ、「世界の工場」と言われたときは、ドルの滞留がおきたほど。
 それが過去三年のドル不足により市場に人民元の供給が困難となると、ドルの裏付けのない人民元を発行して、供給を続けた。不動産価格の維持、株式市場の無理やりの価格維持作戦、そしてハコモノ、新幹線を作り続けて人為的な好況を装うという、全体主義国家でしかできない離れ業を敢行してきた。

 ドルの裏付けのない通貨発行は40%近いと言われており、原則的人民元相場に適用すれば「適正相場」は四割安。1ドル=9・8程度までの下落が必要となる。
 人民元が現在の16円弱から9円60銭くらいに暴落することを意味する。算盤上の仮の数字である。

 トランプ政権の中国為替操作国認定は、表面的には関税相殺を封殺するように見えて、じつはドル枯渇状況を深刻化させ、次の制裁発動までの時間稼ぎと見ることが出来る。


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