習近平 天命を失ったのか?
習近平氏が「現代の皇帝」と呼ばれているのは驚くことではない。歴代の皇帝は中国を統治する「天命」を持っていると主張していたが、習氏は天命を拡大し、中国だけでなく全世界を統治しようとしている。
「天命」とは、紀元前1046年-紀元前256年の周王朝で発展した儒教の概念である。「天」が中国の皇帝(天子)に中国を治める権利を授与するものとされている。これは欧州の王権神授説と似ている。
王権神授説は、王を退位させるための道徳的指針を定めていない。王家は放蕩、不品行、腐敗、及び他の神聖ではない行動に関わらず永遠に統治できる。それと異なり、実用的な儒教思想は、天は民に不道徳または暴君の皇帝から治世の権限を取り消す権利を与えた。中国人は、そのような皇帝に対して反乱を起こす義務があると教えられている。
天は、皇帝を目指す共産主義者、習近平氏から統治の使命を剥奪しようとしているのだろうか?
「天命」の四つの原則
2019年に米国の学術ウェブサイト「ThoughtCo」に掲載されたエッセイ、「中国の天命とは何か?(What Is China’s Mandate of Heaven?)」では、天命には4つの原則があるとされている。
中国共産党(中共)は、現代中国においてその専制支配を持続させるために、都合よく古代中国の伝統を利用し、歪曲している。
習氏は天命の概念をねじ曲げて中共の総書記を皇帝の代わりにしただけでなく、総書記は天によって世界を統治する権利と責任を与えられていると伝えている。
天命を失っている
ハーバード大学法学院の元副院長スティーヴン・ヤング氏は今年4月、「習近平は天命を持っているのか?(Does Xi Jinping have Heaven’s mandate?)」という文章でこのように指摘した。
習近平氏にとって大きな問題の1つは、「天が彼(習氏)を、第一に中国を、第二に天下、すなわち全世界を導くために選んだという証拠はない。中国人が何かのために習氏を選んだという証拠もない。彼は『天意』と『民心』を得たことはなかった」
仮に習近平氏が一度は天命を持っていたとしよう。中国の伝統では、特定の兆候が積み重なると、皇帝は天命を失うとされている。これらの兆候には、自然災害、外国による侵入、一部国民による反乱、公の場での放蕩と不道徳、無能、そしてこれらの兆候の組み合わせによる信頼の喪失があげられる。
以下は、「習皇帝」にとって好ましくない兆候だ。
反乱
2022年末、中国共産党の最高指導部による「コロナウイルスゼロ」政策に対する抗議は、これまでにない規模で、全国で大波紋を呼び起こした。最終的に習氏はこの政策を中止せざるを得なくなり、メンツと信用を失った。
私の考えでは、民間では不満がたまっている。日経アジアの9月9日のレポートによれば、「中国の所得格差は最大値を記録している。都市部の上位20%の平均世帯所得は、最下位20%の6.3倍に達している」
これにより、中共が長らく主張してきた「共同富裕(共に豊かになる)」は、空言になってしまった。
台風
7月31日、CNNは「ここ数年で最も強い台風の1つである台風5号(トクスリ)は、中国全土に集中豪雨をもたらした」 「今年中国に上陸すると予想される6番目の台風カーヌーンに当局は備えている」と報じた。
9月2日、ロイター通信はサオラー台風が中国南部の広東省を襲ったと報じた。「時速200キロ以上のスーパー台風として記録されたサオラーは、1949年以降で広東省南部を脅かした最も強い台風の1つだ」
一方、官製メディアのチャイナデイリーでさえ「100年に一度の暴風雨が広東と香港を水浸しにし、浸水させた」 と報じた。天による罰は続いている。
熱波
2022年8月、CNNは四川省は史上最悪の熱波に見舞われ、電力供給が不足していると報じた。
「高層ビルは薄暗くなり、工場は閉鎖され、地下鉄は真っ暗になり、家庭やオフィスは計画停電に陥ってエアコンのプラグを抜かざるを得なくなり、停電に見舞われた農場では 数千羽の家禽や魚が死んだ」
「New Scientist」誌はこれが「1961年の国の記録が始まって以来、最も長く、最も暑い熱波である」と報じ「8月18日には、四川省の重慶で気温が45°Cに達し、これは新疆地域の砂漠地帯を除く中国で記録された最高気温だ」と述べた。
ロイターは7月18日、「猛烈な熱波が中国の首都を席巻する中、北京は1年間の高温日数の記録を27日に更新した」と報じた。
腐敗が蔓延
中共の一党専政の下で、役人の腐敗はすでに普遍的な現象となっている。習氏は就任当初から汚職撲滅を政権の最重要課題としてきた。これまでに様々な反腐敗運動が展開されたが、腐敗は明らかに増加の一途をたどっている。
習近平氏の反腐敗宣言は単なる見せかけなのだろうか。
統計市場調査プラットフォーム「スタティスタ」が2022年7月に、2012~22年までの中共の役人の腐敗事件のグラフをまとめた。その中で2022年の腐敗事件は59万6千件だった。
経済の無策
中共政権が自身の正当性を主張する主な理由の1つは、中国経済を効果的に管理していることにあるが、最近の事実はそうではないことを示しているようだ。
中国の住宅市場の低迷は、報告されたよりもはるかに深刻であり、国有の建設業者の半数が「広範な損失」を報告している。(Zero Hedge)
上記の所得格差は、習近平時代に中国の経済的困難が悪化したばかりのスタートに過ぎない。(Zero Hedge)
中国は「デフレに陥っている」(ニューヨーク・タイムズ)
中共政府が全面的な統制を追求した結果、国は成長鈍化の道をたどり、社会の不満が高まった。習近平政権下の「停滞時代」が作り出された。(米国の外交・国際政治専門雑誌「フォーリン・アフェアーズ」)
その結果、習氏の中国経済を管理する能力に対する信頼が失われた。これは、天命の喪失から一歩手前の状態だ。
終わりに
全国各地での個人崇拝と「習近平思想」の著作を通じて、習近平氏は自身を現代中国の皇帝として位置づけている。彼はおそらく、すべて物事は極点に達すれば必ず逆の方向に動く時が来るという法則を忘れてしまったのだろう。
中国の伝統によれば、皇帝は天命を失い、廃位されることがある。すでに挙げた兆候だけでも、習氏がその天命を失ったことを予言できるだろう。中共の指導層の運命について、神はもう定めているかもしれない。
この記事で述べられている見解は、著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。