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外国人経営者向けの在留資格「経営・管理ビザ」の取得要件が10月に厳しくなり、すでに日本に移住している中国人の間で動揺が広がっている

経営ビザで中国系「ペーパー会社」大阪で乱立、移民ビジネスの仕組み…500社超で「取締役」の日本側協力者も

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読売新聞オンライン

 「起業の夢を手放すしかないのか」「さようなら日本。帰国します」――。外国人経営者向けの在留資格「経営・管理ビザ」の取得要件が10月に厳しくなり、すでに日本に移住している中国人の間で動揺が広がっている。中国のSNSには連日、同ビザに関する情報が飛び交う。厳格化されるのは、移住目的で実体のないペーパー会社を設立する事例が目立つことが指摘されていたからだ。大阪市内の五つの築古物件には、コロナ禍後の3年間でペーパー会社と疑われる中国系法人計677社が登記していることが読売新聞などの調査でわかった。背後には、どういう仕組みがあるのか。「移民ビジネス」に関わった人物が裏事情の一端を明かした。

【写真】日本への移住のノウハウが投稿されている中国のSNS

■ビザ厳格化に中国人困惑「理不尽だ」

 9月下旬、大阪駅近くの広場には、経営・管理ビザで移住した中国人たちの姿があった。「ビザ更新時に必要な対策は」「子どもの受験はどうしよう」……。厳格化の方針が明らかになった今年7月から、SNSでの呼びかけで毎週日曜に開かれている交流会。この日は約30人が参加し、日本で事業を続けるための情報を交換して不安を共有した。

 「ビル・ゲイツでさえ、ガレージで事業をスタートさせた」。参加した陳偉さん(50)(男性、仮名)は、ビザの取得要件厳格化で1人以上の常勤職員の雇用が必須とされたことを「理不尽だ」と感じている。「中小企業は社長1人で起業するのが当たり前だ」

 昨年10月、中国浙江省から次女(16)と来日し、中国で20年間続けた建築施工を担う会社を大阪府東大阪市に設立した。日本語が話せず、取引相手は日本在住の中国人だが「早く日本でしっかり事業をしたい」と毎日、日本語の勉強に励んでいる。

 経営・管理ビザは家族の帯同が可能で、日本で起業することに加え、子どもに日本の教育を受けさせたいと考える人も多い。陳さんもその一人で、次女は来年の公立高校受験に向け準備している。妻と長女も呼び寄せる。簡単には帰れない事情がある。

陳さんは「小さな会社で働きたいと希望する人は少ないと思う」と考えつつも、「事業がある程度成長したら、採用活動を行いたい」と前を向こうとしている。

■「後出しじゃんけん」…帰国や駆け込み申請も

 「経営・管理ビザ取得のハードルは確かに低かったが、今回の要件変更はあまりにも唐突すぎる。後出しじゃんけんにならないよう、すでに入国している人には旧要件を適用すべきだ」。元入管職員の行政書士・木下洋一さんは、そう指摘する。

 取得要件の見直しで資本金が「500万円以上」から「3000万円以上」に引き上げられ、1人以上の常勤職員の雇用が必須とされたほか、経歴や学歴、日本語能力の要件が追加された。すでに入国している場合も、今回の見直しから3年が過ぎた後にビザを更新する際には厳格化した要件が適用される。

 厳格化を受け、帰国する人もいる。大阪市福島区行政書士事務所「イーストリーガルオフィス」には、厳格化の要件が公表された10月10日からの数日間で、7人から「会社を閉めて年内に中国に帰る」と連絡があった。常勤職員を新規雇用して事業を続けるメリットが感じられず、様子を見るために一度帰国するケースが目立つという。

 大学卒業後に起業を志す留学生にも影響を与えている。京都府内の大学に留学する大阪市在住の王暁さん(23)(男性、仮名)は8月下旬、留学ビザから経営・管理ビザへの変更申請を求め、厳格化前に大阪市中央区行政書士法人「大阪国際法務事務所」に駆け込んだ。厳格化後の要件を満たすのは難しく、学歴も「今さらどうにもならない」と考えたからだ。9月末にビザ変更を入管に申請した。

■中国系法人5棟に677社、中国人続々来日

 経営・管理ビザの取得要件だった資本金500万円以上は、他国に比べて安く、家族帯同が可能なことから移住の手段として利用が進んだ。経済状況の悪化などで中国から日本に移住する人が増え、同ビザで在留する中国人は昨年、過去最多の2万1740人に上った。

 問題となるのは、移住目的のペーパー会社設立が目立つことだ。読売新聞と阪南大の松村嘉久教授の共同調査では、大阪市内の五つの築古物件に、2022年から今年9月中旬までにペーパー会社と疑われる中国系法人計677社が登記していることがわかった。うち、666社(98・4%)の資本金の額は「500万円」で、厳格化前に必要とされていた資本金と同額。法人は代表が中国にいながら設立され、3年間で583人が日本に住所を移していた。

調査は、松村教授が法人登記簿などから抽出した市内の中国系法人9660社のうち、多くの法人が集まる上位5棟を読売新聞が分析した。主に来日前の代表の住所が中国にある法人を中国系法人とした。

■113社入るビルに人影なく

 大阪市内で多くの中国系法人が集まる上位5棟の物件のうち、大正区の住宅街にある4階建てビルでは9月上旬の時点で113社が本社を置く。4~10月に読売新聞の記者が何度も訪ねたが、入り口は閉鎖され、人の出入りは見られなかった。ビル所有者の中国人男性は「特区民泊用に約50室を30室に改装した」が、コロナ禍で利用者がいなくなり、2022年に中国系法人にビル1棟を貸した。「今はどう使われているか知らない」

 5棟はいずれも築30年以上で、部屋数は大半が数十室。1部屋を分割して登記する部屋もあった。大阪市東成区の築35年の8階建てマンションには、22年以降133社が登記され、9月時点で69社が本社を置く。64社はすでに別の場所に移転。空いた部屋には新たな法人が登記されており、物件が使い回されている状況が浮かぶ。5棟に登記されている複数の法人の代表に取材を試みたが、事務所は不在で、登記簿上の住所地を訪ねても居住確認できなかった。

 入管の審査は書面審査が中心で、現場で確認すれば事業が行われているか疑われるような事業所が多く見逃されてきた可能性が高い。

■日本側の協力者 報酬は「ビザ申請で15万~20万円」

 法人登記簿の分析を進めると、100社以上に「取締役」として名を連ねる人物が複数いることがわかってきた。そのうちの一人で、「日本側の協力者」という田中勇介氏(仮名)が読売新聞の取材に応じ、移住の仕組みを明かした。

 「日本への移住を希望する中国人が現れると、仲介者から連絡が入り、まもなく500万円が海外から送金されてくる」。この500万円が法人登記に必要な資本金となる。入金が確認できたら、司法書士がその中国人と田中氏を「取締役」として、法人登記する。次は行政書士が経営・管理ビザの申請書類を作成するという流れだ。「中国人が来日したら取締役を退き、事業に関わることはない」

報酬は、行政書士のビザ申請で15万~20万円。「取締役」になる場合は2万~3万円だったという。500社以上の「取締役」を務める司法書士法人の代表もいた。

■来日後は関与せず、ブローカーは「詐欺」

 こうした「移民ビジネス」が成り立つのは外国人が海外にいたまま口座開設や法人登記を行うのが難しいためだ。日本に拠点を置く中国系法人や日本の不動産業者が「ブローカー」となり、司法書士らをつなぐ。中国人は資本金に加え、手続き費用に法外な値段を払い、「詐欺」と訴える人もいる。松村教授は「金もうけが目的で、中国人の来日後は一切関与しないのが問題だ」とする。

 ただ、「中国の情勢にも左右されるが、あらゆる手段で中国を脱出しようとする人はなくならないだろう。距離的にも近い日本を移住先に選び、日本の不動産に投資しようという動きは続く」とみる。その上で、「実体がわからないから日本社会に外国人への不安が広がり、排斥の思考になる。日本に必要な人材を見極め、受け入れられるような制度を構築していくことが必要だ」と指摘する。

 要件の厳格化はどのような影響をもたらすのか。筑波大の明石純一教授(国際政治経済学)は「資本金を6倍に引き上げたのは思い切った数字で、資金力に乏しい一定の層への影響は出る。それでも、日本は移住先の一つとして有力視されており、『経営・管理』の在留資格はその手段の一つとして残るだろう」と分析。「実体のない会社設立などが是正され、制度趣旨に合う健全な受け入れになっていくのが望ましい」と語った。  ※この記事は読売新聞とYahoo!ニュースの共同連携企画です。

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