パルデンの会

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チベット焼身自殺者の肖像画 悲劇終わるように 筆に願い込め


【ZOOM】チベット焼身自殺者の肖像画 悲劇終わるように 筆に願い込め

 中国・北京郊外にある「宋庄アート村」。その一角に構えたアトリエで、画家リュウ・イーさんは筆を握り、黙々とカンバスに向かっていた。描いているのは、中国政府による弾圧への抗議として、焼身自殺を図ったチベットの人々の肖像画だ。
 使う絵の具は白と黒のみ。その色合いは哀悼の気持ちを表すかのようだ。3月、ロイター通信のカメラマンがアトリエを訪れた際は、2011年8月に焼身自殺を図ったチベット僧の男性の顔を描いていた。
 米政府系放送局ラジオ自由アジアによると、2009年2月以来、中国のチベット族居住区で115人が焼身自殺を図り、うち90人以上が死亡しているという。チベット亡命政府があるインド北部ダラムサラには、中国での弾圧を逃れた亡命チベット人が今も多数暮らしている。
 こんな悲劇が終わるように。リュウさんは一筆、一筆、願いを込めて描いている。
 ≪「人道的な観点で注意を向けてほしい」≫
 リュウさんの後ろに並んだのは40人の顔。過去3年間に焼身自殺を図ったチベットの人々だ。しかめ面もあれば、ほほえみを浮かべるような表情も見られる。中には何かを訴えかけるかのように、こちらをまっすぐ見つめる顔もある。
 チベット問題は、中国国内で最もタブー視されているといってもいい。リュウさんのように公的な立場で真正面から問題に向き合い、発信する存在は稀だ。
 漢民族満州民族の血が流れるリュウさんは、チベット仏教の信奉者でもある。昨年12月、AP通信の取材に、以下のように語っている。
 「チベットの人々の顔を描いていると、いつも気持ちが穏やかになり、思いやりで満ちていく。彼らは他の誰かを攻撃するのではなく、完全なる自己犠牲を払った人々なのです」
 ただし、誤解してはいけない。リュウさんが肖像を描く理由は、ただ信仰心だけにあるのではない。「イデオロギーや民族的な問題として見るのではなくて、人道的な観点からチベットのことに注意を向けてほしい」という思いがあるからだ。
 今もなお、チベットの人々による自己犠牲の連鎖は断ち切れていない。リュウさんはたくさんの顔を描きながら、こうつぶやいたという。
 「もうたくさんだ」
 (EX編集部/撮影:ロイター/SANKEI EXPRESS)
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