中国、孤立解消ならず
【水平垂直】オバマ・習会談
■「快挙」強調も尖閣は平行線
【北京=矢板明夫】「快挙を成し遂げた」。中国共産党機関紙、人民日報が10日付社説でこう論評するなど、中国メディアは習近平国家主席の訪米の 成果をそろって強調した。しかし、尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海における周辺国との対立問題では、理解と配慮を求めた習主席にオバマ大統領は“ゼロ回 答”で応じた。事前に期待していた発言は引き出せず、異例の早期訪米に踏み切った習主席の“外交的賭け”も、アジアにおける中国の孤立解消につなげること はできなかった。
同補佐官によるとオバマ大統領は「(日中)双方の当事者は事態を悪化させるのではなく、外交チャンネルを通じて対話を目指すべきだ」と主張。中国 の楊潔●(よう・けつち)国務委員によると、習主席は対話を通じた問題の処理と解決を図る原則を示したものの、同時に「国家主権と領土は断固として守る」 と改めて強調。議論は実質、平行線となった。
しかし今回、習主席は就任3カ月で異例の早期訪米に踏み切った。その背景には中国のアジアにおける孤立感があるといわれる。尖閣諸島をめぐり対立 している日本の安倍晋三首相が就任後、積極的に“中国包囲網外交”を展開し、東南アジア、モンゴルなどの周辺国と関係を深めたことで、習政権に「周りは敵 ばかり」(共産党筋)との焦りが高まったという。
習主席としては、日本や東南アジアに大きな影響力を持つ米国とのトップ会談で局面打開を図りたい考えだったとみられる。
そのため米国が喜ぶような“土産”も準備した。米国に滞在中の人権活動家、陳光誠氏の親族にパスポートを発行。対日問題で最も強硬な人民解放軍の 高官に、シンガポールでの国際会議で「(尖閣問題を)棚上げすべきだ」と発言させ、「中国は武力衝突を望んでいない」とのメッセージを発信した。しかし、 そうした配慮も実を結ばぬままに訪米を終えた形だ。
●=簾の广を厂に、兼を虎に
2013年6月11日 産経新聞 東京朝刊
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