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(老いとともに)脳卒中? 受診ためらわずに


(老いとともに)脳卒中? 受診ためらわずに

2016年2月2日05時00分 朝日新聞

 日本人の死亡原因で4位の脳卒中は、介護を必要とする原因ではトップに位置づけられる。脳卒中を疑う症状が見られれば、ためらわずに病院に行ってほしいと専門家は助言する。再発することも多く、予防に取り組む自治体も出てきた。

 ■介護原因のトップ
 2013年の国民生活基礎調査によると、「介護が必要となっhttp://www.asahicom.jp/images/asahicom/hand.pngた主な原因」で、最も多く挙げられたのが「脳卒中」(18・5%)だ。「認知症」(15・8%)や「高齢による衰弱」(13・4%)を上回る。脳卒中は「寝たきりの原因」でも最多の35・7%。本人だけでなく家族や周囲の生活にも大きく影響する。
 
脳卒中は、起こる仕組みによって大きく
脳梗塞(こうそく)」

の3種類に分かれる。
激しい頭痛や運動まひ、意識障害など典型的な症状の出方も少しずつ違うとされる。たとえば、頭蓋骨(ずがいこつ)と脳の間にあるくも膜で脳動脈瘤(りゅう)(動脈にできたこぶ)が破裂して起きるくも膜下出血では、激しい頭痛や意識障害が起きるが、通常手足などのまひは出ない。
 脳卒中を疑う症状としては「激しい頭痛」「片側だけの顔面のまひやしびれ」「ろれつが回らない」などがある。東海大学八王子病院脳卒中センター(東京)の下田雅美教授は「脳卒中を疑う症状が出たら、ためらわずに病院に行ってほしい」と話す。命にかかわるだけでなく、早期に治療を開始できるかどうかで、手足のまひなど後遺症の程度も変わってくるからだ。
 
2009年に約250人の脳卒中の患者を調べた調査では、65歳以上の高齢者の2人世帯や一人暮らしの場合、3人以上の世帯に比べて、発症から病院到着まで3時間を超えやすいとの結果が出た。さらに夜間に発症した場合、高齢者の2人世帯では、病院到着までの時間が極端に長くなる傾向もみられた。相方が脳卒中の症状だと気づかなかったり、救急車を呼ぶのをためらったりするためという。

 ■不整脈にも要注意
 全国の医療機関から登録された患者のデータを分析した「脳卒中データバンク2015」(中山書店刊)によると、脳卒中のタイプ別では約9万6千人のうち脳梗塞が75・9%を占め、脳内出血は18・5%、くも膜下出血は5・6%だった。
 下田さんによると、脳梗塞の中でも「心原性脳塞栓(そくせん)症」というタイプは高齢者に多く、重症化しやすい傾向があるという。
 
心原性脳塞栓症は、不整脈の一種「心房細動」により心臓や大動脈でできた血栓が脳に流れてきて血管につまることで起きる。太い血管がつまるため、他のタイプの脳梗塞に比べ重症になりやすい。サッカー日本代表元監督のイビチャ・オシムさんもこのタイプだったとされる。
 心原性脳塞栓症の予防のためには、抗凝固薬で血液をサラサラにして血栓をできにくくするなどの治療がある。心房細動が起きた部分をカテーテルで焼く治療もある。
 心房細動には動悸(どうき)や息切れ、胸の痛みといったなどの症状が知られている。ただ、自覚症状のない場合も多く、診断や治療を受けていない人もいる。下田さんは「動悸などの症状が出たら自分の手首で脈を測る習慣をつけ、リズムの乱れに気づいたら病院に行ってほしい」と話す。

 ■多い再発、習慣改善を
 脳卒中の治療は、種類やタイプによって手術や薬を使い分ける。脳梗塞の場合、一般的に発症後4時間半以内なら血栓を溶かす薬「tPA」を使うことが可能だ。血管内にカテーテルを入れて血栓を取り除く治療は、発症から8時間以内が対象となる。
 一方、脳卒中は再発することも多い。再発予防でも脳卒中のリスクを高める高血圧や糖尿病などの管理が欠かせない。自治体による再発予防の取り組みもある。
 広島県呉市では、市の国民健康保険組合が脳梗塞などを発症した加入者を対象に再発予防事業を14年度から始めた。
 診療報酬明細書(レセプト)のデータや、医療機関からの情報をもとに対象者に連絡をする。プログラムへの参加に同意すると、6カ月間、保健師や看護師の面談や電話による助言を受けながら生活習慣の改善に取り組む。
 市内に住む吉田紘昭さん(70)も14年度に参加した18人の1人。13年夏の夜、自宅でテレビを見ていたときに左手にしびれを感じた。「おかしいな」と思いながらも就寝したが、しびれは翌朝も残っていた。顔の左側も感覚がなかった。
 かかりつけ医などを経て総合病院で、軽い脳梗塞と診断され入院。2週間で退院したが、左手のしびれは残る。「血圧や血糖値が高いので病院に行くように健康診断で言われたのに行かなかった。自分が脳卒中になるとは思っていなかった」と振り返る。

 約1年後、市からプログラムへの参加を勧める手紙が届いた。「再発したくない」と思って参加を決めた。担当者の助言で、間食や夜遅い時間の食事をやめ、散歩をするようになった。毎日、体重や血圧も記録する。6カ月のプログラム終了後も血圧や血糖値はまだ高いままだが、状態を悪化させないというプログラムの目的から見れば、成果が出ていると言えるという。「色々と動機づけしてもらったことがブレーキになっている。これ以上病気にならないようにしたい」と話す。

 事業を受託するのは「DPPヘルスパートナーズ」(本社・広島市)。広島大の森山美知子教授(成人看護開発学)が生活習慣病の発症や重症化の予防を目的に設立したベンチャー企業だ。
 森山さんは「生活習慣の改善や、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を悪化させないことが再発予防につながる」と話す。今後は退院直後の患者が参加しやすい仕組みづくりや、国民健康保険の対象にならない75歳以上の高齢者が参加できるようにしたいという。(南宏美)