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「これからの中国とのつきあい方」   一方的に中国を封じ込める必要はないとトランプ流儀

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宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)9月15日(木曜日)弐
        通巻第7464号 
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 ヘリティジ財団報告書。「これからの中国とのつきあい方」
  一方的に中国を封じ込める必要はないとトランプ流儀
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共和党保守陣営を代表するシンクタンク「ヘリティジ財団」がさきごろ、

『今後の中国対応の青写真を纏めた。

「米国が今後数十年にわたって直面する永続的で重要課題は、中国の台頭である。世界史の主要なプレーヤーとして台頭した中国に対して、米国は長期的利益を保護する一方で、中国への毅然たる態度を維持する必要がある。米国は、経済的および政治的自由の原則を堅持し、独自的な強みに依存する。それらは強力な世界的存在感と同盟国とのパートナーシップ、経済的関与、軍事力のプレセンスなどを通じて実行される」と基本的スタンスを明示している。

 もはや保守陣営の分析でも、アメリカが世界の警察官であるという認識が稀釈していることに留意しておくべきだろう。

またポンペオ前国務長官の演説にあったように「中国の人々が問題ではなく、人々を抑圧し、世界の幸福を脅かす共産主義独裁政権が問題」として敵を中国共産党に絞り込んでいる。この主張は中国人民を敵とは認定せず、意図的に独裁政党と峻別、中国人に心理的な亀裂をうませることを考えているからだろう。

 「中国の脅威は表面的な軍事行動ばかりか、米国政府のサイバー ネットワークに対する攻撃、米国企業の知的財産を盗み、公海を航行する船舶や航空機の自由な移動を脅かす行為にあり、中国は米国の同盟国やパートナーの安全を侵害し、民主的なプロセスに干渉している」というあたりは月並みな表現で、ペンタゴン報告や議会報告書にも書かれている。

ヘリティジ財団の報告が異色なのは中国の文化と法治意識、その政治システムにおける西側との異質性を強調しているポイントにある
 すなわち「米国は、中国の意思決定に影響を与える歴史と文化を理解する必要がある」とし、「中国は大陸性の大国であり、天然資源と人的資源を備え、そのうえ中国は世界で最も経済的に活気のあるアジア太平洋地域に位置し、世界経済の新たな中心にあり、グローバル・バリューチェーンの重要な位置にあることが長期的に安全保障上の問題である」とする。


 ▲米国一国だけで中国に対抗するのは難しい

 そのうえで米国一国での目的達成はもはや不可能であり、また単純に「中国封じ込め」を意味しない。米国の強みには、自由市場経済モデル、強力な軍事力へのコミットメント、必要な場合、武力行使する意思、安全保障同盟のシステム、政治的自由へのコミットメントにあるとする。

 さて同報告書は「中国を理解するには、三つの重要な観点があり、(1) 中国の政治文化と統治の歴史。(2) 中国が脅威を認識し、反応する方法とパターン。(3)中国が主要な地理的関心領域であるインド太平洋における他民族との関係の歴史」を挙げている。
 今日の中国の権力の政治的性格は、歴史、イデオロギー、5000 年にわたって国を統治してきた制度の産物であり、中国共産党の前の世代から現在の中国の指導者が受け継いだイデオロギーと遺産は普遍であるとする。
「法の支配」の欠如。中国の歴史の中で、強力で独立した司法システムは存在しなかった。これが中国史西洋史の特質を別け、とくに文化を区別する。だから人権を理解できない。

中国における「法」とは独立機関ではなく、権力構造を維持する手段でしかない。したがって法律は統治の手段として機能したが、中共産党を制約するものではなかった。国際関係でもルールを守ると言いながら遵守した例がない。
 過日のウィグルにおける人権侵害、ジェノサイドという国連報告に関して中国外務省の反論(9月1日)は次であった。OHCHR(国連高等弁務官事務所)が発表した報告者は、反中勢力の政治的陰謀に基づく杜撰な報告であり、内容は完全に虚偽情報のごった混ぜだ」

 法の番人である最高検察長に新たに任命されたのは応勇(前湖北省書記)である。習近平側近として、もっと出世するべきが、閑職に追いやられたのは一族の腐敗が絶えないという悪評の所為だ。それはともかく法律とまったく無関係なのである。
 習のイエスマン最高検察長とは、これいかに、だろう。

 中国は、国際空間に中国の権限を拡大することが国際法と矛盾するとは考えていない。他人が図々しいと思っても、まるで気にしない。そういう神経を持ち合わせてはいない。国際法は存在しても、中国としては便宜的であれば活用するという政治戦争の一部と見なしている。
このヘリティジ財団報告が指摘するようにフィリピンがスカボロウ礁は自国領と訴え、ハーグ国際裁判所が『中国の言い分には根拠がない』と裁断したおりも、中国は「あれは紙屑だ」と言ってのけた。

 さてバイデン政権はトランプの対中制裁路線を引き継いではいるが、運用面で遅れも目立つ。米議会は8月9日に次世代半導体開発の支援と大規模な補助を目的の法律を可決し、バイデンが署名を済ませた。

 現在、上下両院で議事をすりあわせているのは、もっと強硬な「中国対抗法」だ。ところがこの法案可決が円滑化しないのは中国からの妨害ではなく、米国実業界が、あまり規制を強化するとビジネスが失われることへの懸念が広がっているからだ。


 ▲なぜ十数万人の香港人は海外へ逃避したのか

 中国対抗法の眼目は投資審査制度で「米企業がロシアや中国など安全保障上に深刻な懸念のある国への投資には事前の審査が必要で、そうした制度の厳格化をはかるものである。大學や研究機関が中国から寄付金を受けとることも厳しく監視される。
 また同報告者は「中国が政治権力の範囲外で別個の「市民社会」を発展させたことがない」と指摘している。

 四つの近代化、白黒猫論、先富論をひっさげて現実主義の?小平が台頭すると、中国共産党イデオロギーの役割は、プラグマティズムを前に低下したと見え一時期があった。このため、経済が豊になれば中国は自由化するという幻想に酔った西側の楽観主義者は、中国は市民参加の新たなシステムを中国が構築する義務があるとしてきた。

 ところが、香港では逆に言論、結社の自由は殺され、市民生活のおける自由はなにひとつ達成されないばかりか、ネット上の意見も監視された。
政治的に自由は発言もできなくなり、多くの民主活動家が裁判となって、香港人のおよそ十数万人が海外へ移住した。

 中国の言論統制は時代錯誤的に暗黒時代へ戻った。経済、政治、環境、宗教の分野を問わず、中国共産党の監視を免除される団体はない。
 そのうえ中国共産党金利、為替、通貨供給など経済をコントロールする最終的な権限を保持している。甚だしい時代錯誤だが中国共産党は、この絶大な権限を手放す意思はない。だから市場メカニズムが機能しないのだ。

 中国の産業分布図をみると、国有および国営企業は、国内総生産 (GDP) の推定 40% と雇用の 20% を占めており、とくに航空宇宙、航空、造船、化学、エネルギーなどの主要セクターだけでなく、銀行システムも含まれている。


 ▲中国は西側の脅威であり続ける

 他方、中国共産党のなかには米英留学帰りの経済学者が多く、中国が国際システムから孤立している現実が中国経済脆弱性の主な理由であることを正確に認識している。今日の中国は、さまざまな国際機関に積極的に参加しているばかりか、国連関連組織で指導的地位を占める。

 自らも国際銀行を設立して (典型例がAIIB=アジア インフラ投資銀行シルクロード ファンドなど) を通じて途上国を支援している。しかし多くが唯我独尊的で、ほかの参加国との間に摩擦を引き起こしている。

 中国の指導部の意見では、欧米列強は中国国民を転覆させ、政治的統一を弱体化させようとすることで、中国を脅かし続けているとする。したがって、「西洋化」、「平和的進化」、特に「分裂」を促進する努力は、中国共産党の支配に対する脅威であるだけでなく、中国の国家の一体性に対する脅威だと認識し、ソ連の崩壊を導いたゴルバショフは評価しない。

 「皮肉なことに、中国共産党がより現実主義的になり、毛沢東が提唱した極端なイデオロギー的要素を放棄するにつれて、中国共産党が国際システムに与える挑戦は
増大した。(中略)米国は可能な限り自由で開かれた中国との貿易と投資を行うべきであり、単なる接触に止まるのではなく新自由市場改革によって双方にもたらされる機会を強調すべきである。最終的に、自由化を選択し、経済改革に再び取り組み、すでに合意したルールに従うことを選択するような中国となれば、潜在的な米国のパートナーになり得る。しかし現政権の有り様から推測できるのは、より封鎖され、経済的に弱まるであろう中国が、国際秩序に必然的に挑戦することになるため、より大きな脅威であり続けるのだ」
□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□  

 

 

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宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)9月15日(木曜日)
        通巻第7463号  <前日発行>
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 オランダのASMLが中国支社のスタッフを増員
  半導体装置企業、中国撤退の意思なし。制裁はザル法なのか?
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(承前)
 米バイデン政権の追加制裁をうけて次世代半導体開発ならびに半導体政争装置メーカーなどが株価大暴落を演じた。 
サウスチャイナ・モーニングポスト』(9月14日)に拠れば、オランダASMLの中国支社(上海微電子装備有限公司)は1500人のスタッフを、年内、さらに二百名増やし、1700名とするという。2017年の中国法人設立のとき、ASML社の中国拠点は500名だった。

 ASMLは、半導体露光装置で世界最大80%のシェアを誇る。
 2001年から液浸露光技術でニコンと特許係争をくり拡げた。ニコンはオランダ、ドイツ、米国並びに日本で特許侵害を提訴している。いったんは和解したが、以後もASMLが、ニコンに無断で特許を使用しているとして2017年に再提訴した。

 ASMLは極端紫外線リソグラフなど7ナノ以下の先端技術で(装置は一台240億円)、米国のアプライドマテリアルズなどを寄せ付けないで、技術トップランナーと言われる。

 日本を代表する半導体政争装置メーカーは東京エレクトロンで、感光剤と塗布、現像。熱処理成膜、エッチング、洗浄技術などに優れ、この会社も韓国、シンガポールなど世界27ヶ国に拠点を置くが、中国に三ヶ所。
上海の二社は販売と部品の調達を受け持っているが、昆山支社が製造ならびに補修を行う。


 東京エレクトロンの株価はピークの69170円から下落を続けてきた。9月14日の初値は42980円で、ピークから38%もの下落となっている
□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□