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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)7月10日(月曜日)
通巻第7815号 <前日発行>
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バイデン政権のクラスター爆弾、ウクライナ供与の衝撃度
欧米の亀裂とウクライナの劣勢と米国内の分裂を鮮烈に浮き彫りとした
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クラスター爆弾は面制圧の効果を挙げる複雑兵器である。たとえばF15に搭載のクラスター爆弾を投下すると子爆弾がばらばらと飛び散り数千箇所を破壊する。非人道的兵器だとして廃棄する国、使用禁止を声明した国々は123ケ国にのぼるが、米露中、イスラエルなどは条約に加わっていない。
第一にクラスター爆弾を供与せざるを得ないほど、ウクライナが軍事的に劣勢である事実が明らかになったのではないのか。ウクライナは敗色が濃いのである。
対戦車ミサイルや対空ミサイルで緒線段階ではめざましい戦果を挙げていたウクライナ軍の実態は制服を着替えた英米の特殊部隊だったことがようやく知られるようになった。
155ミリ榴弾砲、長距離ミサイルのハイマース、くわえて戦車の供与を受け、ゼレンスキー大統領はいよいよ大攻勢に転じると言っていたが、軍事的成果はほとんどない。
後楽園スタジアム五個分ほどの面積を奪回した「勝った」「勝った」と騒いでいるが、ウクライナの大本営発表は虚偽だらけだった。ましてロシアがワグネル傭兵部隊の叛乱で弱体化しているチャンスにも、ウクライナは何も出来なかった。
日本のメディアが情報を依拠している英国情報府のそれは政治宣伝色がつよく、また米国の「戦争研究所」なるシンクタンクの情報はネオコンが操作している。ウクライナ大本営の戦果は虚報でしかない。
第二にクラスター爆弾の供与にNATOは米国をのぞいて距離を置いたばかりか、英国も反対を表明した。ウクライナを米国より積極的に支援してきた英国さえ反対を表明し、独仏につづいてスペインもカナダも反対に回り、西側で米国の孤立があらわになった。NATOの亀裂をもたらしたのだ。
第三に米国内にも反対論が渦巻き、供与支援の議員等が孤立気味となった。
ネオコン主導の戦争遂行に反対してきた共和党内保守派は巻き返しのチャンスと捉えたし、民主党のなかでもヒューマンウォッチなどの活動家と連携する議員や、RKF支持者らが反対している。バイデンの戦争指導が誤りであったことに、ようやく米国の多くがしるところとなった。
戦争がエスカレートして第三次世界大戦が近づいたと認識する人たちは、これでロシアが小型の戦術核使用に踏み切ってもロシアに正当性をあたえることになりかねないと懸念を広げた。
◎☆□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□☆◎き☆□☆◎