パルデンの会

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無料PCR検査事業で露呈、日本の補助金のお粗末な実情  (『コロナ無料検査 仕組み上は「利益1件約5000円」「集められるだけ集めて」と持ちかけられた男性は…』東京新聞)

中国人が「3000円で唾液集め」…無料PCR検査事業で露呈、日本の補助金のお粗末な実情

 
 
 
 
 
 
 
中国人が「3000円で唾液集め」…無料PCR検査事業で露呈、日本の補助金のお粗末な実情写真はイメージです Photo:PIXTA

 

近年、インバウンドの補助金医療保険制度の恩恵など、日本の制度を悪用する外国人が取り沙汰されている。今回の取材では、2021年12月~2023年5月に行われたPCR無料検査事業にも中国人が「補助金目当て」に参入した形跡が見えた。その一方で目を向けたいのが制度設計である。そこに死角はなかったのだろうか。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏)

11社が虚偽の実績を理由に補助金を申請

 新型コロナウイルスの無料検査事業の不正が続々と暴かれている。2021年12月~2023年5月まで、各都道府県はPCR無料検査を実施、東京都には無料検査事業費として国の交付金1002億円が割り当てられた。延べ588事業者がPCR無料検査事業に参入した。

 しかし、そのうちの11社に対し、東京都は虚偽の実績を理由に補助金交付決定の取り消しを行った。現在も調査は継続されていることから、今後この数は増える可能性がある。

 すでにPCR無料検査事業は、今年5月の「5類への移行」とともに終了した。感染リスクを低減させるための必要な補助金事業だったが、今振り返ると、果たして事業そのものが健全な運用を可能にする設計だったのか、という問いが残る。

 こうした問いは、当時PCR無料検査センターで仕事をしていた複数のアルバイターから上がっている。そのうちの一人で都内在住のAさんは「実は当時から疑問に思うことがありました」と次のように語ってくれた。

韓国系らしきPCR無料検査センターでは勧誘行為も

 Aさんは2022年にこのアルバイトをやるようになった。勤務地と往復する地下鉄の中でたまたまPCR無料検査センターについて検索すると、検査体制に対する利用者のクレームが多いことに気が付いたという。

「そのクレームは『こんな所でPCR検査やってんですか』『東京都の事業なのに、言葉遣いもいい加減な学生が検査を行っている』『ほぼ医療行為に近いのに、医療機関らしくない所でやっている』といったものでした。普通なら、清潔な場所で白衣を着用した人が検査するというイメージなだけに、初めて行く人の中にはびっくりする人もいたみたいです」

 東京都は無料検査に関わる事業者として、医療機関、薬局、衛生検査所など“医療系”の事業に携わっていることを条件としている。ところが、Aさんが通っていたのは「医療系とはとても思えない感じの所」だったという。

経営者は敬語を使える男性でしたが、短パンに素足、ピアスやネックレスといった格好で、見た目には安全性や衛生面を重視する医療系のイメージと程遠い感じでした」(Aさん)

 別のPCR無料検査センターでアルバイトをしていたBさんも同じ見方をしていて、「私が通っていた所の経営者は、主に飲食業に従事している方でした。こうした業界からの参入もあるんだなあと不思議な感じがしました」と話している。事業者の中には、資格を持つ医療法人などと提携することで参入を果たしたところもあるようだ。

 PCR検査、こんな所でもやっているのか――、別のPCR検査センターでアルバイトをしているCさんはそんなことを思った一人だ。

 Cさん夫妻はJR総武線大久保駅からほど近い所にPCR無料検査センターを見つけた。自分もアルバイトをしているという“同業の好奇心”から、中をのぞいてみようと雑居ビルの地下に向かって階段を下りていった。そこは飲食業の店舗をそのまま利用した検査センターであり、まったく医療に関わる事業に携わっているとは思えない雰囲気だったという。

 Cさん夫妻が見たのは、見るからに暇そうな2人の男女だった。ユニフォームも着ていない私服姿の学生のような女性と、検査場の責任者らしき男性が韓国語でおしゃべりをしていた。

「そこで私たち夫婦は思わぬ勧誘に遭いました。何としてでも検査をやらせたいようで、『身分証を忘れたから今日はできない』と夫が断っても、『奥さんの身分証で大丈夫だから』としつこく誘われたのです」と振り返る。

 普通ならば身分証がないとPCR検査を受けることができないし、少なくとも検査する側は、利用者に対し、最初の段階で東京都の在住かどうかをヒアリングしなくてはならない。こうした確認をしないのに検査を迫るというのはどういうことなのだろうか。

「違反行為をしながらも検査をさせたいというのは、検査件数が欲しいからなんです」とCさんは語る。

 もちろん、管理が行き届くPCR検査センターもあった。Cさんのバイト先がまさにそうしたセンターで「ルールに従わなければ補助金が出ない可能性もあるという理由で、『身分証なし、症状ありは一切受け付けないように』と厳しく指導されました」と話している。

ブローカーを組織?件数稼ぎに血眼になる中国人も

 PCR検査無料化事業の参入には、中国人の姿も見え隠れした。

 2022年、都内在住のDさんの元に、ある日突然“中国人の友人E”から「唾液を採って郵送してほしい」という連絡が入った。“友人E”は次のようにDさんを説得した。

「検査キットを自宅に送るから、それに唾液を入れて投函してよ。面倒だったらやらなくてもいい。名前だけ書いてやったことにすればそれでいいから。1件につき3000円よ、悪い仕事じゃないでしょ?」

“友人E”がやろうとしたのは、Dさんを“唾液集め”の仕事に引っ張り込むことだった。もちろんDさんは断った。

「“友人E”はいろんな知り合いに声をかけて唾液をかき集めているようでした。“友人E”がやっているのは明らかにブローカー的な行為ですが、私にもそれをさせようというのです。協力者には3000円、“友人E”には1000円が入る仕組みで、まるでネットワークビジネスのような組織をほうふつとさせました」

 もちろん、中国人だけがこうした“悪事”を働いていたわけではない。8月31日の東京新聞は「コンサルタントに誘われ、1人当たり報酬1500円で集めていた」と告白する日本人男性を取材している。(『コロナ無料検査 仕組み上は「利益1件約5000円」「集められるだけ集めて」と持ちかけられた男性は…』東京新聞

“一獲千金狙い”で事業者が参入できる側面も
 東京都のPCR検査無料化事業におけるPCR検査には、1件につき最大1万1500円という補助金が付いた。

 仮に1日100人が検査に来れば115万円の売り上げだ。人件費は時給1500円×8時間×アルバイト3人だとして1日3万6000円、衛生検査所向けの唾液採取用キット、仮にこれをネット販売での平均的な価格である1個当たり300円とすると、100人分で3万円。検査センターの月賃料を100万円と多めに見積もって1日当たり3.3万円とすると、これらを差し引いた1日の粗利益はざっくり100万円となる。営業日が30日とした場合、ひと月で3000万円もの利益だ。

 2022年夏を振り返ってみよう。7月から9月まで、日本列島は第7波に襲われ、新規陽性者数は約148万人に上った。この夏、検査場は猫の手も借りたいほどの忙しさだった。Aさんはこう回想している。

「出勤と同時にすでに30人ほどの列ができていて、熱中症で倒れた人には救急車を呼ぶなど大混乱でした。第7波のピーク時は多い日で1日300人を超える人が来ました」

 2人体制の検査員で回していたAさんのPCR検査センターのその日の粗利は300万円、仮にこの事業者が10拠点を設けていれば全体で1日3000万円の粗利となる。

 港区でクリニックを開業する医師が「無料検査は当時必要な事業でしたが、うまみのある市場に“一獲千金狙い”で事業者が参入した側面は否めません」と話すように、「金もうけの道具」に利用されていた一面が存在する。

 現場では検査していないのに、検査をしたことにして水増し請求を行う事業者もあった。東京都の検査事業に参入した588事業者のうち、11業者の不正が明らかになり、虚偽の申請金額は183億円に上る(23年9月現在)。

 制度そのものが不正を生みやすい設計だったのではないかという指摘もある。最近まで某自治体の管理職を務めたF氏は次のように語っている。

「件数が増えるほど補助金が入る仕組みで、場所によっては客引きまがいの行為も見られました。検査そのものがDNAまで確認しないため、検査してなくても検査したことにでき、やろうと思えば、経営者の唾液でも件数にカウントできてしまうわけです。チェック機能も働かず、まともにやろうとすれば、現場のモラルに依存するしかなかったのです」

 本来ならば、公的な場所に検査場を設ければよかったが、当時は検査体制をいち早く確立する必要があり、事業を民間に請け負わせるしかなかった。東京新聞によれば、検査するのも民間の事業者、補助金申請を精査するのも委託を受けた広告会社だったという(『コロナ「無料検査」で267億円不正判明 チェックが甘く事業者の虚偽申請が横行』東京新聞)。

DXで悪用を排除、マイナンバーの導入も効果的
 今後どう改善に当たればいいのか。F氏はこう続ける。

新型コロナウイルスワクチンの接種業務では自治体はいつ、どこで、何回打ったかなどをトレース(追跡)できる『ワクチン接種記録システム』を構築しましたが、PCR検査事業については出発点にトレースができるという仕組みがありませんでした。今後はトレーサビリティー(追跡できるシステム)を導入し、履歴を残すようにすれば、検査していない人が件数にカウントされることはなくなります。つまりDX(デジタルトランスフォーメーション)するしかなく、マイナンバーの導入はその大きな前提になるのです」

 日本に滞在する多くの外国人が驚くのは「日本が想像以上の補助金大国」だということだ。

 近年は各種補助金を狙った外国人の暗躍も無視できなくなってきているが、もはや日本人とか外国人とかの問題ではない。貴重な財源の流失を防ぐためにもDXにより透明性を高め、容易に不正を働けるような制度から脱却することが焦眉の課題となっている。