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中国の悪行報じぬメディア  見て見ぬふりは共犯と同じ 政府・国民は断固たる対抗策を

中国の悪行報じぬメディア

  ペマ・ギャルポ  2023/9/25(月)  Viewpoint中国 

 

 

拓殖大学国際日本文化研究所客員教授 ペマ・ギャルポ

 

見て見ぬふりは共犯と同じ
政府・国民は断固たる対抗策を

 

 「嘘(うそ)も百回言えば本当になる」という言葉は、かつてナチスドイツの誰かが言った言葉らしいが、それを未(いま)だに信じ、それを繰り返しているのは中国である。しかし、その中国の嘘も、世界には通用しなくなりつつある。

 例えば、中国は、世界的に認められた専門家の集団である国際原子力機関IAEA)から基準を満たしているというお墨付きを受けて放出した日本の処理水に対して、「世界中が放出に反対している汚染水だ」と一方的に決めつけて、党の機関紙はもとより、SNSなどをフルに活用して、日本を激しく批判している。だが、今回は、中国が太鼓を叩(たた)いても、世界は動かなかった。特に、彼らの予想に反して、韓国が踊らなかったことは、尹錫悦大統領の高い見識と信念によるものであった。

抗議活動盛り上がらず

 そのため、中国は、次の手として、彼らが主張する中華帝国の大地図、すなわち「国恥地図」の発想に基づく、「2023年版標準地図」なるものを8月28日に発表した。それと同時に中国の今までの「九段線」にさらに一つを加えて、台湾を完全に入れる形にした「十段線」も発表した。当然のことながら、東南アジア各国をはじめ、インドなどがこの強引な主張に対して猛烈に反対の声を上げた。

 日本では、この新地図の発表に対して、9月5日に松野官房長官が外交ルートを通じて厳重抗議を行ったと伝えられている。しかし、私は、抗議程度のことでやめるような中国ではないと思う。正直に言って、何らかの形で目に見える処置が必要だったと思う。

 これは政府のみならず、国民にもその責任はあると信じる。処理水に関して、私は、国家基本問題研究所の櫻井よしこ理事長が主要各紙に対して、「中国に対抗するため、日本の魚を食べましょう」という主旨の広告を載せたことは的確な措置だと考え、国民やメディアがこれに呼応することを期待したが、結果的には盛り上がりが足りないことに失望することになった。

 今、日本では、ジャニーズの性加害問題に対して、主要メディアがこれを見て見ぬふりをしたことを懺悔(ざんげ)しているようだが、中国の悪行に対して報道しないことの方がより罪深い。いずれ同じような懺悔を行うような日が来るだろうが、そのときは遅過ぎるかもしれない。

11日、ウィーンで開かれた国際原子力機関(IAEA)定例理事会に出席したグロッシ事務局長(AFP時事)

11日、ウィーンで開かれた国際原子力機関IAEA)定例理事会に出席したグロッシ事務局長(AFP時事)

 先月、80歳で他界された東京大学の元教授で歴史家の酒井信彦先生は、東大現職の時、チベット問題などを取り上げて、中国に抗議してくださった際、私に対して、「チベットがかわいそうだから応援しているのではなく、中国の覇権主義はいずれ日本にとっても重大な問題になるからである」とおっしゃった。

 歴史家である先生は、「国恥地図」のことを常に問題視されており、「昨日のチベットが今日の香港であり明日の台湾となり、やがて日本までがその被害を受けることになるから、今、日本国民に覚醒してほしい」ともおっしゃっていた。現職の国立大学教授であった先生が、相当の覚悟の上で、私たちに力を貸し、また日本のことを憂いていたことを考えると、先生の高い見識と強い信念を世界が失ったことが惜しまれてならない。

 世の中には何が正しいかということを分かっていても、正しく行動できる人は少ない。私は、ここに改めて、感謝を込めて先生のご冥福を祈ると同時に、政治家はもとより有識者たちが今起きていることに対して、先生と同様に叡智(えいち)と勇気を持って行動されることを切望する。

関係各国と連帯強化を

 特に、日本のメディアに対しては、尖閣諸島を指して、「日本が実効支配する尖閣諸島魚釣島」というような表現を用いることは絶対にやめてほしい。中国に関しては、言論に対して言論を使い、力に対して力を使い、不買運動に対して不買運動を行わなければ、ますます図に乗ることは目に見えている。安倍晋三元首相が政治生命を懸けて、中国の覇権を阻止するために提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、岸田内閣は、関係各国との連帯を強化し奮闘してほしい。