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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和五年(2023)11月6日(月曜日)
通巻第7989号
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ゲームオーバー。
ハマス奇襲の影でゼレンスキーは霞んだ
欧米はしずかに停戦協議をウクライナにうながしている(NBCニュース)
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「試合は終わった」
『TIME』は最新号(11月20日号。10月22日発売)の表紙に落胆したゼレンスキーの発言を大きく配置し、「だれもウクライナの勝利を信じていない。私は信じているのに」とした。[NOBODY]は特大文字だった。
こういう。
「すでに二年近い戦争。夥しい犠牲者。しかしロシア軍はウクライナの五分の一を統治したまま。ゼレンスキーは孤独な闘いに明け暮れている」。
同誌はゼレンスキー大統領側近の発言として、「西側に裏切られたと感じている」としたため、キエフ政界は大炎上。蜂の巣を突いた騒ぎになった。
近代史を振り返っても米国が支援し、最後に裏切ったのは蒋介石、ゴジンジェム、ロンノル、そしてアフガニスタンのガニ大統領とつづく。
この発言を疑われた大統領補佐官のポトリャックは否定した。
キエフがもう一つ問題としたのはTIMEの記事を書いたサイモン・シェスター記者のことである。シェスターは1983年にモスクワで生まれ、七歳でサンフランシスコに移住したが、23歳のときにモスクワへ戻った。
『モスクワ・タイムズ』(プーチンに批判的な英字紙)、AP、ロイターなどに寄稿、2013年からTIME記者となった。
この経歴からキエフでは、ロシアのプロパガンダに与みした記事との批判が挙がった。サイモン・シェスターは名前から判断する限りユダヤ人だろう。
欧州の評論家は、イスラエル・ガザ戦争にメディア報道が集中し、ウクライナ問題は霞み、「ゼレンスキーは過去の人」とした。
実際に西側の大手メディア報道は毎日毎日ガザからの中継だ。
NBCニュースは「米国と欧州の当局者が戦争終結のための譲歩の可能性について、静かにウクライナと協議を始めている」と報道した。 ,
英誌「エコノミスト」は「ウクライナの最高司令官は、突破口はなく、戦況は膠着状態にあることを認めた」とし、ニューヨーク・タイムズは「ウクライナ軍最高司令官が戦闘が行き詰まりに達したと初めて述べた」と書いた。
ここ数カ月間、ウクライナの最前線はほとんど動かず、戦局は膠着状態にある。
ウクライナ軍の戦闘能力は急速に失われた。TIMEにコメントした匿名のウクライナ政府幹部は「現在、西側諸国は武器を送り続けることはできるが、それを使用する有能な軍人がいない。だから役に立たない」。
まして米国民の親ウクライナ熱は急凍冷蔵庫だ。
イスラエルによるガザ攻撃に対してホワイトハウスの全面支持は、枯渇したアメリカの兵器庫にさらなる負担を強いた。
ウクライナ向けを予定していた数万発の砲弾がイスラエル国防軍に転送された。ウクライナがNATO加盟国になるという幻影も消えた。バイデン大統領はこの責任をどう負うのか。
□☆み□☆☆□や☆◎☆□ざ☆□△◎き◎□☆◎