ニューヨーク・タイムズによる法輪功攻撃の背後 数十年にわたる中国共産党との利害一致(上)
過去25年間、米紙ニューヨーク・タイムズは、心身修養法である法輪功の学習者に対する残虐な迫害を行う中国共産党内の特定派閥の利益に助力してきた。
ニューヨーク・タイムズの中国に関する報道を分析し、中共の政治や地政学に詳しい専門家6人にエポックタイムズがインタビューした結果、ニューヨーク・タイムズは倫理的な問題を抱えるだけでなく、中国における実態を歪曲して報道し、読者を欺いていたことが分かった。
ある専門家は、ニューヨーク・タイムズが政策立案者を動かすほど過度な影響力を持っているため、同紙の偏向報道が計り知れない生命と財産の損失をもたらした可能性があると指摘した。
同紙に勤務していた従業員によれば、ニューヨーク・タイムズは何十年もの間、自らをグローバルな新聞社と位置づけ、中国市場獲得の必要性を主張してきた。これは、共産主義政権と同紙の利害を一致させることになることを意味している。
同紙は、中国市場を獲得するためにどのような行動に出たのか、これまで一度も説明していない。
「世界的な新聞社になりたいのであれば、中国を満足させ、中国でのビジネスを維持するために何をしなければならないという問題が常に存在している」と同紙の元編集者トム・カンツ氏はエポックタイムズに語っている。
「常に緊張関係が存在するが、多くの企業と同様、彼らも中国とのつながりを維持しようとしている」と話した。
米国の安全保障政策センター(CSP)の上級研究員で、対中戦略の専門家であり、エポックタイムズの寄稿者でもあるブラッドレイ・セイヤー氏はより率直に述べている。
「中共が望むように取材しなければ、彼らはブラックリストに掲載され、帰国できなくなるだろう」と述べた上で、中国で取材を許可された人々は「みな既得権益を持っており、いわば党利党略に従おうとする意識がある」と強調した。
ニューヨーク・タイムズは中国共産党の政治について報道する際、中共の虚偽を肯定的に受け止め、深く掘り下げるべきところを軽視してきており、中共の元総書記・江沢民派の利益と合致していると複数の専門家は述べている。
エポックタイムズは電子メールで質問リストを送信したが、ニューヨーク・タイムズは回答しなかった。
ニューヨーク・タイムズの「特権」
2001年、ニューヨーク・タイムズの発行人を務めたアーサー・サルツバーガー・ジュニア氏と編集者、記者数人が江沢民との面会を許された。同紙と江との特別な関係が築き上げられ始めたのはこの時点からであると見られる。
同紙は「江の言葉で:西側世界が中国をもっと理解できるようになることを期待する(“In Jiang’s Words: ‘I Hope the Western World Can Understand China Better.’”)」という見出しの独占インタビュー記事を掲載した。その数日後、中共は中国国内におけるニューヨーク・タイムズのウェブサイトへの検閲を解除した。
その1か月後、中共はワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、サンフランシスコ・クロニクル、BBCなど米欧の主要メディアへの検閲を解除したが、1週間以内に再び検閲された。
一方、ニューヨーク・タイムズは一部のコンテンツが閲覧できなかったが、アクセス可能なままだった。
ニューヨーク・タイムズのインタビューは江にとって微妙な時期に行われた。前総書記の胡錦濤に党の主導権が移行するまであと1年余りしかなかったほか、毛沢東が発動した「文化大革命」と同様に自身の権力基盤を固めるために、法輪功迫害を慣行したが、江が期待した状況にはならなかった。その上、ウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポストを含む海外メディアは、中共による法輪功学習者への不当拘束や拷問について報道し、中共の反法輪功プロパガンダの虚偽を暴くこともあった。
対照的に、ニューヨーク・タイムズは江の政治キャンペーンに最も協力的であった。2001年の江への取材時までに、同紙は法輪功に関する記事を数十本掲載し、そのほとんどすべてが法輪功を「カルト」や「セクト」と表現する中共寄りのプロパガンダだった。
法輪功は、法輪大法とも呼ばれ、「真・善・忍」の原則に基づき、ゆったりとした動作と道徳的な教えからなる心身修養法である。法輪功は1992年に中国で一般公開され、その数年後には7千万~1億人が実践するようになった。
2001年1月、中共の官製メディアが北京の天安門広場で「焼身自殺」した人々は「法輪功学習者だ」と喧伝していた際、ワシントン・ポストは事実確認のために記者を派遣した一方、ニューヨーク・タイムズは直ちに中共メディアの報道を転載した。
もしニューヨーク・タイムズがその高く評価されている調査能力を発揮していたなら、他の新聞社と同様に「焼身自殺事件」が中共のでっち上げだと特定できただろう。男が広場の中央で焼身した後、警官4人が数本の消火器を手に駆けつけ、1分以内で消火した。
広場の距離を考えれば、警官が事前に消火器を準備しており、当日広場のどこで消火器が必要になるかを事前に知っていたのでなければ、1分未満の消火は物理的に不可能である。
ワシントン・ポストの調査員が被害者とされる数人の出身地を追跡し、調査したところ被害者が法輪功を修煉しているところを目撃されたことがないことが分かった。一方、ニューヨーク・タイムズは中共のプロパガンダを流し続けた。
調査を行わなくても、同事件の欺瞞性を見抜くことができる。中共によれば、被害者が生きたまま焼身自殺すれば天国に行けると考えて事件を起こしたと主張しているが、法輪功にはそのような考えはなく、自殺は明確に禁止されている。
江はニューヨーク・タイムズを気に入っていたようで、2001年のインタビューでは同紙について「とてもいい新聞」と評していた。
中国共産党の核心的利益を突いているため、法輪功問題で江沢民の機嫌を取ることはとりわけ重要であっただろうと数人の専門家は指摘している。
共産党の虚言に同調
2002年以降、ニューヨーク・タイムズは“親江沢民ムード”を強めた。同紙は中共の情報源を引用し、法輪功は完全に「撲滅」されたと宣言。同紙は、法輪功は時代遅れで、1999年前の学習者の数は200万人程度だとし、法輪功学習者が情報提供した1億人という数字は根拠がないと断定した。
しかし、AP通信やニューヨーク・タイムズなど米欧や中国の複数のメディアは、学習者の数について7千万~1億人と伝えていた。この数字は、中国国家体育総局が1990年代後半に実施した法輪功学習者に対する大規模な調査により分かった。
また、ニューヨーク・タイムズは江沢民について中国を世界の舞台へと導いた友好的な改革者と評している。2002年の論説記事で、同紙の寄稿者は「江氏は非常に親米派である」と述べている。
中共が犯した過去の罪業が清算されていないにもかかわらず、中国は「よりオープンになり、寛容になり、重要性を増している」と同紙は伝えた。江沢民が2002年に総書記の座から退いた後も党中央軍事委員会主席に留まることを決めたのは江の強勢さの表れだと同紙は論評した。
さらに、ニューヨーク・タイムズは、江沢民の故郷などについて特集し、明らかに江のご機嫌取りのような記事を掲載。江の家族について深く掘り下げた段落では、江にとって最もデリケートな事実を省いていた。第二次世界大戦中、江の実父・江世俊が日本の傀儡政権である汪兆銘率いる南京政府のスパイ部門の高官だった。
肥大化した「警察国家」
ニューヨーク・タイムズは、2002年の江沢民の退任時、江が政治局常務委員会のメンバーを7人から9人に増員したことの重大性を伝えきれていない。増員したことで、胡錦涛政権下の常務委員として、江は党中央精神文明建設指導委員会主任で、宣伝部門を率いる李長春と中央政法委員会書記の羅幹を加えることができた。双方とも、江沢民派の主要人物だ。
江沢民政権の時代、政法委員会は国家安全保障機構全体をコントロールする強大な組織に成長した。主因の一つとして、法輪功迫害が挙げられる。中国の法律上において法輪功を非合法と解釈することができないため、江は迫害を実行するために超法規的な組織「610弁公室」を設立している。江は羅幹をトップに据え、法輪功を迫害するために要する治安組織の資源を無制限に使用できるという全権を与えた。
しかし、法輪功は、中共が撲滅を図る他の団体とは異なっている。指導者層を一網打尽にする弾圧方法は効果的ではなかった。すでに米国に亡命していた法輪功の創始者を除いて、法輪功には正式な指導者も階級もなかった。地域ごとの協調人が学習者に呼びかけ、一緒に煉功するというような単純な活動を催すだけだった。協調人が不当に拘束されると、他の者がすぐに引き継いだ。
法輪功への迫害がエスカレートするにつれ、法輪功学習者は中国国内で公に煉功することを止め、代わりに「真相を明らかにすること」、つまり法輪功と迫害に関する真相を一人一人に説明することに集中した。中共の治安組織は法輪功学習者の活動を妨害するために、彼らを監視し、一人ずつ不当に拘束するしかなく、大量の人的資源が注ぐ必要があるため、党の秘密警察と監視機構を大規模に拡充した。
このような迫害を担ったのは、羅幹と周永康によって行われた。双方とも江沢民派である。
エポックタイムズの姉妹メディアで中国問題のコメンテーターを務める横河氏は、法輪功迫害によって、中国の司法制度は揺りかごの中で絞め殺されたと語った。
「中共は例外を設ける必要があった。(人権の保障が盛り込んである)現行法は『法輪功を除いて』適用されなければならないと」
通常、法輪功学習者は「法執行を妨害した」罪で裁判にかけられるが、こうした法律は中共政権が弾圧すると判断した者を絶対的に陥れることができるよう広く解釈されていると横河氏は指摘。
「司法制度はそのようなことに慣れてしまった。このレトリックを他の分野にも転用する」「だから、中国は正当な司法制度を確立することができていない」
人権活動家やチベット仏教徒、ウイグル人イスラム教徒、中国国内のキリスト教徒に対しても、法輪功に対する迫害と同じ手口が使用された。これらのことは、ニューヨーク・タイムズに報じられることはなかった。
ニューヨーク・タイムズのジョセフ・カーン記者は、中国の司法制度についての記事を執筆し、政治的な理由に左右された判決や拷問による自白強要を指摘し、ピューリッツァー賞を受賞した。しかし、法輪功についてはほとんど触れなかった。カーン氏はその後、国際報道エディターを務め、2022年には編集主幹に就任した。
中共の醜聞を見ぬふり
薄熙来はかつて若手のホープと目されていた。共産党政権を樹立した中共高官の子息である「太子党」に属する薄は、中共高官になるべく養成された。1993年、薄は遼寧省東北部の大連市の市長に就任した。
薄の運転手によると、薄は早くから江沢民から法輪功問題を出世のために利用するよう勧められていたという。
ニューヨーク・タイムズは、一貫して法輪功迫害への薄の関与を無視してきた。
2009年までに、法輪功学習者らは江やその他の迫害加担者に対して、世界中の30以上の裁判所で70以上の訴訟を起こしている。
米国の複数の裁判所は、拷問に関与した個人に対して欠席判決を下したところもある。2009年、スペインの裁判所は、江沢民や羅幹、薄熙来、元中央政治局常務委員の賈慶林を含む5人の中共の現・元幹部を拷問の容疑で起訴した。 同年、アルゼンチンの裁判所は江と羅に対して国際逮捕状を発行した。
ニューヨーク・タイムズはこうした動きをすべて無視した。2014年には、スペイン議会が裁判所の国際裁判権を抑制する準備を進めていると報じた。記事は、裁判官らを「熱狂的」で「挑発者」とマイナス的に表現した。
記事の中では、スペインの裁判官が出した江沢民と前首相の李鵬の逮捕状について言及しているが、触れられていたのはチベットでの人権侵害についてのみだった。
臓器収奪のために殺人
2006年、中国共産党主導で「良心の囚人」から臓器を強制的に摘出していることが明らかになった。中国にある病院に勤務していた女性がエポックタイムズに臓器収奪の犯罪を暴露し、犠牲者のほとんどが法輪功学習者であり、臓器が摘出されたときにはまだ生きていたと語った。臓器狩りについて、初めての内部告発だった。その後、内部告発する証言者が相次ぎ現れている。
米国やカナダの人権弁護士らが、移植を必要とする患者やその親族を装って中国の病院に電話をかけ始め、臓器収奪疑惑の真偽を調査した。 録音された会話の中で、中国の医師らは臓器が事実上オンデマンドで、わずか1~2週間以内に入手可能であることが判明した。中には、「法輪功の臓器が一番健康的だと聞いている」「法輪功の臓器なら提供できる」と断言する者さえいた。
しかし、ニューヨーク・タイムズは長年にわたり、中共による臓器収奪の犯罪の隠ぺいに寄与してきた。
2014年、中共は死刑囚の臓器を移植に利用する慣習を中止する方針を表明。ニューヨーク・タイムズの記者ディディ・カーステン・タトロウ氏が、この慣習は止まっておらず、「良心の囚人」がまだ利用されているとの情報を入手すると、同紙はタトロウ氏の調査を妨害したという。その後、タトロウ氏はまもなく同紙を去った。
2019年、人道犯罪について第三者による調査と結果を示す「中国民衆法廷」で、タトロウ氏は「当時私の雇い主であったニューヨーク・タイムズは、私がこのような(臓器収奪に関する)記事を追及していることを快く思っておらず、当初は私の努力を容認していたものの、継続することを不可能にした」と証言している。
法廷では、中共が実際に法輪功学習者やその他の「良心の囚人」から大規模に臓器を収奪していると裁定された。ニューヨーク・タイムズは、この判決も、タトロウ氏の声明を含む臓器狩りに関する膨大な証拠も無視している。
最近、ニューヨーク・タイムズの広報担当者はエポックタイムズに対し、ニューヨーク・タイムズ紙は中国における「強制臓器提供」の問題を取り上げたことはあるが、その根拠となる証拠については論じていないと述べた。
今月16日、ニューヨーク・タイムズは、中共が法輪功学習者を臓器のために殺害しているという証拠の数々を再び無視し、証拠は存在しないと主張する一人の中国研究者の発言を引用した。
法輪功への迫害を監視するNPO「法輪大法情報センター」は、ニューヨーク・タイムズの「強制臓器提供」という表現を問題視。「強制」と「臓器提供」という言葉を使用するのは矛盾しており、「奇妙である」と表明した。
法輪大法情報センターは、3月に報告書を発表し、法輪功に関するニューヨーク・タイムズの「恥ずべき」報道について、同紙がもたらした人的損害について考察した。法輪功学習者を「価値のない被害者」として扱った同紙の無責任な扱いの歪曲報道の影響は、加害者に加担し、被害者への重要な国際的支援を阻害していると指摘している。
専門家は、ニューヨーク・タイムズが中共の人権侵害を完全に無視したというわけではなく、むしろ粉飾しようとしていると指摘されている。
ニューヨーク・タイムズの「安全な」批評
法輪大法情報センターの記録によると、2009~23年の間、ニューヨーク・タイムズは法輪功に関する記事を17本しか掲載しなかったが、ウイグル問題に関しては200本以上、チベットに関しては300本以上の記事を掲載している。
共産主義体制の専門家で、エポックタイムズの寄稿者でもあるトレバー・ルードン氏によれば、中国におけるニューヨーク・タイムズの既得権益の観点からすれば、中国国内で辺境にあるチベットや新疆ウイグル自治区での人権侵害を批判することは、比較的「安全」である。
「『我々は人権を支持している』という美徳を示すことができる。しかし、法輪功に対しては決してそんなことはしない。なぜなら、中国共産党を本当に怒らせることになるからだ」とルードン氏はエポックタイムズに語った。
チベット人やウイグル人に対する迫害を暴露することは、海外で波紋を呼ぶが、国内ではほとんど不安定な状況を引き起こさない。
一方、法輪功は「中国の伝統文化に根ざしている」ため、即効性があるという。
「中国人は明日イスラム教を信仰するつもりはないだろうし、中国人はチベット仏教に入るつもりもないだろう。しかし、何百万人もの中国人が法輪功に共感している」
中共が少数民族に政治的レッテルを貼るのも簡単だ。チベット人には「分離主義者」、ウイグル人には「テロリスト」と。しかし、法輪功学習者のほとんどは普通の中国人であり、国民各層で愛好者がいる。
彼らの唯一の政治的な要求は、法輪功への迫害停止であるため、中国共産党は「法輪功が分離主義者であるとは言えず、テロリストであるとも言えず、実際には政治的グループであるとも言えない」とルードン氏は述べた。
(続く)