パルデンの会

チベット独立と支那共産党に物言う人々の声です 転載はご自由に  HPは http://palden.org

兵庫県知事選SNS分析 (欧米社会ではネット空間の動きをベクトルで表すソフトがあると聞きます)カルトの動員は触れず

兵庫県知事選SNS分析 斎藤氏擁護の渦、一般層巻き込む

 [会員限定記事]

 

 

 

 

 

 
街頭演説する斎藤氏をスマホで撮影する聴衆(11月16日、神戸市)
 

11月17日投開票の兵庫県知事選は、パワハラ疑惑などから失職して出直した斎藤元彦氏を擁護するSNS発の渦が生じた。日本経済新聞がXのアカウントのつながりを調べて分類したところ、斎藤氏寄りの情報がコアな支持層にとどまらず一般層まで広がっていたことが分かった。負のイメージの反転を示す投稿が終盤に急増したのも確認できた。雪崩を打つような連鎖反応には、情報が真偽にかかわらず独り歩きする危うさものぞく。

斎藤氏は劣勢との見方を覆して再選した。追い風を吹かせた一人が、政治団体NHKから国民を守る党」党首で自身も出馬した立花孝志氏だ。

立花氏は告示日の10月31日、Xに「兵庫県県議会のヤミを暴露します!」と投稿した。斎藤氏に不信任決議を突きつけた議会に矛先を向け、斎藤氏に批判的な風潮に一石を投じた。推定表示数は900万回に上った。

英オーディエンス社のSNS分析ツールで、この投稿を拡散した6592アカウントを抽出した。似たアカウントを点としてまとめ、フォロー先が共通する場合は線でつないだ。フォロー先の傾向で分類すると、保守系の政治家を多くフォローする「保守層」が日本保守党寄りと自民党寄りの合計で約4割を占めた。「一般層」は約3割だった。

 
 
各グループの特徴的なフォロー先
一般層:大手飲食店やコンビニ
リベラル寄り一般層:大手飲食店やリベラル系議員
陰謀論・反ワクチン:陰謀論を発信する評論家、反ワクチンの医師
斎藤氏支持層:斎藤氏の後援会はじめ支持者
自民党寄り保守層:自民党保守系議員、保守系評論家
日本保守党寄り保守層:日本保守党議員、保守系評論家

初期に反応したのは「斎藤氏支持層」や、保守系議員をフォローする「自民党寄り保守層」だった。そこから「一般層」、さらに「陰謀論・反ワクチン」を主張する層へと連鎖した。

 
 

一般層のアカウントは多くが立花氏を直接はフォローしていない。普段のつながりを超えて渦が広がった様子がうかがえる。

選挙期間中、伝統的なメディアの多くは公平性に重きをおき、投票行動に影響を与えかねない報道に慎重になる傾向がある。その陰でSNS上は野放図に情報が飛び交う。法政大学の白鳥浩教授(政治学)は「斎藤氏擁護の投稿が集中してXの画面を占有し、ユーザーの目にとまりやすくなっていた可能性がある」との見方を示す。

流布したイメージが正しいとは限らない。立花氏は、斎藤氏が失職するきっかけとなったパワハラ疑惑について選挙期間中に「パワハラしてない」とXに投稿していた。12月に入って「していた。僕の調べ不足だった」と謝罪する動画が出回っている。

無党派層が「がんばれ」拡散

知事選では「#さいとう元知事がんばれ」というハッシュタグも広まった。英オーディエンスのツールで計5033の拡散アカウントを抽出した。分類すると「斎藤氏支持層」と「保守層」がそれぞれ全体の約3割を占めた。

 
 
各グループの特徴的なフォロー先
保守層:自民党保守系議員、日本保守党議員、保守系評論家
斎藤氏支持層:斎藤氏の後援会や支持者
維新支持層:日本維新の会議員
無党派層:大手マスコミ 、公的機関
一般層:大手飲食店やコンビニ
陰謀論・反ワクチン:陰謀論を発信する評論家、反ワクチンの医師

応援の広がりは告示前までは限定的だった。タグ付きで自ら発信したアカウントのうち1割が、投稿の8割を発信していた。中心は斎藤氏支持層や日本維新の会支持層だった。閉じた範囲で同じような意見ばかり飛び交う「エコーチェンバー」と呼ぶ現象が起きていたとみられる。

拡散アカウントの半数強をカナダ・フェディカ社の人工知能(AI)ツールで判定したところ、偽アカウントの疑いがあるのは3%以下だった。ボットによる大量の自動投稿のような動きは目視でも確認できなかった。

様子が変わったのは11月1日前後だ。無党派層による拡散が急増した。

無党派層は「偏向報道」「百条委員会の隠蔽」などメディアや政治体制への批判を斎藤氏の応援とあわせて書き込んでいた。こうした動きに反発した一部のユーザーが同じハッシュタグで投稿を続けたことも拡散の一因になった。

 
斎藤氏の街頭演説では応援うちわを持つ聴衆も(11月13日、西宮市)
 

大阪大学の三浦麻子教授の調査では、11月11日から15日にかけてのわずかな期間に斎藤氏に好感を持つ層が4倍になった。Xでは「斎藤さん ごめん」など評価の好転を示す投稿も急増した。

 
 

SNSでの波はリアルの世界にも及んだ。選挙戦終盤、演説する斎藤氏を囲む多数の聴衆の映像が拡散し、話題が話題を呼ぶ構図になった。

斎藤氏の終盤戦の演説会場付近の人流をNTTドコモ系の携帯位置情報をもとに推計した。通常時より15%前後増えていた。

 
 

独り歩きするネット情報

選挙戦中盤の11月8、9日の共同通信の情勢調査では前尼崎市長の稲村和美氏がわずかに優勢と伝わっていた。結果は異なった。

稲村氏については、Xで「(退職金を)操作して上げた。金の亡者」といった投稿が広がった。実際は就任時の規定よりは額を減らしていた。問題含みで削除に至った投稿は少なくとも4件あり、推定表示数は15万回を超えた。

投票後の取材で、50代で無党派層の会社員女性は「ネット情報で莫大な退職金をもらっているのが分かり、相対的に斎藤氏のイメージが上がった」と話した。

斎藤氏に投票した50代で無党派層の会社員男性も「決め手はXの情報」だったという。 「斎藤知事が改革しようとしているのに県職員が権益を守っているだけなのでは」とも語った。

 
街頭で支持を訴える稲村氏(11月16日、神戸市)
 

SNSは情報の拡散が速い。世論に訴えるにはうってつけだ。とりわけ浮動票の多い都市部の選挙ほどネット戦略が欠かせなくなっている。

7月の東京都知事選では動画投稿サイトのユーチューブで人気を集めた石丸伸二氏が有力候補とみられた蓮舫氏らを上回って次点に食い込んだ。その石丸氏を支援した選挙プランナーの藤川晋之助氏は11月24日の名古屋市長選で当選した広沢一郎氏にも助言した。

問題は、情報が真偽とは別の次元で独り歩きする場合があることだ。稲村氏の後援会は兵庫県知事選の期間中にXでデマが少なくとも四つ出回ったとして、公職選挙法違反(自由妨害など)の疑いで兵庫県警に告発状を提出した。

村上誠一郎総務相は12月3日の参院本会議で、公職選挙法の虚偽事項公表罪について「SNSを含めネット上の発信も対象になる」との見解を示した。

海外では深刻な事態も生じている。ルーマニア憲法裁判所は6日、11月の大統領選の第1回投票を無効とする異例の決定を下した。動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を駆使した無名の極右の候補者が首位に立ち、ロシアの関与がささやかれていた。

法政大の白鳥教授は「SNSが選挙の当落に影響する現象は今後も繰り返される可能性がある」とみる。民主主義の基盤である選挙の公平性をどう守るか。先行する現実が突きつける問いは重い。

(兼松雄一郎、上林由宇太、金子貴大、高橋祐貴、淡嶋健人、篠崎瑠架)

調査の概要
法政大学の白鳥浩教授の協力を得て、日本経済新聞社の研究組織「日経イノベーション・ラボ」の安井雄一郎氏と共同で取り組んだ。
企業がマーケティングに使うことの多い英オーディエンス社のSNS分析ツールを活用した。まず特定のハッシュタグや投稿を拡散したアカウントを可能な限り収集した。選挙直前の投稿が最も活発な時期を中心にアカウントを抽出した。フォロー先の組み合わせが似たアカウントを関心が一致するとみなし、同じグループに束ねた。
グループ名はフォローしている比率が高い上位10アカウント、そのグループのアカウントだけがフォローしている可能性が高い上位10アカウントの共通点を考慮して決めた。たとえば自民党の保守派や日本保守党の政治家への関心が高いグループは「保守層」と名づけた。
「斎藤氏支持層」は陣営のアカウントや応援投稿の目立つアカウントをフォローしている傾向が共通する。特定政党への強い支持が確認できない「無党派層」はマスメディアのアカウントを広くフォローしている。政治的関心は高く、そもそも政治に無関心な層とは異なる。
分析図の円の大きさは、フォローのパターンが似たアカウントの数の多さを表す。線はフォローするアカウントが共通する異なるグループをつないだ。つながりが多いグループほど近い配置になっている。
 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • 最相葉月のアバター
    最相葉月ノンフィクションライター
     
    •  
    別の視点

    本選挙をウォッチングしていたが、自死した職員に関する「プライベート情報」が立花氏によってSNSで拡散された頃から、それまで静観していた一般層の空気が変化したのを感じた。情に訴え、倫理観を大きく揺さぶる内容だったためだ。自死遺族の悲しみを想像だにしない猥雑な内容がXでばら撒かれる様を見て、内部告発のリスクに震撼した人は多かっただろう。マスメディアはこれを検証できないまま、あれよあれよという間にこの結果となった。このプライベート情報が事実と大きく異なっていたことは、その後立花氏自身も認めている。彼に騙されたと感じている有権者は多いだろう。誰が何の目的を持ってこれを流出させたか早急な検証を求める。

     
  • 木村幹のアバター
    木村幹神戸大学大学院国際協力研究科 教授
     
    •  
    別の視点

    SNSの影響力拡大が注目されていますが、同時に兵庫県知事選挙で顕著だったのは、知事が演説する会場に詰め掛けた大きな人波。これまでの知事選挙では考える事すらできなかった多くの人達が押し寄せ、熱狂的な雰囲気に包まれました。そこで見られたのは、インターネット上で「真実」を知った人々が、会場に集い自らの「真実」を確認する姿。農村部よりも都市部の方が知事の得票が多かったという点と併せて、ネット上で得られた「選択バイアス」を、集会の現場で確かめるというメカニズムをそこに見ることが出来るかも知れません。そして、これは韓国において大規模デモが果たしている役割と極めて似ている事を指摘しておきたいと思います。