恩赦連発に国民任命式… 植民地解放80周年を「政治利用」した韓国大統領が物議
8月15日は韓国にとっては、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」だ。日本では、6月に就任したばかりの李在明大統領が解放80周年の式典演説で何を述べるかに注目が集まったが、韓国国内では、この重要な記念日を“私物化”しようとする李への批判の声があがったという。
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8月15日は、韓国ウォッチャーにとって重要な日だ。日本では「終戦の日」だが、韓国では日本の植民地支配から解放された日を記念する「光復節」と呼ばれ、歴代大統領が演説のなかで、対日関係についてどう触れるかが毎年注目されてきた。 2025年は解放から80年という節目であり、6月に就任した李在明(イ・ジェミョン)大統領にとっては、初めての光復節での演説となる。それだけに、今年の光復節への注目度は例年に増して高かったが、実際には演説自体ではなく、その周辺で起きたことに関心が集まることとなった。
「光復節の本来の意味が色あせる」
演説で李は、日本は経済発展において重要なパートナーだとし、首脳間のシャトル外交を通じて「未来志向の協力を模索する」と表明した。また、協力関係を深めるために、日本政府に対して「過去の痛ましい歴史を直視し、両国間の信頼が損なわれないよう努力することを期待する」と呼びかけた。 李は8月23日から訪日を予定しており、その前に関係強化への意欲を改めて示した形と言えるだろう。しかし、李は歴史問題で対日強硬派の発言を封印し、理念より国益を優先する「実用主義」の外交方針を掲げてきたことから、光復節でのこの演説にこれといった驚きはない。言わば「お決まり」の内容で、韓国メディアの報道などを見ても、大きな話題とはならなかった。 対日姿勢を含んだ演説の内容よりも、より多くの注目を集めたのは、光復節を利用した李の政治パフォーマンスだった。そのひとつが光復節に合わせて、6月に大統領に就任した李の「国民任命式」を開いたことだ。 尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の罷免によって実施された6月の大統領選に出馬した李は、当選を決めた翌日に慌ただしく新大統領となった。 国会内で就任式をおこなったが、外国の要人や一般国民を交えた大規模な式典はなされていなかった。「国民任命式」はそれに代わるものとして企画され、ソウル中心部の光化門広場に集まった約1万人を前に、李が「国民の皆にささげる手紙」を読み上げ、「国民の忠実な働き手として、ただ国民だけを信じて進みます」と呼びかけた。 壇上には「国民代表」として選ばれた80人が並び、李に「委任状」を手渡した。K-POPのアイドルが歌や踊りを繰り広げ、華やかな雰囲気のなかで、李が「国民に開かれた政権」のリーダーであることを示す狙いがありありとうかがえた。 しかし、光復節に自らの政治的な行事をおこなうことには、計画が持ち上がった当初から批判があった。保守系有力紙の朝鮮日報は、社説で「国を取り戻して80年を迎える喜びをわかち合うという、本来の意味が色あせる」と記した。そうした批判には耳を貸そうとしない李は、自らの大統領就任を韓国現代史の重要な一コマと位置付けたい思いがあるのだろう。