パルデンの会

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宮崎正弘の国際ニュース・早読み(内蒙古自治区の暴動が意味することは?)‏

 

宮崎正弘の国際ニュース・早読み より転載       (内蒙古自治区の暴動が意味することは?)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
       平成23年(2011)5月31日(火曜日)
通巻第3336号   
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 誰が90周年を祝うのか? 中国共産党創立90年記念日は7月1日
  内蒙古自治区の各地で抗議デモが猛威、ついに江西省では自爆テロ
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 5月26日に江西省撫州市の庁舎前で起きた自爆テロ。四人が犠牲となったが、死者のひとりが実行犯だった。爆発は大きな噴煙をあげ、西側のメディアも写真入りで報じた。
 原因は強制立ち退きにともなう補償額の少なさへの不満だった。

そして開発のために再売却して巨富をえた共産党幹部がいる。腐敗の横行、やむにやまれず立ち上がった。
実行犯は苦労して建てた家屋が強制立ち退き、取り壊しとなり、その補償額は投資した価格の半分、抗議し続けているうちに妻が病死し、直訴するために北京へ行ったこともあるが埒があかず絶望の果ての自爆テロに及んだという。

 他方、5月中旬から内蒙古省で起きている社会騒擾は、極めて深刻である。
数千人が政府に抗議デモを展開し、軍隊と衝突、シリンホト、フフホト市内に戒厳令が敷かれたとの報道もある。
 この社会争乱は、もともと石炭の乱開発に抗議してきたモンゴル族遊牧民の二人が西ウジムテン地区で、石炭を積んだトラックとフォークリフトに別々にもてあそばれ、あげくに轢き殺されたため、地元住民の潜伏していた非抑圧民族の怨念に火をつけた。

 とくに5月10日におきたとされるトラックの轢き殺し事件は、20人の抗議行動中、デモ隊が見ている前での惨事、運転していた漢族の運転手は逮捕された(ヘラルドトリビューン、5月31日付け)。

 5月25日にはシリンホト市内の高校生を中心に数千人が抗議デモを展開し、軍隊と衝突、多数のけが人が出た。当局は40人を拘束した。これはモンゴル語でネットで呼びかけられたもので、たちまち省都フフホトへも伝播した。
フフホトには大量の軍隊が投入された。

 当局はネット、携帯電話を遮断して繋がらないように措置した上、大学を封鎖した。学生は外出が禁止された。フフホト市内の大広場は軍隊で埋まった。

 もともとフフホトはチベット仏教の街で、共産党は宗教的影響力を制御するために、仏教寺院の周囲にモスクを建てさせ意図的にイスラム教徒を入植させ人為的民族対立を常態化するという分離支配を行ってきた。
 

 ▲社会の安定を維持するには血の弾圧が一番デス

 こうした動向が現在の中国共産党執行部にとって、いかに深刻な事態であるかは下記の問題と連動しているからである。

 第一に少数民族問題。これまでチベット、ウィグルの少数民族独立運動への血なまぐさい弾圧と、共産党の人権無視の強権政治には西側人権団体からも猛烈な抗議が繰り返された。ところがモンゴル(中国内蒙古自治区)では目立った動きがなかった。
 これは「南モンゴル」としての独立より、現在のモンゴルとロシア領内に編入されている、いわゆるロシア連邦モンゴル族自治区と中国内蒙古自治区の三つが、将来、合邦して独立するという「大モンゴル構想」が基礎にあるため、反反俗感情は強くても独立運動を自制してきたことに因る。

 第二は資源問題が複雑に絡む。日本に死活的なレアアースの産地はモンゴル(内蒙古自治区)。
 しかもモンゴルは石炭の宝庫でもあり、漢族がやってきてやたらあちこちを開発・乱獲し、貴重なモンゴルの資源を収奪している構図となる。
チベットの水、希少金属。ウィグルの石油とガス。地元民からすれば、外来の漢族が勝手によその土地を開発し資源を盗掘して、その利益が共産党幹部の懐にはいっても、地元の利益には還元されないという不満が鬱積してきている。

 第三は時期的に7月1日が中国共産党創立90周年を祝うという政治日程を前にして、「社会秩序の安定と和諧社会」をスローガンとする胡錦涛政権にとって、政治的にも極めてまずい状況である。
しかも内蒙古自治区書記は「団派」(胡錦涛率いる共産主義青年団)のライジング・スターのひとり、胡春華である。第六世代のチャンピオンとして将来を嘱望される胡は団派を代表して、レアアース関連の利権を掌握しているとされる。

周章狼狽する胡錦涛は30日に緊急の政治局会議を開催し「社会の調和と安定に影響する問題の解決を急ぐ」とした。つまり弾圧で臨め、という訳である。
もちろん飴と鞭の使い分けがあり、緊急に内蒙古自治区支援のため788億元の財政支出を打ち出したうえ、胡春華は、抗議の学生らと話し合いの場を持ったそうな。
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