頻発する暴動、激しさ増す抗争手段 中国、社会対立が一層激化
【大紀元日本6月16日】6月に入ってから、中国各地で大規模な暴動が相次いでいる。1日、広東省潮州市近郊で起きた賃金不払いをめぐる傷害事件で1万人の出稼ぎ労働者が抗議活動に参加した。そして10日、広州市郊外の新塘鎮では露天商への横暴な取り締まりが発端で出稼ぎ労働者1万人が参加する暴動事件に発展した。さらに12日と13日、河南省鄭州市と湖南省長沙市で土地の強制収用に反発した農民が公務執行者と激しく衝突した。
これらの事件の起因はそれぞれ違うが、事件の主役はいずれも出稼ぎ労働者や農民など社会の貧困層に属する人たち。長年にわたり格安の労働力として中国の経済を支えてきたが、社会の最下層で不公平を強いられてきた労働者の不満がついに爆発したようだ。彼らの抗争手段は激しさを増していく一方で、政府もその制圧にたびたび軍隊を出動させ、対応はますます高圧的になっている。「社会の対立が一層激化した」と専門家は見ており、中国の官民闘争は新たな段階に入ったと言える。
出稼ぎ労働者が強いられる理不尽の数々
「殴ったのはお前らが出稼ぎの田舎もんだから!」-広州市郊外で起きた暴動事件で、取り締まりに当たった当局保安員は露天商を営む妊婦の女性を殴りながら、こう叫んだという。この暴言が同省人の出稼ぎ者らの義憤を募り、日頃から現地住民に見下されて溜まっていた屈辱感がマグマのように噴き出した。
彼らは現地社会との貧富の格差が大きく、医療、就業、住宅などいかなる保障も受けられず、「汚い、くさい、教養がない」と現地住民から軽蔑されている。戸籍がないため、子供を学校に入れるのもバイクのナンバープレートを購入するのも現地住民より高い費用を支払わされる。不満を当局に訴えても、現地社会で何の人脈もない彼らに耳を傾ける人はいない。いくら働いても、不遇を我慢しても、ピラミットの最底辺にいる運命を変えられず、彼らは社会から無視され続けている。
暴動参加者はほとんどが事件と直接関係のない人で、彼らに具体的な訴えはない。ちょっとしたきっかけで、社会への不満が彼らを暴動に駆り立て、権力の象徴である庁舎や警察車両にうっ憤をぶつける。
米中国語ニュースサイト・博訊網によると、中央政府は広州市郊外の新塘鎮の事態を重く見ており、徹底的に制圧するよう命じているという。「ほかの暴動とは性質が違う。流動人口の多い地域のため、暴動が蔓延すると、事態を制御できなくなる」とある上層部メンバーが話す。広東省には出稼ぎ労働者が2000万人いると言われている。
激しさを増す抗争手段
数年前までは、政府庁舎前で跪(ひざまず)いて問題解決を懇願する陳情活動が多く見られた。その後、焼身自殺など死をもっての抗争にヒートアップ。しかし、跪こうが自殺しようが、当局者は彼らの境遇に同情することはなかった。死んでも無駄だと悟った彼らは「命を失っても、皇帝を引きずりおろす」という考えに変わり、政府の人間を道連れにしようと爆発事件を起こしたりなど、抗争手段はエスカレートし始めている。
米紙ワシントンポストは、毎日のように起きている暴動について、これまで農村で多発していた暴動が都市部でも繰り広げられ、政府庁舎を攻撃するなど過激な行動を真似する人がこれから出てくるだろうと危惧している。英BBCによると、中国で毎年18万件の暴動が起きているという。
四川省在住の市民活動家・黄琦氏は一連の事件について、こう指摘した。
「市民は日頃、不満を解決するルートがなく、ちょっとしたきっかけで大きな暴動へと発展するのがすでに一つのパターンとなった。政府は高圧的な手段で今回の暴動を抑えられたが、インターネットが普及している今、市民は政府の対応にますます憎悪の念を抱くようになる。高圧的な弾圧はさらに大きな暴動を誘発するに違いない」
中国最高人民法院の張軍副院長は12日、国と社会を極端に敵視する者に対して、「死刑判決および即執行も辞さない」と語気を荒げて述べた。このヒステリックな発言はまさに当局者の不安な心情を表している。暴動に参加する人はすでに死を恐れていない。沸点に達しようとする人々の不満はもはや解消できない段階まで来ていると当局者に分かっているからだ。
(高遠)
(11/06/16 08:21)
中国の食糧庫。備蓄食糧の減少が食糧安全保障を脅かす(ネット写真) |
「疑われる豊作」 中国、国家食糧備蓄が低下 食糧安全保障が懸念される
【大紀元日本6月17日】中国の農業相が5月31日に、中国の小麦収穫量の90%以上を占める冬小麦は8年連続で増産との見通しを示した。北部の生産地のほとんどが今年は干ばつに見舞われていた上、増産の根拠となる数字も明らかにされていないことから、この発表に疑問の声が上がっている。 そんな中、新華社系列の週刊誌・瞭望が13日に「東北の食糧備蓄庫、調整機能が懸念される」という記事を掲載。中国の食糧生産においてもっとも重要な地域・東北地区の国有食糧庫はいま、食糧備蓄が減少したまま、有効な補充もできていないため、備蓄食糧に期待される市場調整の機能が果たせない恐れがあるという。 黒龍江省では昨年から、一部の国有食糧庫は備蓄食糧の買い入れ目標を達成できていない。同省鶏西市にある食糧庫の責任者は瞭望誌に、倉庫容量の20万トンに対し、政府が設定する購入価格が市場価格をはるかに下回ったため、備蓄食糧の買い入れはできず、民間企業に委託された1.2万トンの代理仕入れを行っただけだと明かした。同省南部の「民主倉庫」は5万トンの食糧を貯蔵できるが、いまはがらんどうになっている。 吉林省では、備蓄食糧を管理する最大手の国有企業・中国儲備糧管理総公司(略称、中儲糧)の直轄庫でも在庫補充の問題に直面している。同省の楡樹市、公主嶺、梨樹、農安などの食糧生産地では、一部の直轄庫は例年に比べ、在庫食糧が大幅に減っており、なかには底をついた倉もあるという。 同省四平市にある直轄庫の責任者によると、1月から在庫補充のために買い入れを続けているが、備蓄は低い水準のまま。政府の設定価格が生産者にとって魅力がない上、同市周辺に食品加工メーカーが多いため、多くの食糧はこれらの企業に流れたという。同倉庫は2008~09年に160万トンの備蓄を保有していたが、昨年10月の時点で貯蔵量はゼロになっている。 食糧のなかでも、特にトウモロコシの備蓄が少ない。中儲糧河南支社の李長軒・支社長は瞭望誌に、1年弱の間に今までの備蓄をすべて使い果たしたと明らかにした。政府の新たな1200万トンの補充計画に対して、2月末までの時点で、100万トンしか買い入れていないという。 国有倉庫の食糧備蓄は、国の食糧安全保障において極めて重要。黒龍江省と吉林省は中国最大の食糧生産地区となっているため、この2省での備蓄の低下は、政府の食糧市場における調整機能や、ひいては、国全体の食糧安全に影を落としかねないと瞭望誌は懸念を示した。「今後地域性の食糧問題が起きた場合、迅速な調達と食糧市場の調整が難しくなるだろう」と同紙は指摘する。 疑われる統計データ 2010年で連続7年の豊作と誇る中国の食糧生産。しかし、そのデータを疑問視する人が多い。『中国統計年鑑』で公開されている生産量と輸出入量、さらに関連機構が計上した消費量などに基づいて計算すると、食糧の在庫が大幅に増加する結果となる。吉林省の食糧経済学会の劉笑然・事務局長は、「食糧生産量か消費量の統計に誤差があったかもしれない」と瞭望誌に語った。「正確なデータがないため、われわれも困惑している」という。 今年も「豊作見込み」との農業相の発言の裏付けに「山東省では小麦の収量は1ヘクタール当たり10.5トン」などの報道が挙げられるが、民間の調査結果との食い違いが目立つ。各地方メディアの報道をまとめてみると、5月までの全国的な大干ばつの影響で、主要な小麦産地の収量は1ヘクタール当たり2.3~5.3トンに止まっており、多くの地域の収量は昨年の半分にも届かない。一部の灌漑地区でも収量は1ヘクタール当たり6~8.25トンになっている。 食糧倉庫の管理の混乱も近年、メディアにより暴露されている。2008年6月にアジア最大の食糧庫と称えられた黒龍江省の富錦九零食糧庫では、備蓄されていた115~120万トンとされる食糧が、同庫の主任や出納担当者から門衛までの70人により、組織ぐるみで市場に横流しされる事件が発覚した。同年8月に、同省五常市の光輝食糧庫の王青林・主任が忽然と姿を消し、彼が管理する倉庫の1万トンの食糧も売りさばかれ消えていた。12月には四川省の栄県国家食糧備蓄庫で火災が発生し、消防隊が倉庫で目にしたものは、食糧ではなく、ゼリーとコーラだった。 中国は世界最大の食糧輸入国に 中国国務院発展研究センターが昨年発表したデータによると、中国の食糧輸入量は1997年の416万トンから、2010年の976万トンに増加し、さらに、2020年には2224万トンに達すると見込まれており、中国は世界最大の食糧輸入国となる。 昨年から、主要な3つの食糧作物の輸入が増えている。2010年の中国のトウモロコシ輸入量は157万トンで、前の年の19倍になっている。小麦は120万トンを輸入し、前年比36%増。米の輸入はほかの2種類と比べ少ないが、増加傾向は明らかだという。 米農務省が昨年2月に発表したデータによると、2010年の米農産物輸出総額1位の相手国は中国になっており、総額の15・1%に当たる175億ドルの農産物が中国に輸出されている。 食糧備蓄の低下、管理の混乱、増加しつづける輸入。13億人を抱える中国にとって食糧問題は「負けられない戦争だ」と、著名な稲研究者・袁隆平氏が指摘。中国人民大学の農業・農村発展学院の朱信凱・副院長も「13億人の食卓が輸入食糧に頼り切るのはもってのほか。食糧が不足すると、国民経済の土台までも揺らぐことになる」と警鐘を鳴らした。 (翻訳編集・張凛音)
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