“チベット”という響きを聞くと、何処を思い浮かべるだろうか。多くの場合は“チベット自治区”という中華人民共和国の一部を思い浮かべるだろう。だがもしかすると、チベットという一つの独立国家を想像する人もいるかもしれない。
しかしながら、現在においてチベットという国家は存在しないにも関わらず、その広大な文化圏は幾国もの国境を跨ぎながら、チベット仏教という国家を超えた超共同体を形成している。
今日の日本において希薄になってしまった信仰心、尊い祈りは、国家という歪な境界を無意義なものとさせる。
すぐこの手に届きそうな空の下、ひたむきに祈りを捧げる彼らは穏やかに、そして凛とした強さを垣間見せる。彼らがそうするように、祈りのその先に目を向けた。チベットの空は広大である。カラー35点。
(写真展情報より)