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★=========崩壊へ向かう中国経済
今年8月と9月に公表された、中国経済関連の一連の統計数字は、
現在のこの国の実体経済の深刻さを如実に語っている。
たとえば、中国自動車工業協会が8月11日に公表した数字によると、
7月における全国の自動車生産台数は151・8万台で、
前年同期比では約11%減、前月比では
何と約18%減となった。まさしく地滑り的な落ち込みである。
生産台数激減の最大の理由は販売台数の減少にある。
7月の全国自動車販売台数は前年同期比で約7%減、
前月比では約17%の減少となった。
これはまた、中国全体における
個人消費の急速な冷え込みぶりを示している。
消費の冷え込みは自動車市場だけの話ではない。
8月20日に米調査会社が発表した、
今年4~6月期の中国市場スマートフォン販売台数は、
前年同期比で約4%減少、四半期ベースで初めて前年を下回った。
国家工業と情報化部(省)が9月7日に公表した数字によると、
全国の移動電話の通話量は
今年7月までにすでに連続7カ月間のマイナス成長となったという。
同じ9月7日の国家統計局の発表では、
今年上半期において全国のビール消費量は
前年同期比で約6%減となって、
ここ20年来で初のマイナス成長である。
このように、ビールの消費量からスマートフォンや自動車の販売台数まで、
中国の消費市場は急速に縮まっているといえよう。
そして、自動車販売台数の激減が
直ちに生産台数の激減につながったのと同じように、
消費の冷え込みは当然、製造業全体の不況をもたらしている。
英調査会社マークイットが8月21日に発表した
同月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は
驚きの47・1となった。
PMIというのは好不況の分かれ目の数値で、
50以下であれば不況となるが、
中国のPMIはこれで6カ月連続で50を割っただけでなく、
8月の47・1という数値はリーマン・ショック後の2009年3月以来、
約6年半ぶりの低水準、まさに大不況の到来を示す数値であったからだ。
製造業が沈没していれば、
それと一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係にある金融業も当然、
苦境に立たされる。
8月31日に中国国内メディアが伝えたところによると、
不良債権の増大・業績不振などが原因で、
中国工商銀行などの
「中国四大銀行」で「賃下げラッシュ」が始まったという。
50%程度の賃下げを断行した銀行もあるというから、
金融業の苦しさがよく分かる。
こうした中で、今までは「中国経済の支柱」のひとつとして
高度成長を支えてきた不動産開発業も大変な不況に陥っている。
今年上半期、中国全国の「不動産開発用地」の供給面積が、
前年同期比で約38%も激減したことは、
現在の「不動産不況」の深刻さを示している。
莫大(ばくだい)な在庫を抱える多くの開発業者が
不動産をそれ以上抱えることをしなくなったので
開発用地の供給が大幅に減ったわけである。
実際、2014年1月から今年の8月まで、
中国全土の不動産投資の伸び率は連続20カ月間下落している。
また、今年6月中旬から今月中旬まで、
上海株が連続的な大暴落を経験したことは周知の通りである。
以上のように、今の中国では、消費・生産・金融、
そして不動産や株市場、経済のありとあらゆる領域において
大不況の冷たい風が吹き荒れている。
国民経済を支えてきた「支柱」の一つ一つが傾いたり、
崩れかけたりするような無残な光景があちこちで見られているのである。
中国経済はただ今、壮大なる崩壊へ向かっている最中である。
( 石 平 )