2018年3月22日、読売新聞オンラインによって、日本政府が中国に対しジャイアントパンダの貸与を要請したことが分かったという記事が報道されました。
しかし、翌3月23日の報道を確認すると、いくつもの疑問がでてきます。
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河野外務大臣会見記録 外務省(2018.03.23)8時28分 於:官邸エントランスホール
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000666.html
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【記者】
報道で,中国の王毅(オウ・キ)大臣と会談したときに,パンダを要請したという報道があったのですが,どういったやり取りがあったのでしょうか。
【河野外務大臣パンダとトキについて,何かやり取りがあったような記憶があります。トキについてはDNAがもう少し多様化しなければいけないというような話だったのではないかと思います。
【記者】パンダについて中国側からどのような回答がありましたでしょうか。
【河野外務大臣今,急に言われてもちょっと思い出せません。
【記者】仙台と神戸の動物園にパンダをお願いしたいというようなお話が・・・。
【河野外務大臣そこまで詳しくやったかどうか,少し記憶が・・・。
【記者】もし,パンダが日本に来ることが実現したら,どういういい効果が生まれるかと思いますか。
【河野外務大臣今,にわかには応えられません。
【記者】大臣としては,期待感を込めて・・・。
【河野外務大臣どういうやり取りだったかは・・・。すみません。
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仙台などへのパンダ誘致「政府として歓迎」 菅義偉官房長官「国民に広く親しまれている」
産経新聞(2018.03.23)
http://www.sankei.com/life/news/180323/lif1803230029-n1.html
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菅氏は「外交上のやり取りであり詳細は控えたい」とした上で「パンダは国民に広く親しまれている。来日が実現すれば政府としても歓迎したい」と述べた。
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河野外務大臣も菅官房長官も、仙台へのパンダ貸与を中国に要請したとは、まだ一言も語っていないのです。
むしろ、まだ中国の
王毅大臣との日中間の高度な外交交渉が始まったばかりの段階で、パンダの話題だけが先行して、記事として飛ばされた形になっています。

ところが河野外務大臣の記者会見後、テレビ朝日はこのように報じました。

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パンダの貸与とトキの提供を中国側に要請 日本政府(2018/03/23 11:55)
 日本政府がジャイアントパンダの貸与とトキの提供を中国側に要請していることが分かりました。
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 パンダの受け入れ先の候補は、神戸市の王子動物園仙台市八木山動物公園で、
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日中平和友好条約締結から40周年を迎える今年、日中の関係改善に向けた取り組みの一環と位置付けています。
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河野外務大臣が中国の王毅外相と会談した今年1月に提起したということです。その際、トキの提供についても中国側に求めたということです。
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政府は日中韓の首脳会談を5月の連休明けに行う方向で調整していて、関係改善のシンボルにしたい考えです。
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今年1月に要請していた???
このことに疑問を感じずにはいられなくなるのが、次のフジテレビのニュースです。
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パンダ貸与 仙台・神戸で期待 3/23(金) 20:48配信 FNN
新たなパンダが、日本にやってくるのでしょうか。
現在、日本には、上野動物園に3頭、和歌山・白浜町アドベンチャーワールドに5頭、兵庫・神戸市の王子動物園に1頭の合計9頭のパンダが飼育されています。

そんな中、日本政府が、新たなジャイアントパンダの貸与を中国政府に要請していることが判明。
その新たな飼育先として、神戸の王子動物園仙台市八木山動物公園が候補に挙がっています。
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この中で、神戸市立王子動物園と仙台セルコホームズーパラダイス八木山の扱いが、異様な状況になっています。
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神戸市立王子動物園については、現在、メスの旦旦一頭しかいないため、オスの補充が実現すればジャイアントパンダの借用の本来の目的である、繁殖保護研究が再開できることを、園長が率直に語っています。
つまり、学術的に理にかなっており、そこには何の問題もありません。
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ところが、仙台の話になると、全く異なる内容になります。
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東日本大震災の被災者を癒やそうとパンダ誘致に取り組む」と、最初からジャイアントパンダの誘致目的として理にかなっていないことが見出しになっているのです。
ワシントン条約により、パンダの借用は繁殖保護研究を目的とするものに限られています。
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さらに、仙台の動物園側は、政府による中国の要請について、具体的な報告は届いていないと慎重な姿勢と報じられています。
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園長もまた、「しっかりと外交関係の動きとか見守っていきたい」と慎重に語っています。
それもそのはず、3月7日の仙台市議会では、郡和子仙台市長と伊藤敬幹副市長が、パンダ誘致に関する質疑の中で、尖閣諸島は日本固有の領土とはっきり答弁しているからです。
その後に続く映像は、ひたすら分別のつかない子どもと乳児を利用した歓迎ムードの演出でした。
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この時インタビューを担当したフジテレビには、何と言ってコメントをもらっているのかお聴きしたいです。
「ここ(動物園)にパンダが来ることになるかも知れないけど、どう思いますか?」と質問したのだと思います。
それでは、分別の未成熟な児童は単純に喜ぶだけでしょう。
問題なのは、「東日本大震災の被災者を癒やす」という目的が理にかなっていないことなのです。

実は上記のフジテレビのニュースは、地元の仙台放送では、当会の取材をあわせて報じてくださっています。
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仙台にパンダ!? 政府が中国に要請

2018年03月23日 仙台放送
http://archive.is/LEbTY
 宮城・仙台でパンダが見られる日が来るかもしれない。政府が、新たな「ジャイアントパンダ」の貸し出しを中国政府に要請していることがわかった。その飼育施設の候補に「八木山動物公園」が挙がっている。
 関係者によると、2018年、日中平和友好条約の締結から40年を迎えることから、政府は、中国政府に「ジャイアントパンダ」の貸し出しを要請しているという。
 その飼育施設には、仙台市太白区八木山動物公園と、兵庫県王子動物園が候補に挙がっている。
 動物園を訪れていた人は、「(パンダが来るかもしれない)すごい特別だと思います。まだ見たことないので」、「パンダ大好き」、「(上野動物園の)シャンシャンの観覧抽選に何回か応募したが当たらなかった。子どもに見せてあげたいですね」などと話した。
 パンダの貸し出しについて、仙台市の郡市長は、「詳細は何も聞いていないので、確認も何もできていないです」と話した。
 2011年、仙台市は、被災地を元気づける復興のシンボルにしようと、「ジャイアントパンダ」の貸し出しを中国政府に要請した。しかし、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化で、協議が行えない状況が続いていた。
 パンダの貸し出しを希望する一方、政治利用への懸念や目的を疑問視する声も出ている。
 仙台にパンダはいらない仙台市民と宮城県民の会・及川俊信代表は「(パンダは)経済目的での借用は禁止されている。繁殖保護研究以外の目的を禁止されている動物。その見地に立って考えてほしい」と話した。

 誘致活動を開始してから受け入れ態勢を整えてきた八木山動物公園では。
動物園の正門を入ってすぐの場所にあるパンダの展示施設の予定地は、今も空き地が広がっている。
 仙台へのパンダ誘致が成功した場合、来園者の増加が見込まれる一方で、交通渋滞などへの対応も急がれる。
 八木山動物公園・大内利勝園長は「(日中)両国間の関係を見守りながら、(パンダが)来た時には、(来園者に)喜んでもらえるように、しっかり対応していきたい」と話した。 
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仙台放送はしっかりと、尖閣諸島問題で協議が行えなくなった経緯を紹介しています。
(残念ながら、郡市長の尖閣諸島は日本固有の領土という答弁が報道で割愛されましたが。)
そして、ジャイアントパンダを誘致中の仙台市の長である郡和子仙台市長が、日本政府から詳細は何も聞いていない、確認も何もできていないという状況を、そのまま伝えています。

これら一連の報道から分かることは、
・河野外務大臣と中国の王毅首相の1月の会談では、日中平和条約締結40周年にあたり、両国間の理性的な関係を再構築するため、中国の協力によって復活した日本のトキと、日中国交樹立時に寄贈された歴史のあるパンダの繁殖保護研究について、再度の協力関係を協議しようとの話はあった。

・報道で神戸と仙台の二箇所が候補地に挙げられたのは、あくまで、現在自治体をあげて誘致に取り組んでいるのがこの二市だからである。

・日中首脳会談を前にした高度な外交交渉中に、メディアの報道だけが先行し独り歩きした。

といった現状かと思います。
TwitterFacebookmixiといったSNSでは、圧倒的大多数のユーザーが仙台パンダに「反対」です。
まして、日本政府がパンダの誘致主体である、政令指定都市仙台市に、市長にも動物園にも何ひとつ連絡を入れることもなく、「尖閣諸島は日本固有の領土」と市長が発言した事実を確認することもなく、仙台パンダを中国に打診しているとは、考えにくいのではないでしょうか。
万が一にもそうだったとしたら、たとえば仙台市議会における市長の尖閣諸島の領有に関する答弁を政府が知らないまま話をすすめていたとしたら、日中関係は好転どころか更なる悪化を招きかねません。

日本政府、わけても与党である自民・公明両党の皆様には、早期の協議を切に求めます。

ニュースでは報道されませんでしたが、私は仙台放送のインタビューで、次のように強調しました。
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東日本大震災から7年。
死者・行方不明者合わせて1万8,000名もの犠牲者がでました。
今なお生活に困窮している人達も沢山います。
津波で大切な家族を喪った被災者に。
それこそ石巻市気仙沼市南三陸町の人達を目の前に。
仙台市東日本大震災の復興のシンボルは中国からのパンダだよ」と、
仙台市民は胸を張って言えますか?
それが本当に子どもたちのための、
道理ある教育につながりますか?

仙台パンダの問題は、日本政府だけでも仙台市長だけでもない、仙台市民一人一人の理性と矜持と良心が問われる問題なのです。

仙台にパンダはいらないのです。