だから 安倍首相は 『拉致問題』解決をまず ターゲットとするべし。
金正恩が核放棄後にいきなり直面する「最も深刻な問題」
5/10(木) 6:00配信
核を即時に捨てなければ経済が持たない
史上初の首脳会談開催に向けて、米朝両国が積み重ねてきた秘密の予備交渉が大詰めを迎えている。労使の賃上げ交渉に例えれば、100円玉1個をめぐる土壇場の攻防が水面下で繰り広げられている。
大方の専門家とメディアはこれまで「絶対に放棄しない」と断じてきた。幸いにも、この懐疑論は外れる。
同じく、北朝鮮が非核化の過程で「時間稼ぎ」を繰り広げると予測する悲観論も外れる。
原子炉の廃炉と化学兵器の廃棄を含めれば、技術的に10~20年を優に超す長い時間が要る。しかし、問題の核心である軍事的脅威の除去作業はずっと簡単だ。北朝鮮は保有する全ての核弾頭を早期にアメリカへ引き渡すだろう。
悲観論の欠点も単純である。北朝鮮の国力を買いかぶり過ぎだ。
これに国内市場での中国人民元の流通放置が加わる。通貨主権を事実上放棄したのも同然の奇策だ。これが自国通貨乱発の誘惑を抑え、悪性インフレの発生を何とか防いできた。
だが、どの対策も一定の効果は期待できるが、限界の天井は低い。財源不足、外貨不足、密輸の取り締まり強化で、必死の対抗策もついに賞味期限が切れた。
対中貿易の激減→資材不足による国内企業所の稼働停止→賃金の遅配・欠配→地域商店の販売不振。
改革開放でも本質は変わらず
金正恩は潮時を見計らい、核放棄を決断した。
元来、金正恩が執権当初に打ち出した、核と経済の「並進路線」の狙いには、短期と中長期の区別があった。
核ミサイル開発は短期の生存戦略で、中長期の生存戦略は経済再建にあった。筆者は2年前、「並進路線の力点は後者の中長期的な経済再建策にある」と見立て、その上で次のように予測した(「『反中国の怪物』になった金正恩」、『Voice』2016年5月号)。
「駆け込みで核・ミサイル実験を強行し、核弾頭開発に一定の目処を付ける。そして対話攻勢に転じて制裁局面の打開を図る」、「(核ミサイルを)押し売りして、米中両大国を天秤に掛け、経済再建の血路を切り開く算段である」と。
そこで金正恩は「国家核戦力を(執権後)5年間にもならない短期間で達成した」と自画自賛する。専門家の多くはこれを「核保有国宣言も同然」と読んで強く警戒した。だが、率直に言って誤解だ。注意深く文脈の行間を読めば、婉曲話法の「非核化宣言」である。
正念場は軍のリストラ
他方、北朝鮮の内政は波乱含みだ。
「千年の宿敵」の中国、「百年の宿敵」の日本とアメリカ、それとも同民族の韓国か――。経済再建を最優先に据えれば、どれも差し障る。
この軍部リストラが金正恩の至上命題だ。「軍縮」(兵力削減)は先の南北首脳会談でも言及された。今後の南北交渉で主要議題のひとつとなる。本気度はともかく、北朝鮮はかつて「南北が各々10万人規模」を提案したことがある。
大幅な兵員削減は軍部の既得権益を大きく損なう。仮想敵国を見失い、待遇に不満を持つ軍部は政情不安の火種になる。最新兵器と新規利権で軍部を宥めるのには、莫大な費用と長い時間が要る。
それと同時に、金正恩は今後、経済的な生産性の高い年齢の若者を兵舎から追い出し、経済建設に振り向ける必要がある。とはいえ、数十万人の若者に新たな働き口を与え続けるのは難題だ。
外国からの大規模な経済援助と直接投資の早期誘致が不可欠だ。それで間に合わないようなら、韓国や日本への海外出稼ぎを積極的に推し進めるしかない。現実的には、外国投資奨励と海外出稼ぎ容認を組み合わせることになるだろう。
この雇用創出策に失敗すれば、民心が乱れて収拾不能の混乱を招く。
持続的な高度経済成長で国民の旺盛な消費欲を刺激して、世襲独裁体制への不満を封じ込められるかどうか――。
金正恩体制の生き残りは核放棄の後に正念場を迎える。
李 英和