世界人権宣言の国連採択70周年を記念し、兵庫県芦屋市に住む映画監督・池谷(いけや)薫さん(60)のドキュメンタリー映画が今月、神戸市と大阪市で特集上映される。中国のチベット政策に対し、自らの体に火を放って抵抗を示すチベット人を追った「ルンタ」(2015年)など計4本。池谷さんは「宣言にうたわれている『人間の尊厳』を考える機会になれば」と話している。
東京出身の池谷さんは同志社大卒業後、テレビのドキュメンタリー番組などを手がけ、02年、中国文化大革命に翻弄(ほんろう)された親子を描いた「延安の娘」で映画デビューした。05年に山西省残留日本兵問題に迫った「蟻(あり)の兵隊」、12年に東日本大震災の津波で家族と自宅を失った老人が、元の場所に家を建て直そうとする姿を記録した「先祖になる」を発表。いずれも国内外上映の映画祭などで多くの賞を受けた。
映画後半の映像はチベットに入って撮影。中原さんと2人で観光客を装ってカメラを回したが、宿泊先に2度、中国当局がやってきたという。「どうやって映像を収めたSDカードを守るか。のみ込んで出国しなければならないのかも、とも覚悟した」と振り返る。
現在は甲南女子大で教授として学生に映画制作について教える一方、神戸市で関心のある人に広くドキュメンタリーの撮り方を伝えている。
「どの撮影でも逆境にある人たちが見せてくれる底力にいつも驚かされ、爽快感を感じる。映画からそんな人間の強さを感じ取ってもらえたら」